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クレンペラー(Otto Klemperer)|メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
クレンペラー指揮 フィルハーモニア管 1960年2月15,17&18日録音日録音
Mendelssohn:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」 「第1楽章」
Mendelssohn:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」 「第2楽章」
Mendelssohn:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」 「第3楽章」
Mendelssohn:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」 「第4楽章」
弾むリズムとほの暗いメロディ
メンデルスゾーンが書いた交響曲の中で最も有名なのがこの「イタリア」でしょう。
この作品はその名の通り1830年から31年にかけてのイタリア旅行の最中にインスピレーションを得てイタリアの地で作曲されました。しかし、旅行中に完成することはなく、ロンドンのフィルハーモニア協会からの依頼を受けて1833年にようやく完成させています。
初演は同年の5月13日に自らの指揮で初演を行い大成功をおさめるのですが、メンデルスゾーン自身は不満を感じたようで、その後38年に大規模な改訂を行っています。ただ、その改訂もメンデルゾーン自身を満足させるものではなくて、結局彼は死ぬまでこの作品のスコアを手元に置いて改訂を続けました。そのため、現在では問題が残されたままの改訂版ではなくて、それなりに仕上がった33年版を用いることが一般的です。
作品の特徴は弾むようなリズムがもたらす躍動感と、短調のメロディが不思議な融合を見せている点にあります。
通常この作品は「イタリア」という名が示すように、明るい陽光を連想させる音楽をイメージするのですが、実態は第2楽章と最終楽章が短調で書かれていて、ほの暗い情感を醸し出しています。明るさ一辺倒のように見える第1楽章でも、中間部は短調で書かれています。
しかし、音楽は常に細かく揺れ動き、とりわけ最終楽章は「サルタレロ」と呼ばれるイタリア舞曲のリズムが全編を貫いていて、実に不思議な感覚を味わうことができます。
聞き終わったあとには「ずっしり」とした重量感が残ります。
「イタリア」の場合は、さすがに「スコットランド」のようなテンポ設定とはいかなかったようです。当然のことながら、地面に根が生えたようなテンポ設定では、この作品が持つ美質は吹っ飛んでしまいます。
しかし、常識なテンポ設定でありながら、聞き終わったあとには「ずっしり」とした重量感が残ります。そう言う意味では、この「イタリア」においても、クレンペラーはメンデルスゾーンのことを「金持ちの凡」だなどとは露ほども思っていないことが分かります。
おそらく、この「ずっしり」感は、内声部のちょっとした動きまでも疎かにしない精緻極まる目配りと、それを現実の音にしようとする完璧さへの執念と、さらには、そのようなクレンペラーの指示に必死で応えようとしたオケの献身がなせる技だと思います。
聞くところによると、クレンペラーはフィルハーモニア管と膨大な量の録音を残したのですが、当時は全てがすべて「大好評」ではなかったようです。
つまりは、あまり売れなかったようで、カラヤンのレコードなどと比べると売り上げ数は「桁」が違ったようなのです。
しかし、その頃は「いい時代」だったようです。
レコード会社は「単年度で結果を出せ!」などとは言わなかったようで、その芸術的高みを信じて「いつかは評価されて売れるときがくるだろう!」というスタンスが許されたようです。
そして、その事を一番信じていたのがフィルハーモニア管のメンバーだったのです。
そう言えば、「レッグのオケ」とも言うべきこのオケは、1964年にレッグがEMIと喧嘩別れをすることで解散の危機に直面します。その時に、オケを全面支援して危機を救ったのがクレンペラーでした。
その事は、この両者がいかに強い信頼で結ばれていたかの証左です。
ともすれば、スコットランドの超弩級の録音に隠れるような存在ですが、セルやトスカニーニの演奏とは全く異なる登山路を使って頂上にたどり着いた演奏だと言っても、決して褒めすぎではないと思います。
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よせられたコメント
2014-10-31:ろば
- カンテッリのものと比べるとかなり大味な演奏。
しかし、大味な中にも絶妙な隠し味が効いていて、立派な印象を受けました。
今どきはこういう巨匠風な演奏は笑われるだけでしょうが、学究的な押し付けがましさがないだけでもゆったり鑑賞できて充実できます。
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