Home |
ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz) |ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 Op.37
ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 Op.37
(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ:サー・マルコム・サージェント指揮 ロンドン新交響楽団 1961年5月15日&22日録音
Vieuxtemps:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 Op.37 「第1楽章」
Vieuxtemps:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 Op.37 「第2楽章」
Vieuxtemps:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ短調 Op.37 「第3楽章」
ヴァイオリンの課題曲?
「Vieuxtemps」は日本語では「ヴュータン」と表記されるそうです。私などはいつも「ヴォータン」みたいな読み違いをしてしまって変な感覚になることが良くあります。(「ヴォータン」はいうまでもなくニーベルングの指輪に登場する神々の長です)
まあ、そんなことはどうでもいい話なのですが、この「ヴォータン」ならぬ「ヴュータン」のヴァイオリン協奏曲はコンクールの課題曲としてよく用いられます。小さい頃からヴァイオリンを押しつけられた子どもたちが何とかめげずに入門期を乗り越えると、その次に与えられるのがこの協奏曲・・・というのが良くある図式らしい・・・です。
ですから、普通のコンサートでこの作品が取り上げられることは非常に希なのですが、発表会やコンクールでは良く耳にする作品です。そんなわけですから、録音にもあまり恵まれていません。
そんな中でハイフェッツが何回かこの作品を録音しているのは面白い事実です。
そう言えば、ホロヴィッツもクレメンティのソナタを録音していましたした。面白いのは、そういう練習曲か課題曲としか見なされていないような作品でも、そう言うとびきりの「腕」で演奏されると、今まで誰も気がつかなかったような世界が立ち現れることです。
ホロヴィッツはただの練習曲としか思われていなかったクレメンティの作品の中に、ベートーベンにも通じていくような豪快な味を見つけ出して、それを現実のモノとして提示してくれました。
ハイフェッツもまた、この甘い情緒だけの作品としか思われていない中から「悲しみ」の結晶を見つけ出して、それをとんでもない切れ味で描き出してくれました。
悲しいのは、その演奏を聴いて、「なるほどヴュータンのヴァイオリン協奏曲も捨てたものでもない」と思ったとしても、誰もそれと同じように演奏できないことです。コンクールとりわけ、ヴァイオリンの発表会なんかでこの作品を聞かされると、まるで別の作品を演奏しているような錯覚にすら陥ります。
もちろん、基準をハイフェッツに置くというのが根本的に間違っているのですが・・・(^^;。
才ある人が努力をするととんでもないことになる
ある有名なヴァイオリンの大家がハイフェッツについてどう思うかと聞かれたときに次のように答えたそうです。
「確かに優れた演奏家だが、やつは10歳の頃から少しも進歩していない。」
これをほめ言葉と聞くか、批判と聞くかは難しいところですが、少なくとも2つのことは認めています。
その一つは、ハイフェッツは10歳にして並ぶ者のないほどの巨匠の域に達していたと言うこと(1911年の録音が残っているそうです)、もう一つは、その高いレベルを引退する(1972年のラストレコーディング)まで保ち続けていたと言うことです。
あれ?これってもしかしたら「究極のほめ言葉」・・・?
ハイフェッツと言えば、その凄さは「天才」という極めて便利な言葉で片付けられてしまいます。しかし、どれほどの天才であっても、その「才」だけに頼っていれば、その生涯にわたって高いレベルを維持することは不可能です。その事は、ハイフェッツと並び称されるホロヴィッツを比べてみれば明らかです。
確かに、ホロヴィッツも偉大な天才であったことは事実です。しかし、ホロヴィッツにあってハイフェッツになかったものは「スランプ」です。
ホロヴィッツはその生涯において深刻なスランプを二度経験しています。とりわけ二度目のスランプは深刻で、「再起不能」とまで言われて、演奏活動も長期にわたって中断しています。さらに言えば、そう言う深刻なスランプではなくても、彼は時たま「これが本当にホロヴィッツの演奏なの」と首をかしげたくなるような酷い演奏もしました。その酷い演奏が彼の初来日の時にビンゴしてしまったのは不幸なことでしたが、ホロヴィッツという演奏家にはそう言う波が常につきまとっていました。
ところが、ハイフェッツについて言えば、10才の頃から、最後の録音となった71歳の時まで、実に淡々と演奏活動を続けた人生でした。そしてその演奏は、いつの時であっても「さすがはハイフェッツ!!」と聞く人を感嘆させるほどの高いレベルを常に維持していました。
つまりはハイフェッツのコンサートには「外れ」はなかったのです。
言うまでもないことですが、このような「持続力」と「安定感」は「才」のなせる技ではありません。それはまさに「節制」という努力なくして実現するものではありません。
どこで読んだのかは忘れましたが、若い頃のハイフェッツは己の「才」に傲って「遊び」に走ったこともあるようです。しかし、そうすると、その報いは演奏に表れ、親しかった評論家にその事を厳しく指摘されたそうです。ハイフェッツが偉かったのは(まるで、子どもの頃読まされた「偉人伝」みたいな話で気が引けるのですが^^;)、その指摘を真摯に受け止めて、すぐに生活を改めたことです。
ハイフェッツは演奏会終了後のお約束とも言うべき「パーティー」には一切顔を出さないことで有名でした。また、スケジュール管理も厳密で、演奏が荒れてしまうような過密スケジュールは厳に戒めていたようです。そして、カール・フレッシュの「スケール・システム」を一日一回は必ず弾いていたという話も伝わっています。
ちなみに、あのスケールはかなり腕の立つヴァイオリニストでも全曲弾き切るには3時間はかかるそうなのですが、ハイフェッツはそれを40分程度で弾ききっていたとそうです。(ヘボだと一日かかっても終わらない・・・と言う話も・・・)
有名なエピソード。
ハイフェッツが道でとある貴婦人に「カーネギーホールに行くにはどうすればいいのですか?」と聞かれたそうな。
ハイフェッツはぶっきらぼうに答えます。
「練習!練習あるのみ」
道順を教えてほしかっただけの貴婦人は唖然としたそうですが、その「勘違い」にこそハイフェッツの「天才」とは異なるもう一つの本質が浮かび上がってきます。
厳密に聞けば、50年代の録音の方がハイフェッツらしいのでしょうが、それでも10年後のこの録音もまたハイフェッツ以外の何物でもありません。そうなると、ステレオ録音のメリットの方が大きいと言うことで、これがハイフェッツの代表盤と言うことになっています。
ヴュータンのヴァイオリン協奏曲には、協演したオケのメンバーが興奮のしすぎで帰りのバスを乗り間違い、さらにはその興奮がバスに乗っても醒めないので、終点について初めて乗り間違えたことに気づいたという逸話も残っています。
努力は才に勝るという話もありますが、才ある人が努力をするととんでもないことになるようです。
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1820 Rating: 5.2 /10 (237 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-10-11]
ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)
[2026-10-09]
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)
[2026-10-07]
J.S.バッハ:カンタータ第51番「全地よ、神を向かえて歓呼せよ」,BWV 51(J.S.Bach:Cantata: "Jauchzet Gott in Allen Landen", BWV 51)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ペーター・ゲルホルン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年10月6日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(cpn)Peter Gellhorn Philharmonia Orchestra Recorded on October 6, 1950)
[2026-10-05]
J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069(J.S.Bach:Orchestral Suite No.4 in D major, BWV 1069)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)
[2026-10-02]
ルイス・デ・ミラン:「エル・マエストロ」からのファンタジア、舞曲、そしてロマンセ(Luys Milan:Fantasias, Dances And Romances From El Maestro)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ:(T)ベルンハルト・ミヒャエリス 1956年11月30日~12月1日録音(Walter Gerwig:(T)Bernhard Michaelis Recorded on Novembar 30~December 1, 1956)
[2026-09-30]
ヴィヴァルデ:オーボエ協奏曲 ハ長調, Rv.447(Vivaldi:Oboe Concerto in C major, RV.447)
レナート・ファッサーノ指揮:(Ob)レナート・ザンフィーニ ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:(Ob)Renato Zanfini Virtuosi Di Roma Published in 1958)
[2026-09-28]
マヌエル・ポンセ:南の協奏曲(Manuel Ponce:Concierto del Sur)
(Gt)アンドレス・セゴビア:エンリケ・ホルダ指揮 シンフォニー・オブ・ジ・エア 1958年録音(Andres Segovia:(con)Enrique Jorda the Symphony of the Air Recorded in 1958)
[2026-09-26]
モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」{エクスルターテ・ユビラーテ), K.165(Mozart:Exsultate, Jubilate, K.165/K.158A)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ワルター・ジュスキント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1947年5月26日,28日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(con)Walter Susskind Philharmonia Orchestra Recorded on May 26,28, 1947)
[2026-09-24]
マラン・マレー:組曲第4番 ニ長調(Marin Marais:Suite No. 4 In D Major)
アウグスト・ヴェンツィンガー:(Vdg)ハンネロレ・ミュラー (harpsichord)フリッツ・ノイマイヤー 1956年4月4日~5日録音(August Wenzinger:(Vdg)Hannelore Mulle (harpsichord)Fritz Neumeyer Recorded on April 4-5, 1956)
[2026-09-22]
J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068(J.S.Bach:Orchestral Suite No.3 in D major, BWV 1068)
クルト・レーデル指揮:(Fl)クルト・レーデル ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:(Fl)Kurt Redel The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)