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Home|カラヤン(Herbert von Karajan)|シベリウス:交響詩 「タピオラ」 op.112

シベリウス:交響詩 「タピオラ」 op.112

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1964年10月30日録音

Sibelius:Tapiola, Op.112


シベリウスの交響曲第8番・・・???

シベリウスと言えばいつも話題になるのが、最晩年の謎の空白(最後の交響詩「タピオラ」を発表したのが1925年ですから、その空白は30年にも及びます)と、幻の交響曲第8番です。残された手紙などを見ると、シベリウスは7番に続く交響曲を創作し続けていて、一度は完成を見たものの、結局はその出来に満足できなかったためにスケッチも含めて全てのスコアをアイノラの庭で燃やしてしまった事がうかがわれます。
「交響曲第8番は括弧つきでの話だが何度も“完成”した。燃やしたことも1度ある」

しかし、反語的な言い方になりますが、私たちはシベリウスの生前にすでに第8交響曲を持っていたという人もいます。それは、この最後の交響詩「タピオラ」を第8交響曲に見立ててもいいだろうという主張です。
実は、シベリウスは第7交響曲を最初は「交響詩」として発表する予定でした。実際、初演の時には『交響的幻想曲』として演奏され、出版の時に第7番の交響曲とされました。単一楽章と言う、ある意味では交響曲仲間の「鬼子」のような存在であっても作曲家が最終的に「交響曲」と位置づけたのですから、規模でも、その構成の緻密さにおいても譲ることのないこの交響詩「タピオラ」を第8番の交響曲と見立てたとしてもそれほどのお叱りは出ないだろう・・・と言うわけです。

ちなみに、「タピオラ」とは、森の神「タピオ」の領土という意味です。
ただし、カレワラでは、この森の神は決して姿は表さず、ただ祈りや呼びかけの中にその名が出てくるだけの存在です。その意味では、この交響詩はそれ以外のカレワラを題材にした作品のような物語性はなく、ただフィンランドの深い森を抽象的、象徴的に描き出した作品だといえます。
冒頭の単純なモチーフが音程を変えて執拗に繰り返される中で、知らず知らず引き込まれていくあの世ともこの世とも思えぬ雰囲気が、実にシベリウスの最後の作品にピッタリです。


カラヤン的に再構築されたシベリウス

カラヤンのシベリウスと言えば、この4番と5番のセットの後に録音された6番と7番のセットが名盤として名高いようです。
聞いてみればすぐに分かることなのですが、響きの美しさにこだわり続けたカラヤンの美学とシベリウスの特質がものの見事にマッチした素晴らしい演奏と録音になっています。カラヤンは50年代のフィルハーモニー管時代から晩年の80代までに切れ目無くシベリウスの作品を取り上げているのですが、この60年代の一連の録音がもっとも上手くいっているように思います。

今さら言うまでもないことですが、4番と5番は対照的な雰囲気を持っています。
生死の境をさまよった後に作曲された4番は、シベリウス作品の中ではもっとも晦渋な佇まいをもっているのに対して、5番の方はそれとは対照的な祝典的雰囲気に溢れた音楽になっています。専門家筋の間では、この4番の晦渋さこそがシベリウスの最高傑作と言われるのですが、実際に聞いてみて、素直に心の底から「いい音楽だなぁ!」と思える人は多くはないでしょう。

それは私もそうであって、今まで聞いた中で唯一感心したのはヘルベルト・ケーゲル&ライプチッヒ放送交響楽団による69年盤くらいしかありませんでした。しかし、あれがシベリウスの4番の理想的な演奏なのかと問われれば、それはもう即座に「No!」と答えるでしょう。
つまりは、あれを聴いて感心したのはシベリウスではなくてケーゲルだったからです。
もう少し分かり安く言いかえると、あそこではケーゲルはシベリウスの4番を素材として、結局はケーゲル自身の音楽を再構築しちゃっていて、聞き手である私はその再構築したケーゲルの音楽に感心させられてしまっていたのです。

ですから、あれをシベリスの4番の理想的な演奏などとは全く思えませんでしたが、心底感心させられたことは間違いありません。

そして、もしかしたら、このカラヤン盤もまた方向性はケーゲルとは真逆なまでに異なっていますが、音楽の作り方は非常に通っているのかもしれません。
ここでのカラヤンもまた、シベリウスの4番を素材として、そこから己の感覚で美しいと思える響きを上手く再構築して連ねることで、カラヤン的な美しさに溢れた音楽に仕上げています。結果として、この作品につきまとう晦渋さは姿を消して、実に聞きやすく美しい音楽にしあがっています。
ですから、この演奏を取り上げて響きの美しさにこだわりすぎてノッペリしすぎなどというのは、カラヤンの意図を無視して自分の好みで好き嫌いを言っているだけのことに過ぎないのです。個人的には、こういうアプローチもあっていいのではないかとは思います。
なんと言っても、この晦渋なことで有名な交響曲が美しく、そして楽しく聞けるのですから。

なお、5番の方は、そこまで無理をしなくても美しい部分が満載の交響曲ですから、祝典的雰囲気がカラヤン的な豪華さと相まって楽しい演奏と録音になっています。

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2016-02-20:nakamoto





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