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ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88


ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1958年10月24日〜11月1日録音


一度聞けば絶対に忘れないほどの美しいメロディーです

メロディーメーカーと言われるドヴォルザークですが、ここで聞くことのできるメロディーの美しさは出色です。
 おそらく一度聞けば、絶対に忘れることのできない素晴らしいメロディーです。

 ユング君がこのメロディーに初めてであったのは、車を運転しているときでした。いつものようにNHKのFM放送を聞きながら車を走らせていました。おそらく何かのライヴ録音だったと思います。
 第2楽章が終わり、お決まりのように観客席の咳払いやざわめきが少し静まったころを見計らって、第3楽章の冒頭のメロディーが流れはじめました。
 その瞬間、ラジオから流れる貧弱な音でしたが、ユング君は耳が釘付けになりました。

 それは、今まで聞いたことがないような、この上もなく美しく、メランコリックなメロディーでした。
 その頃は、クラシック音楽などと言うものを聞き始めて間もない頃で、次々と新しい音楽に出会い、その素晴らしさに心を奪われると言う、本当に素晴らしい時期でした。そんな中にあっても、この出会いは格別でした。

 実は、車を運転しながら何気なく聞いていたので、流れている音楽の曲名すら意識していなかったのです。第4楽章が終わり、盛大な拍手が次第にフェイドアウトしていき、その後アナウンサーが「ドヴォルザーク作曲、交響曲第8番」と読み上げてくれて、初めて曲名が分かったような次第です。

 翌日、すぐにレコード屋さんにとんでいったのですが、田舎の小さなお店ですから、「えぇ、ドヴォルザークって9番じゃなかったですか?」等とあほみたいな事を言われたのが今も記憶に残っています。
 クラシック音楽を聴き始めた頃の、幸せな「黄金の時代」の思い出です。

セル&クリーブランドの頂点を形成した時代の録音


すでにあちこちで書いているので、「またか」と思われる方もいるかもしれませんが、懲りずにまた書きます。(^^;
クラシック音楽の世界では「シルバーシート優先」という麗しい習慣があって、年老いた指揮者の演奏を、「巨匠の枯れた演奏」と言って持ち上げます。
これは、歌手や器楽奏者と違って、身体的制約の少ない指揮者では年を重ねるにつれて右肩上がりに芸が深まり向上していくという考えに基づいたものです。
しかし、この考えは明らかに誤っています。
身体的制約の少ない指揮者といえども年を取るにつれて運動能力は落ちていきますから、まずはテンポが遅くなるという形で「衰え」が表面化します。
精神的にも集中力を維持するのが難しくなるので音楽が緩んできます。部分的には良いなと思う場面もあるのですが、それが持続しません。
そして、最後は振り間違いや度忘れと言う悲劇的な出来事で幕がおります。

>>ここから独り言
ああ、こんな事を書くと、「お前には死ぬまでクラシック音楽が持つ深い精神性は理解できない」というお叱りのメールをたくさんいただきそうです。以前、「クレンペラーの晩年の遅いテンポは老化現象のあらわれ」と書いたときは10通近くお叱りのメールを頂きました。<(^ー^ι)
でも、私は深い精神性に満ちた音楽よりは、「スゲエナー!」という生理的快感を呼び起こすような演奏の方が好きなようです。そしてずいぶん年を重ねてきましたが、今のところこの「好み」には変化はないようです。
>>独り言終わり

芸というものは、必ずどこかに頂点があり、そこを超えると明らかに下降曲線に転じます。
ただ、偉大な指揮者というのは、下降曲線に転じたあとの下がり方が小さいというのが特徴です。もともと頂点が高くて、そこからの下降曲線がなだらかだと、かなりの老年期まで意味のある演奏活動を継続できます。ですから、その様な老年期の音楽活動を評価することは決して誤りではありません。
しかし、その指揮者の全生涯を振り返ってみて、もっとも素晴らしかったかのはいつかと問われれば、私は躊躇うことなく、頂点目指して駆け上がっていった時代だと答えます。己が理想とする、まだ見ぬ頂きにむかって駆け上がっていこうとするときに、人は最高に輝きます。

さて、問題はここからです。
偉大な指揮者というものは、下降曲線をむかえてからも結構長く音楽活動を行います。そして、若き時代に録音した作品を晩年になって再録音したりします。そして、その再録音を、多くの評論家達は色々な美辞麗句で天まで持ち上げて、最終的にはその録音が「代表盤」として定着してしまいます。そして、さらに困ったことに、彼が頂点目指して頑張っていた時代の録音がカタログから消えてしまったりします。
これは実に困ったことです。
レコード会社にしてみれば、新しいレコードが売れるのはありがたいことでしょうが、指揮者側から見れば、真に素晴らしい己の業績が埋もれてしまい、それと較べれば一段も二段も落ちる晩年の業績でもって評価されてしまうです。とりわけ、最晩年の落ち込みが大きいにも関わらず再録音に熱心だった場合は「悲劇」です。(ベーム、朝比奈、・・・(;_<)
もっとも、己を客観的に見つめることができず、甘い言葉に惑わされて再録音なんかした本人の責任も小さくありませんが・・・。

「蓋棺録」という言葉があります。人の評価は棺を蓋ってはじめて決まるという意味からきたそうですが、指揮者の世界では残念ながら棺を蓋っても晩年に確立した誤った評価はなかなか覆りません。
亡くなっても、シルバーシート優先なのです。

セルの生涯を振り返ってみると、その頂点は50年代後半だったと私は考えています。
この時代のどの録音を聞いても、素晴らしいオケの響きを堪能できます。それはただ単に美しいというだけではありません。
この時代のセル&クリーブランドの響きを聞いてしまうと、他のオケはほとんどが「へたれ」に聞こえてしまう「強さ」、いやこの漢字ではイメージが違います、「剄さ」に貫かれています。これと較べれば、同時代のライナー&シカゴ響でさえ低域の響きが膨らんでいて緩く聞こえます。

吉田大明神はこのコンビの響きを「白磁」にたとえました。
しかし、50年代後半の響きは「白磁」とは少し違うように思います。白磁なら落とせば割れてしまいますが、50年代のこのコンビの響きはその様な脆さや弱さとは無縁です。あれは落としても絶対に割れません。その「剄さ」こそが真骨頂です。
ですから、私としては「白磁」ではなくて「磨き上げられた大理石」の方がイメージとしてはピッタリです。
そして、60年代になるとそのような「剄さ」が少しずつ影をひそめていき、逆に「しなやかさ」みたいなものが前面に出てきてしまいます。
つまり、大理石は次第に白磁へと変化していったわけです。

私は、これを「芸の深まり」ではなくて、「衰え」だと感じています。
もちろん異論もあるでしょう。セルという人は、その最晩年まで、驚くほど下降曲線がなだらかな人でした。しなやかさの中にどこかゆとりを感じられる60年代の方を良しとする人がいても不思議はありません。
しかし、大理石のような強靱さを持った50年代後半の響きこそが彼が理想だったと私は信じています。

セルはドヴォルザークの8番と9番をそれぞれ3回ずつ録音しています。
9番は59年盤が最後の録音ですから、これが代表盤として残ったことに何の異議もありません。しかし、8番に関しては、彼が死の年(70年)に録音したEMI盤が代表盤として残ってしまいました。そして、彼が亡くなってすでに40年がたつのに、その評価が覆ることはありませんでした。
それだけに、ようやくにしてこの58年盤がパブリックドメインとなって多くの人に提供できるようになったことは実に喜ばしいことです。

演奏も録音も、70年盤よりははるかに引き締まった58年盤を聞けば、この時代のセル&クリーブランドがいかに凄かったがおわかりいただけると思います。
そして、彼の得意中の得意だったドヴォ9をその後なぜに再録音しなかったのかも納得していただけると思います。
そこで、私は確信を持ってこの2つの録音を「セル&クリーブランドの頂点を形成した時代の録音」と言い切りたいと思います。

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