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メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」

クレンペラー指揮 フィルハーモニア管 1960年1月22,25,27&28日録音



Mendelssohn:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」 「第1楽章」

Mendelssohn:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」 「第2楽章」

Mendelssohn:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」 「第3楽章」

Mendelssohn:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」 「第4楽章」


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3番には「スコットランド」、4番には「イタリア」と副題がついています。
 あまりポピュラーではありませんが、5番には「宗教改革」、2番にも「賛歌」と言う副題がついています。

 そして、絶対音楽の象徴みたいに言われるシンフォニーですが、何故か副題がついている方が人気がでます。
 もちろん、シンフォニーでなくても、副題がついている方がうんと人気がでます。もっとも、その副題も作曲者自身がつけたものもあれば、あとの時代で別人が勝手につけたものもあります。
 中には、人気曲なのに名無しでは可哀想だと思ったのか、全く訳の分からない副題がついているものもあります。

 あまりひどいものは次第に使われなくなって消えていくようですが、それなりに的を射ているものは結構通用しています。

 そう言えば、すてきなメロディーを耳にしたときに、「この曲なんて言うの?」なんて聞かれることがよくあります。(よくあるわけないよな(^^;、時々あるほどでもないけれど、でも、たまーにこういう状況があることはあります。)
 そんなときに知ったかぶりをして、「あーっ、これはね『ロッシーニの弦楽のためのソナタ』 第1番から第2楽章ですよ、いい曲でしょう!」等と答えようものなら、せっかくの和んだ空気が一瞬にして硬直していくのが分かります。

 ああ、つまらぬ事を言うんじゃなかったと思っても、後の祭りです。
 でも、そんなときでも、その作品にしゃれた副題がついていると状況は一変します。

 「あーっ、これはねショパンの革命ですよ。祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と言えば、実にかっこいいのである。
 ところが、全く同じ事を言っているのに、「あーっ、これはねショパンのエチュードから第12番ハ短調、作品番号10の12です、祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と答えれば、これは馬鹿である。

 クラシック愛好家がこのような現実をいかに理不尽であると怒っても、それは受け入れざるを得ない現実です。
 流行歌の世界でも、「ウタダの待望の新作「作品番号12の3 変ホ長調!」なんていった日には売れるものも売れなくなります。
もっともっと素敵な標題をみんなでつけましょう(^^)
そして、クラシック音楽にいささかいかがわしい副題がついていても目くじらをたてるのはやめましょう。
 中には、そう言うことは音楽の絶対性を損なうといって「僕は許せない!」と言うピューリタン的禁欲主義者のかたもおられるでしょうが、そう言う方は「クラシック音楽修道院」にでも入って世俗との交流を絶たれればすむ話です。
 いや、私たちは逆にどんどんすてきな副題をつけるべきかもしれません。

 だって、今流れているこの音楽にしても、メンデルスゾーンの「交響曲第3番 イ短調 作品番号56」、と言うよりは、メンデルスゾーンの「スコットランド」と言う方がずっと素敵だと思いませんか。
 それにしても、メンデルスゾーンは偉い、1番をのぞけば全て副題をつけています。有名なヴァイオリンコンチェルトも今では「メンコン」で通じますから大したもです。(うーん、でもこれが通じるのは一部の人間だけか、それに付け方があまりにも安直だ、チャイコン、ブラコンあたりまでは許せても、ベトコンとなると誤解が生じる。)
 ピアノ曲集「無言歌」のネーミングなんかも立派なものです。
 「夢」「別れ」「エレジー」あたりは月並みですが、「「眠れぬ夜に」「安らぎもなく」、「失われた幸福」と「失われた幻影」に「眠れぬままに」「朝の歌」と来れば、立派なものだと思いませんか。


20世紀の演奏史に燦然と輝く金字塔

誰が何と言おうと、私は断言します。数あるクレンペラーの録音の中で、このメンデルスゾーンの「スコットランド」こそが最上のものです。敢えて、「最上のものの一つ」ではなくて、「最上のもの」と言い切ります。
一番の聞き所は、言うまでもなく最後のコーダの部分です。誰が演奏しても、ここはテンポを上げたくなるところですが、クレンペラーは逆にぐっと腰を下ろして、逆にテンポを落としていきます。結果として、まさに空前絶後の巨大にして壮大なフィナーレが出現します。
当然のことながら、この部分だけを猿まねしてテンポを落としてみても虚しいだけです。この造形が説得力を持つのは、それに先立つ音楽が、到底メンデルスゾーンとは思えないほどに重厚にして強固だからです。ですから、先の3楽章をすっ飛ばしてこの最終楽章だけを聞いても、このフィナーレの凄さや素晴らしさは分かりません。手順に従って、最初から聞き通してみて、その最後にフィナーレに到達することで納得がいく性質のものです。

クレンペラーという人は愛想がないとよく言われます。
確かに、彼の作り出す音楽を聴くと、彼って笑うときがあるんだろうか?等と思ってしまいます。
しかし、このメンデルスゾーンの音楽を聴くと、作りは重厚にして強固ではありますが旋律線は底光りするようにして美しく流れていきます。それは、メンデルスゾーンの演奏によくあるような砂糖をまぶしたような甘ったるいものとは全く異なります。異なりますが、厳しいまでの美しさをたたえたその表情はこの上もなく魅力的です。

そう言えば、随分と古い話ですが、このフィナーレに関して「これを聞くと、メンデルゾーンのすぐ隣にブルックナーがたたずんでいることに気づかされます」と書いて、随分批判されたことを思い出します。
その頃は「メーリングリスト」というのが流行っていた時代で、多くの人がそれぞれの音楽観を交流し、たたかわせていました。上記の発言は、そう言う「メーリングリスト」での発言だったのですが、「ブルックナーとメンデルスゾーンとを同列に論じられるなんて私には想像もつかないユニークな見方」等という批判をいただいたものです。

10年以上も前の話です。
レコ芸の威光は未だ衰えをみせず、あらゆる情報と価値観はマスメディアの上流から下流へと流れていた時代の最後の頃でした。特定の評論家の影響力が絶大な意味を持った時代であり、その中でブルックナーは神にも比すべき音楽として称揚されていたのですから、それと金持ちの凡であるメンデルスゾーンを同列に論じるなどと言うことは、冒涜以外の何物でもなかったのでしょう。
しかし、純粋に音楽的に考えてみれば、メンデルスゾーンのコーダとブルックナーのコーダは同じ線上に並んでいると思います。そして、その事を誰よりも明瞭に分からせてくれるのが、このクレンペラーによるスコットランドの演奏です。

これを聴いて、メンデルスゾーンにしては立派すぎるという批判もあるのでしょうが、そう言う人はムラヴィンスキーのチャイコフスキーを聴いても同じことを言うのでしょう。
既成の概念にとらわれて、それからはみ出るような表現に違和感を覚えるというのでは、あまりにも自分の人生を矮小なものにしてしまうでしょう。

そう言う意味も含めて、疑いもなく、20世紀の演奏史に燦然と輝く金字塔だと言えます。
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