クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|エトヴィン・フィッシャー(Edwin Fischer)|ベートーベン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

ベートーベン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

フルトヴェングラー指揮 フィッシャー フィルハーモニア管弦楽団 1951年2月19,20日録音

Beethoven:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 第1楽章

Beethoven:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 第2,3楽章


演奏者の即興によるカデンツァは不必要

ピアノ協奏曲というジャンルはベートーベンにとってあまりやる気の出る仕事ではなかったようです。ピアノソナタが彼の作曲家人生のすべての時期にわたって創作されているのに、協奏曲は初期から中期に至る時期に限られています。
第5番の、通称「皇帝」と呼ばれるこのピアノコンチェルトがこの分野における最後の仕事となっています。

それはコンチェルトという形式が持っている制約のためでしょうか。
これはあちこちで書いていますので、ここでもまた繰り返すのは気が引けるのですが、やはり書いておきます。(^^;

いつの時代にあっても、コンチェルトというのはソリストの名人芸披露のための道具であるという事実からは抜け出せません。つまり、ソリストがひきたつように書かれていることが大前提であり、何よりも外面的な効果が重視されます。
ベートーベンもピアニストでもあったわけですから、ウィーンで売り出していくためには自分のためにいくつかのコンチェルトを創作する必要がありました。

しかし、上で述べたような制約は、何よりも音楽の内面性を重視するベートーベンにとっては決して気の進む仕事でなかったことは容易に想像できます。
そのため、華麗な名人芸や華やかな雰囲気を保ちながらも、真面目に音楽を聴こうとする人の耳にも耐えられるような作品を書こうと試みました。(おそらく最も厳しい聞き手はベートーベン自身であったはずです。)
その意味では、晩年のモーツァルトが挑んだコンチェルトの世界を最も正当な形で継承した人物だといえます。
実際、モーツァルトからベートーベンへと引き継がれた仕事によって、協奏曲というジャンルはその夜限りのなぐさみものの音楽から、まじめに聞くに値する音楽形式へと引き上げられたのです。

ベートーベンのそうのような努力は、この第5番の協奏曲において「演奏者の即興によるカデンツァは不必要」という域にまで達します。

自分の意図した音楽の流れを演奏者の気まぐれで壊されたくないと言う思いから、第1番のコンチェルトからカデンツァはベートーベン自身の手で書かれていました。しかし、それを使うかどうかは演奏者にゆだねられていました。自らがカデンツァを書いて、それを使う、使わないは演奏者にゆだねると言っても、ほとんどはベートーベン自身が演奏するのですから問題はなかったのでしょう。
しかし、聴力の衰えから、第5番を創作したときは自らが公開の場で演奏することは不可能になっていました。
自らが演奏することが不可能となると、やはり演奏者の恣意的判断にゆだねることには躊躇があったのでしょう。

しかし、その様な決断は、コンチェルトが名人芸の披露の場であったことを考えると画期的な事だったといえます。

そして、これを最後にベートーベンは新しい協奏曲を完成させることはありませんでした。聴力が衰え、ピアニストとして活躍することが不可能となっていたベートーベンにとってこの分野の仕事は自分にとってはもはや必要のない仕事になったと言うことです。
そして、そうなるとこのジャンルは気の進む仕事ではなかったようで、その後も何人かのピアノストから依頼はあったようですが完成はさせていません。

ベートーベンにとってソナタこそがピアノに最も相応しい言葉だったようです


典型的な戦後スタイルのフルトヴェングラーの演奏です

フルトヴェングラーとフィッシャーとの組み合わせというと、戦争中のブラームスの第2番のコンチェルトが有名です。(有名じゃないかな・・・^^;)
あれは戦争中のフルトヴェングラーの演奏に一貫する、思いつめたような凄まじさが全曲を貫いています。

それと比べると、同じ組み合わせですがこちらの方は実に冷静な演奏となっています。これもまたフルトヴェングラーの、それも戦後のスタジオ録音に共通する特徴です。
個人的には、こういう戦後スタイルのフルトヴェングラーは嫌いではないのですが、戦時中の演奏スタイルを良しとする人には物足りないでしょうね。

ただ、フィッシャーのピアノは戦中、戦後変わらずにとてもきれいです。リリカルと言っていいかもしれません。録音はこの時代のものとしては最良ですから、やはりこの録音の価値は高いと言えます。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



15 Rating: 5.8/10 (331 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2022-01-13:コタロー





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-05-04]

ベートーベン:ディッタースドルフのジングシュピール「赤ずきん」からのアリエッタ「昔々おじいさんが」による13の変奏曲 WoO. 66(Beethoven:13 Variations on the arietta Es war einmal ein alter Mann from Dittersdorf's Das rothe Kappchen, WoO 66)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

[2026-05-02]

リリ・ブーランジェ:詩篇第24篇「地と、そこに満ちるものは、主のもの」(Boulanger:Psaume 24, La terre appartient a l'Eternel)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (Br)ピエール・モレ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (Br)Pierre Mollet Recorded on 1958)

[2026-04-30]

ハイドン:弦楽四重奏曲第64番 変ホ長調, Op.64, No.6, Hob.3:64(Haydn;String Quartet No.64 in E-flat major, Op.64, No.6 Hob.3:64)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)

[2026-04-28]

リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調, S.124(Liszt:Piano Concerto No.1 in E flat major S.124)
(P)レナード・ペナリオ:ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン交響楽団 1963年3月12日~18日録音(Leonard Pennario:(Con)Rene Leibowit London Symphony Orchestra Recorded on March 12-18, 1963)

[2026-04-26]

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第14番 変イ長調, Op.105(Dvorak:String Quartet No.14 in A-flat major, Op.105)
バリリ四重奏団:1954年録音(Barylli Quartet:Recorded on 1954)

[2026-04-24]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調, Hob.III:64(Op.64-6)(Haydn:String Quartet in E-flat major, Hob.III:64)
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団:1950年録音(Vienna Concert House Quartet:Recorded on 1950)

[2026-04-22]

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.61(Beethoven:Violin Concerto in D major, Op.61)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス放送国立管弦楽団 1958年11月8日&10日録音(David Oistrakh:(Con)Andre Cluytens Orchestre national de France Recorded on Novenmber 8&10, 1958)

[2026-04-20]

ルーセル:セレナーデ Op.30(Roussel:Serenade in C major, Op.30)
パスキエ・トリオ:(Fl)ジャン・ピエール・ランパル (Harp)リリー・ラスキーヌ 1955年2月録音(Pasquier Trio:(Fl)Jean-Pierre Rampal (Harp)Lily Laskine Recorded on February, 1955)

[2026-04-18]

ベートーベン:ジュースマイアーの歌劇「スレイマン2世、または3人のサルタン妃」による8つの変奏曲 WoO 76(Beethoven:8 Variations on the Trio Tandeln und Scherzen from Sussmayr's Solimann der Zweite, WoO 76)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

[2026-04-16]

リリ・ブーランジェ:詩篇第129篇「彼らは、わたしの若い時から、たびたびわたしを苦しめた」(Boulanger:Psaume 129, Ils m'ont assez opprime des ma jeunesse)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (Br)ピエール・モレ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseurr (Br)Pierre Mollet Recorded on 1958)