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リパッティ(Dinu Lipatti)|バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番
バルトーク:ピアノ協奏曲 第3番
P:ディヌ・リパッティ パウル・ザッハー指揮 南西ドイツ放送交響楽団 1948年5月30日 バーデン・バーデンでのライブ録音
Bartok:ピアノ協奏曲第3番「第1楽章」
Bartok:ピアノ協奏曲第3番「第2楽章」
Bartok:ピアノ協奏曲第3番「第3楽章」
白鳥の歌
バルトークは生涯に3曲のピアノ協奏曲を書いています。これ以外にも「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」と言う作品がバルトーク自身の手によって協奏曲としてアレンジされていますから、これもカウントすると4曲ということになります。
多作とは言えなかった人だけにこの数は注目に値します。ピアニストとしても傑出した才能を持っていただけにとりわけ愛着の深い楽器だったのでしょう。
そんなピアノ協奏曲のなかにおいてこの第3番は異質な作品といえます。何よりも分かりやすく、どちらかと言えば古典的なたたずまいを見せる作品です。ピアノを打楽器のように扱った以前の作品と比べると明らかに急進的なたたずまいは影を潜めています。
よく知られているようにこの作品はバルトークの最後の作品となりました。自らの死を避けがたいものとして確信するなかで、後に残される妻のためのために書き残した作品がこの第3番の協奏曲でした。(妻のディッタ・パーストは優れたピアニストでした)
評論家のなかには、この作品のそのような分かりやすさをバルトークの衰えと見る人もいます。
しかし宗教的なまでに高められた透明性は他に変わるものを見いだすことは困難です。
また、極限までに無駄なものをそぎ落とした透明性こそバルトークという人の本質であったとことを考えれば、彼の白鳥の歌としてこれほどふさわしい作品はありません。
ユング君個人としては、バルトークのピアノ協奏曲のなかではもっとも愛着を感じる作品です。いや、それどころか、バルトークの全作品のなかでももっとも大好きな作品ですし、もしかしたら、ピアノ協奏曲というジャンルのなかでもっとも好きな作品かもしれません。
リパッティのピアノでこの作品がきける幸せ
それは感じながらも、あまりにも分厚い響きに不満を覚えるのも事実です。この作品の初演は1946年ですから(シャンドールのピアノ、オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団)、まさにバリバリの現代音楽として演奏されたのですが、聞けば分かるように後期ロマン派様式の音楽として演奏されています。
オケもピアノも響きが分厚くて、とりわけリパッティはそのテクニックを全開させてバリバリ弾きまくっています。このころは死の影などはなかったのでしょうか?(この辺の詳細はあまり詳しくないので、ご存じの方がおられたら教えてください)
少なくともこの演奏からは覇気に満ちた輝かしいピアノが聞けます。
ただその満ちあふれる覇気がこの作品とはうまくマッチしていないのが残念ですが、当時この作品がどのように受けとめられていたのかを知る上では興味深い録音です。
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よせられたコメント
2009-04-27:カズ
- 大変貴重な音源を公開いただき、ありがとうございます。
リパッティのこの演奏はレコードを持っていなかったので初めて聴きました。贔屓のピアニストなので、この曲はもうこれでいいのだと思う事にしました。
ランドフスカのゴールドベルク変奏曲はリンク切れですか?
再生できず残念です。
またいつか寄らせていただきます。さようなら
<ユング君より>
ランドフスカのゴールドベルク変奏曲のリンク切れ、修正いたしました。(^^v
2018-02-10:ウィルソン
- この曲はアンダ/フリッチャイ/ベルリン放送響のCDでいつも聴いていて、リパッティはシューマンなどで馴染んでいながら、この録音の存在には今回初めて気づきました。
ユングさんはいささかの疑問を感じていらっしゃったようですが、私としては「ああ、こういう視点もあったのか」と気づかされた思いです。
両録音の間の10年ほどの時間差がこれほどの違いを生んだのでしょうか。
よりザッハリヒで硬質な表現を基調とした上で熱演を繰り広げるアンダとフリッチャイのコンビの方が、バルトークがピアノという楽器をどのようなものとして捉えていたかについては、より深く理解していたようにも見えます。
ただ、うまい下手の部分は措くとして、最晩年のバルトークがこの曲に託した思いや、その上に重くのしかかっていた時代の空気をよく汲み取っているのは、没後3年足らずという時期に録音されたこちらであるような気がします。
分厚い響きのせいでしょうか、聴きながら連想したのがラフマニノフの交響的舞曲でした。作曲技法で比べると1世代も2世代も違う両作曲家ですが、故国を離れて新大陸に暮らし、第二次世界大戦の行く末を見届けることなく没した二人の残した「白鳥の歌」を聴き比べてみると、そこに残された孤独感と望郷の念は似通っているように感じられるのは私だけでしょうか。
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