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ニールセン:交響曲第5番 Op.50、FS.97

レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル 1962年4月8日&9日録音

Nielsen:Symphony No.5, Op.50 [1.Tempo giusto - Adagio]

Nielsen:Symphony No.5, Op.50 [2.Allegro - Presto - Andante poco tranquillo]


忘れられてきた偉大なシンフォニスト

ニールセンは同じく北欧の作曲家シベリウスと同じ年に生まれ、同じ時代に活躍したのですが、認知度という点では大きな開きがあります。しかし、交響曲という形式の掉尾を飾る作曲家と言うことでは、その重要性には全く遜色がありません。
シベリウスもまた彼の交響曲を高く評価し、賛辞を送っています。
言うまでもないことですが、シベリウスという人はあの面構えからも分かるように人を褒めないことで有名でしたから、その様な讃辞には重みがあり、決してその場限りの社交辞令ではありません。

シベリウスはニールセンに較べれば長生きをしましたが、1929年に最後の作品を発表してから四半世紀にわたる沈黙を続けました。
ニールセンは1931年になくなっているのですが、その死の直前まで作曲活動を続けたので、実質的な活動期間としては彼の方が長いのです。

ニールセンは生涯に6曲の交響曲を残しました。


  1. 交響曲第1番 ト短調(1891年-1892年)

  2. 交響曲第2番 ロ短調 『四つの気質』(1901年-1902年)

  3. 交響曲第3番 ニ短調 『広がりの交響曲』(1910年-1911年)

  4. 交響曲第4番 『滅ぼし得ざるもの(不滅)』(1914年-1916年)

  5. 交響曲第5番(1921年-1922年)

  6. 交響曲第6番 『素朴な交響曲(シンフォニア・センプリーチェ)』(1924年-1925年)



これをシベリウスの7曲と重ねてみると、時代的にはほぼ重なることがよく分かります。


  1. 交響曲第1番 ホ短調(1898年-1899年)

  2. 交響曲第2番 ニ長調(1901年)

  3. 交響曲第3番 ハ長調(1904年~1907年)

  4. 交響曲第4番 イ短調(1910年-1911年)

  5. 交響曲第5番 変ホ長調(1914年-1915年)

  6. 交響曲第6番 ニ短調(1923年)

  7. 交響曲第7番 ハ長調(1924年)



この二人を較べてみて、どちらがすぐれていた・・・みたいな話は全く無意味でしょう。ただ、聞きなじんでいると言うこともあるのでしょうが、シベリウスの音楽の方は耳に優しいです。
ニールセンの最後の二つの交響曲からは調性の表記が消えています。もちろんそれは、これらの作品が「無調」であることを意味しているわけではありません。聞けばすぐ分かるように、ニールセンの音楽は伝統的な調性の世界の上で成り立っています。しかし、音楽の冒頭で確立された調性は、その後めまぐるしく変化していって、冒頭で確立された調性は音楽全体を支配する力を失っています。
つまりは基本的には調性をもった音楽ですから、いわゆる現代音楽のようなわけの分からない音楽とは異なるのですが、それでも一つの調が音楽全体を支配するような「伝統的」なものではなくなっているのです。

また、4楽章構成という基本的な形も、4番では「単1楽章」、そして5番では「2楽章構成」というようなチャレンジが為されています。これもまた、伝統的な交響曲という枠組みからの拡充が図られています。

そして、最後に忘れてならないのは打楽器の積極的な活用です。この背景には、貧しい少年時代に音楽を学ぶために軍楽隊に所属していた過去が指摘されることが多いのですが、結果として、打楽器の時代とも言われる20世紀音楽への扉を開いた事は間違いありません。

さらに、シベリウスとの比較で言えば、彼がどんどん縮小していったのに対して、がニールセンの音楽には、それとは対極にあったマーラー的な膨張聞き取れることです。
ですから、マーラーが復活していく中でニールセンに対する評価がもっと進んでもよかったと思うのですが、現実は何故かそうならず、今もってかなりマイナーな存在でとどまっています。

私もまた、もっと頑張って彼の作品を取り上げていかなければいけないですね。


この時代の両者の結びつきの緊密さを実感できる演奏

第1部は清澄で平和な雰囲気に満ちた世界としてスタートするのですが、その音楽は次第に緊迫し緊張感が高まっていく中で小太鼓の強烈なリズムが雰囲気を一変させます。そして、音楽は小太鼓の強烈なリズムに駆り立てられるように、悲劇的な方向に向かってクライマックスを築き上げていきます。
この転換の場面は非常に印象的であり、これ以後の多くの作曲家によってパクられました。(^^;

この辺りはかなり強烈な表現となっているのですが、それでもこの時代にバーンスタインにすればいささか戸惑いがちであり、何となく先を探りながら音楽を進めているような雰囲気は否めません。聞くところによると、この辺のニールセンの譜面はかなり「邪悪」なもののようで、オケにとっても指揮者にとってもかなりの難物らしいです。

これに続く第2部は、この悲劇を癒すかのようなアダージョとして開始されるのですが、ここでもまた小太鼓がその安寧を遮るかのように何度も乱入してきます。この辺にきて、少しずつバーンスタインも吹っ切れてきたようですし、小太鼓奏者も「とことんやってもいいんだ!」みたいな開き直りが出てきたようです。
そして、最後はクラリネットによって消え去るかのように音楽は閉じられルのですが、その直前まで諦め悪く鳴り続ける小太鼓が素敵です。

続く第2楽章は、物語的に辿りやすい第1楽章と較べれば、4部構成に別れていて、その各部分が伝統的な交響曲の各楽章に相当するという「知的」な構成になっています。
しかし、バーンスタインのさばき方は実に見事です。ぼんやりと聞いていても、その4つの部分が伝統的な4楽章構成の各楽章に相当することは、それなりに訓練された耳があれば容易に聞き取る事が出来ます。
第1部と第4部はともにアレグロで、明らかに第1楽章と最終楽章の働きをしています。第2楽章はプレストで、言ってみればスケルツォ楽章、第3部はアンダンテなので緩徐楽章としての性格を持っています。

その意味では、この第2楽章はそのままでシベリウスの第7番に相当する構成をもっていると言えますが、聞いた感じは真逆です。シベリウスの音楽はどんどん縮小していく静かな世界だとすれば、こちらはマーラーをさらに凶暴にしたような雰囲気でより現代的な感覚に溢れています。この辺りにくると、ニューヨークフィルのメンバーも乗ってきたようで、バーンスタインの指示に答えて結構突っ込んだ領域にまで踏み込んでいます。

録音に関して言うと、第1楽章はかなり大変だったみたいで、何度も録りなおしをしている雰囲気があります。結果として、いささか生気に欠けた部分も見受けられます。
第2楽章はほぼ一発録りを基本として、後は細部の手直しだけにとどまっている感じです。音楽がどんどん膨張していっても響きは決して混濁はせず、この時代の両者の結びつきの緊密さと同時に驚くべきレベルの高さを実感できる生々しい音が収められています。

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