クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ワルター(Bruno Walter)|ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調

ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調

ワルター指揮 コロンビア交響楽団 1959年11月16&18日録音

Bruckner:Symphony No.9 in D minor [1st movement]

Bruckner:Symphony No.9 in D minor [2nd movement]

Bruckner:Symphony No.9 in D minor [3rd movement]


ブルックナーの絶筆となった作品です

しかし、「白鳥の歌」などという感傷的な表現を寄せ付けないような堂々たる作品となっています。ご存じのようにこの作品は第4楽章が完成されなかったので「未完成」の範疇にはいります。
もし最終楽章が完成されていたならば前作の第8番をしのぐ大作となったことは間違いがありません。

実は未完で終わった最終楽章は膨大な量のスケッチが残されています。専門家によると、それらを再構成すればコーダの直前までは十分に復元ができるそうです。
こういう補筆は多くの未完の作品で試みられていますが、どうもこのブルックナーの9番だけはうまくいかないようです。今日まで何種類かのチャレンジがあったのですが、前半の3楽章を支えきるにはどれもこれもあまりにもお粗末だったようで、今日では演奏される機会もほとんどないようです。

それは補筆にあたった人間が「無能」だったのではなく、逆にブルックナーの偉大さ特殊性を浮き彫りにする結果となったようです。

ブルックナー自身は最終楽章が未完に終わったときは「テ・デウム」を代用するように言い残したと言われています。その言葉に従って、前半の3楽章に続いて「テ・デウム」を演奏することはたまにあるようですが、これも聞いてみれば分かるように、性格的に調性的にもうまくつながるとは言えません。

かといって、一部で言われるように「この作品は第3楽章までで十分に完成している」と言う意見にも同意しかねます。
ブルックナー自身は明らかにこの作品を4楽章構成の交響曲として構想し創作をしたわけですから、3楽章までで完成しているというのは明らかに無理があります。

天国的と言われる第3楽章の集結部分を受けてどのようなフィナーレが本当は鳴り響いたのでしょうか?永遠にそれは聞くことのできない音楽だけに、無念は募ります。


最晩年の素晴らしい贈り物

ワルターとブルックナーというのはそれほど相性がいいようには見えません。

ワルター最晩年のステレオ録音と言えば、まずはベートーベンの田園、ブラームスの4番、そしてマーラーの巨人あたりがいつも話題になります。
ワルターの十八番とも言うべきモーツァルトになると、ホントはニューヨークフィルとのモノラル録音の方がいいんだけど、でもこっちはステレオ録音だからね・・・仕方ないか・・・見たいな断り書きつきでの高評価だったりします。
だから、この最晩年のブルックナー録音については長きにわたって無視され続けてきた事は否定できません。

しかし、過去の評価などは一度リセットして、虚心に音楽と向き合ってみれば、このブルックナーはそれほど悪くはありません。

この国のブルックナー受容と言えば、まずはクナでありシューリヒト、それに続くのがヨッフムであり朝比奈であったりするのです。そして、近年はその地位にヴァントがついていたのですが、その最後の巨匠もなくなってしまうと誰に頼ればいいのだ・・・と言う雰囲気になっています。
ですから、そう言う刷り込みの評価は一度きれいに捨て去って、演奏そのものに虚心に向き合ってみる必要があるのです。

この一連のステレオ録音を貶すときに真っ先に指摘されるのがオケの編成の小ささからくる弦楽器の響きの薄さです。
しかし、PCオーディオに取り組む人が増え、その結果としてCD再生のレベルが上がることで、コロンビア響の弦楽器群は言われるほどには非力でないことが明らかになってきました。とりわけ響きの薄さ故にだめ出しをされてきたブルックナーの録音も、ある程度のレベルで再生すれば、非常に自然で豊かな響きがとらえられている事がわかるはずです。一部で言われた、響きの薄さを電気的に操作してふくらませているというような不自然さも感じません。

そして、そう言う環境でワルターのブルックナーをじっくりと聞いてみれば、他の指揮者ではあまり感じ取れない伸びやかで明るい音楽がそこに満ちていることに気づかされます。とりわけ、緩徐楽章の歌心にに満ちた美しさは4番でも7番でも素晴らしいものがあります。もちろん、9番の最終楽章もある種の神々しさに満ちています。
こういう歌う部分についての本能は素晴らしいものがあります。

これは、どこかで読んだ話で裏はとれていないのですが、ワルターは晩年、肺炎にかかって死線をさまよってからブルックナーの本当のすばらしさが初めて分かるようになったと語っていたそうです。
もしも、その話が本当ならば、その最晩年に何という素晴らしい贈り物を残してくれたことでしょう。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



2042 Rating: 5.0/10 (166 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2014-09-16:Sammy


2014-08-24:原 響平


2016-03-31:ヨシ様





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)