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ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より「ダッタン人の踊り」

セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1958年2月28日録音



Borodin:歌劇「イーゴリ公」よりダッタン人の踊り


今や超有名曲ですね。

何人もの方から、「ダッタン人の踊り」をアップしないのかとプッシュされました。私の感覚としてはボロディンのこの作品はどちらかと言えば辺境のマイナー曲というイメージがあったので、なぜにこんなにもたくさんリクエストが来るんだ?と不思議に感じていました。
しかし、調べてみるとコマーシャルなんかにもよく使われているみたいで(JP東海の「うまし うるわし 奈良」)、さらにあの有名なメロディをカバーしたポップス曲なんかもよく出ているようです。ですから、クラシック音楽に興味は無くいても、あのメロディは知っているという人が意外と多いようで少しばかり驚かされました。
特に、藤澤ノリマサなる歌手が歌う「ダッタン人の踊り」は情報番組のエンディングなどにも使われたみたいで、全く意外なところでボロディンのこの作品は「超有名曲」になってしまっているようです。

ご存知のように、この作品は、ボロディンがその生涯をかけて作曲に勤しんだ歌劇「イーゴリ公」の中の1曲です。残念ながら、本職が「化学者」で、趣味として作曲活動を続けていたボロディンはリムスキー・コルサコフの助力を得ながらも、最終的には自らの手でその作品を完成させることは出来ませんでした。よく知られているように、未完成のまま放置されたロシア五人組の作品を丹念に仕上げていったのはリムスキー・コルサコフだったのですが、この「イーゴリ公」もリムスキー・コルサコフによって仕上げられて、1890年11月4日、サンクト・ペテルブルクのマリンスキー劇場で初演が行われました。
「ダッタン人の踊り」はこのオペラの中の第2幕に登場するのですが、その分かりやすく異国情緒に満ちた音楽は単独で取り上げられるようになり、今では本体の歌劇よりもポピュラリティを得ています。

なお、「ダッタン人」という表記は、原題が「ポロヴェツ人」になっているため、明らかに翻訳ミスによるものと思われます。一時は、ともに中央アジアで活躍する遊牧民族なので似たようなものだろう、と言われていましたが、今では明らかにミスだとされています。
それから、大阪人であるユング君は、「ダッタン人」という言葉を見ると、大阪の詩人、安西冬衛の「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた。」という一行詩を思い出してしまいます。もちろん、両者の間には何の関係もありませんが・・・。


小品にも一切手を抜かないセルの凄味

どこかのサイトで、セルによるリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」の演奏を取り上げて「ロシア的情緒にかける」と書いていた人がいましたが、いったい「スペイン奇想曲」のどこに「ロシア的情緒」があるのだと、思わず首をひねってしまいました。
これは、例えばドヴォルザークのスラブ舞曲などにも言えることですが、こういう民族的情緒にあふれた作品を取り上げるときに、セルはその様な民族的雰囲気にもたれかかるようなことは絶対しなかったと言うことを思い出す必要があります。それは、一見するとスコアに書かれた音をひたすら精緻に再現しているだけのように聞こえますが、しかし、そう言う音楽を聞き進んでいくと、その精緻さの背景から深い民族的情緒が湧きだしてくるのを感じ取れるはずです。そして、そう言う深い情緒は変にしなをつけたり、こぶしをきかせたりすると、いとも簡単にすっ飛んでしまうような性質のものなのです。(ただ、この作品に関しては、やはり合唱を入れて欲しかったな・・・とは思いますが。)

そう言えば、昔の大指揮者は、こういう小品を相手に、結構本気で取り組んでいました。それは、媒体がSP盤という、一枚で精々4〜5分しか収録できない限界から、そう言う小品が「メイン」の作品となり得たという背景があります。今は、そう言う小品は大作を収録したCDの「埋め草」的な扱いしか受けていませんから、演奏の方も「とりあえず音にしました」程度の志の低いものばかりです。
そんな中にあって、意外と言えば意外かもしれませんが、セルはその様な小品に対しても常に本気で取り組んでいて、実に凄味のある演奏を聴かせてくれます。やはり、どんな作品を取り上げても、セルの完璧主義というのは揺るがなかったと言うことなのでしょう。

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2009-02-17:ナルサス


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