クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでカラヤン(Herbert von Karajan)のCDをさがす
Home|カラヤン(Herbert von Karajan)|グリーグ:ペールギュントからの音楽

グリーグ:ペールギュントからの音楽

カラヤン指揮 ウィーンフィル1961年9月5~22日録音

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 [Morning]

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 [The Death of Ase]

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 [Anitra's Dance]

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 [In the Hall of the Mountain King]

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 [Ingrid'sLament]

Grieg:Music From Peer Gynt Op.23 Solveig's Song]


今では組曲の方が有名になってしまいました。

 イプセンが書いた詩劇「ペールギュント」はノルウェーに古くから伝わる民話を素材としていますが、簡単に言えば、とんでもない身勝手な男とそんな馬鹿な男を支えて待ち続ける純情な女の物語です。ワーグナーなんかが典型なのですが、どうもこういう「とんでもない男の身勝手」というモチーフが西洋人は好きなようです。
 登場するのは道楽の果てに財産を使い果たした馬鹿親父を持つ大ボラふきのペールとそんな馬鹿息子を溺愛する馬鹿母のオーゼです。(凄い一家です^^;)そして、そんなペールに心を寄せる「純情な娘・・・ソルヴェイグ」がこの物語の主要な登場人物です。

 物語はペールの波乱に満ちた人生を縦糸に、そんなペールを信じて待ち続けるソルヴェイグを横糸として展開されていきます。
 ペールはソルヴェイグという恋人がいながら幼なじみだったイングリットを結婚式の場から奪って逃げたり、国際的な山師となってモロッコの皇帝の財宝をだまし取ったり、カリフォルニアで大金持ちになったりします。しかし、せっかく奪ったイングリッドなのにあきて捨ててしまったために山の魔物に酷い目にあわされたり、だまし取った財宝を色仕掛け(アニトラのお踊り)でだましたられたり、せっかくの財宝も船が難破して全て失ったりしてしまいます。
 そしてようやくにして帰り着いた故郷では盲目になりながらもソルヴェイグが彼の帰りを待ち続け、そんなソルヴェイグに許しを請いながら安らかな最期を迎えるというお話です。(何という荒っぽいあらすじ・・・_(_^_)_ ゴメンチャイ)
 グリーグはそんなとんでもないお話に音楽をつけるのは心がすすまなかったようですが、頼まれると嫌といえない性格だったのか、苦労しながら28曲の音楽を作曲します。そして、その28曲の中から4曲ずつ「お気に入り」を抜き出し、オーケストレーションなどを手直しして1888年に第1組曲、1892年に第2組曲を作曲します。
 現在では本家の詩劇の方はほとんど読まれることもなく、そのために全曲版の方も滅多に演奏されません。しかし、組曲の方は見方によっては4楽章構成の交響曲のように見えなくもない(見えないか・・・^^;)まとまりの良さもあって、現在ではグリーグを代表する作品としてよくコンサートでも取り上げられます。

○ 第1組曲
1. 前奏曲『朝の気分』 第4幕の前奏曲(No.13)
2.『オーゼの死』 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)
3.『アニトラの踊り』 第4幕第6場(No.16)
4.『山の魔王の宮殿にて』 第2幕第6場の開始(No.8)

○ 第2組曲
1. 前奏曲『花嫁の略奪とイングリッドの嘆き』 第2幕の前奏曲(No.4)
2.『アラビアの踊り』 第4幕第6場(No.15)
3. 前奏曲『ペールギュントの帰郷』 第5幕の前奏曲(No.21)
4.『ソルヴェイグの歌』 第5幕第5場(No.23)

カラヤンの61年録音では『アラビアの踊り』と『ペールギュントの帰郷』 は収録されていません。


カラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」

過去にこんな事を書いたので、新しくパブリックドメインとなったカラヤンのデッカ録音を追加します。
この横へ横へと気持ちよく旋律線が流れていく音楽作りをどう受け取るかによって評価は随分かわってくるでしょうね。それから、ウィーンフィルの響きの美しさをうまくすくい取ったデッカ録音をどこまで楽しめるか、も大きなポイントかと思います。
私は、とんでもない状況で録音されたらしい「ジゼル」でさえ、ウィーンフィルの美音をフルに活用してそれなりに聞かせてしまうカラヤンの手腕には感心させられました。

######################################

ウィーンフィルとコンビを組んだ一連のデッカ録音は今ではすっかり影が薄くなってしまいました。しかし、彼が1959年にまとめて録音した3つの音楽(ベトーベンの7番、ハイドンのロンドン交響曲、そしてモーツァルトのト短調交響曲)をこうして聴き直してみると、「意外といいね」というレベルではなく、もしかしたらカラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」ではないかと思うようになりました。
カラヤンという人は、例えばクレンペラーのように、もしくはヴァントのように、煉瓦を一つずつ丹念に積み上げていって巨大な構築物を作り上げるような音楽家ではありません。そうではなくて、横への流れを重視し、明確な意志を持ってクッキリとメロディラインを描き出すことに重きを置いた音楽家でした。
そして、この国の通のクラシック音楽ファンはどういう訳か、、前者のようなスタンスは後者のスタンスにに対して優位性を持ったものとしてきました。
口の悪い私の友人などは、「カラヤンの音楽って何を聞いても映画音楽みたい」と宣っていたものでした。

しかし、そう言う理解の仕方には大きな間違いがあることに私も最近になって気づくようになりました。

確かにカラヤンの音楽は気持ちよく横へ横へと流れていきます。その意味では、耳あたりのいい映画音楽のように聞こえるのかもしれません。
しかし、聞く耳をしっかり持っていれば、メロディラインが横へ横へと気持ちよく流れていっても、そこで鳴り響くオケの音は決して映画音楽のように薄っぺらいものでないことは容易に聞き取れるはずです。映画音楽が一般的に薄っぺらく聞こえるのは、耳に届きやすい主旋律はしっかり書き込んでいても、それを本当に魅力ある響きへと変えていく内声部がおざなりにしか書かれていないことが原因です。
そして、例え響きを魅力あるものに変える内声部がしっかりと書き込まれていても、主旋律にしか耳がいかない凡庸な指揮者の棒だと、それもまた薄っぺらい音楽になってしまうことも周知の事実です。

当然の事ですが、カラヤンはそのような凡庸な音楽家ではありません。
カラヤンの耳は全ての声部に対してコントロールを怠りませんし、それらの声部を極めてバランスよく配置していく能力には驚かされます。そして、彼の真骨頂は、強靱な集中力でそのような絶妙なバランスを保ちながら、確固とした意志でぐいぐいと旋律線を描き出していく「強さ」を持っていることです。
それは、例えてみれば、極めてコントロールしにくいレーシングカーで複雑な曲線路を勇気を持って鮮やかに走り抜けるようなものかもしれません。彼は、目の前の曲線路の中に己が走り抜けるべきラインをしっかりと設定すると、そのラインに躊躇うことなく突っ込んでいきます。カーブの入り口で様子を見ながら少しずつハンドルを切るというような、凡庸な指揮者がやるよう不細工なことは決してしないのです。

ベートーベンの7番の第2楽章などは、そう言うカラヤンの美質が良く出た音楽ですし、ハイドンのロンドン交響曲も、こんなにもメロディラインが美しい音楽だったのか!と驚かされます。
モーツァルトト短調シンフォニーも本当に流麗な作りですが、ただし、その流麗さが過ぎて鼻につく人もいるかもしれません。(それって、あんたのことでしょう^^;)

そして、もう一つ特筆すべき事は、このウィーンフィルとの録音ではそのようなカラヤンの美質が極めて自然な形で実現していることです。おそらく、カラヤンが目指そうとした音楽の形とウィーンフィルの本能が上手くマッチングしているのでしょう。ここには、後のカラヤン美学全開のベルリンフィルとの音楽のような「人工臭」が全くありません。
もちろん、カラヤンの強烈な個性とそれを現実のものにするベルリンフィルの高度の合奏能力、とりわけ弦楽器群の優れた響きによって実現された響きは、20世紀のオーケストラ美学の一つの到達点であったことは否定しません。しかし、その磨き抜かれた響きのあまりの完成度の高さゆえに、そして横への流れがあまりにも重視されすぎることでリズム感が希薄になる部分もあったりして、結果として作り物めいた違和感を感じる場面があったことも否定できません。
それと比べると、このウィーンフィルとの録音は、カラヤンらしい美しさは堪能できるし、その美しさには一切の作り物めいた不自然さは感じられません。ですから、カラヤンという音楽家が持っている美質が最も自然に表現されている「優れもの」と感じたのです。

これはもう、残りのデッカ録音も全てアップしないといけませんね。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1980 Rating: 4.9/10 (108 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-04-18]

エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85(Elgar:Cello Concerto in E minor, Op.38)
(Cello)アンドレ・ナヴァラ:サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1957年録音(Andre Navarra:(Con)Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on 1957)

[2024-04-16]

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

[2024-04-14]

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」, Op.62(Beethoven:Coriolan, Op.62)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月1日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on June 1, 1945)

[2024-04-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第3番 ト長調 K.156/134b(Mozart:String Quartet No. 3 in G Major, K. 156)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-10]

ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調「狩」,Op. 1, No. 1, Hob.III:1(Haydn:String Quartet No.1 in B-Flat Major, Op. 1, No.1, Hob.3:1, "La chasse" )
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June 5, 1938)

[2024-04-08]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18)
(P)ジェルジ・シャーンドル:アルトゥール・ロジンスキ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年1月2日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Artur Rodzinski New York Philharmonic Recorded on January 2, 1946)

[2024-04-06]

シベリウス:交響的幻想曲「ポヒョラの娘」(Sibelius:Pohjola's Daughter - Symphonic Fantasy Op.49)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年6月7日~8日録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on June 7-8, 1962)

[2024-04-04]

ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調, Op.50(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)

[2024-04-02]

バルトーク:弦楽四重奏曲第6番, Sz.114(Bartok:String Quartet No.6, Sz.114)
ヴェーグ弦楽四重奏団:1954年7月録音(Quatuor Vegh:Recorded on July, 1954)

[2024-03-31]

ベートーヴェン:ロマンス 第1番 ト長調, Op.40(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.1 in G major, Op.40)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)