1.Nun zaume dein Ros reisige Maid (Wotan)[さあ、馬に鞍をつけよ、天翔る乙女!:ヴォータン]
ヴォータンはブリュンヒルデに、フンディングとの戦いでジークムントに勝利をもたらすように命じます。
ブリュンヒルデはおどけた様子でカンカンになったフリッカがやってくることを伝えて、早々に退散します。
2.Der alte Sturm die alte Muh'! (Wotan)[昔ながらの嵐、相変わらずの頭痛の種:ヴォータン]
ヴォータンはやれやれといった様子でフリッカをむかえます。
婚姻を司る女神であるフリッカはフンディングからの「不倫」の訴えを聞き入れて、さらにはそれが兄妹の交わりであることをおぞましいことだとヴォータンを詰ります。
3.So ist es denn aus mit den ewigen Gottern (Fricka)[野蛮なヴェルフィング族を創ったからには:フリッカ]
フリッカはヴォータンが自分以外の女たちとの間に次々と子供をもうけていったことを引き合いに出し、そのために狼の一族が生まれたことを詰ります。そして、その様な一族は滅ぼすべきだとヴォータンに迫るのです。
4.Nichts lerntest du (Wotan)[いくら私が教えようとしても:ヴォータン]
ヴォータンはフリッカに対してお前は何も理解しようとしないと言い、神々の庇護を受けなくとも、神の掟を破れる英雄の存在が必要なのだと説得しようとします。
5.Was verlangst du (Wotan)[どうしたいというのだ?:ヴォータン]
しかし、ついにフリッカにやりこめられたヴォータンはジークムントを倒すことを誓約してしまうのです。
<第2場>
6.Schlimm Furcht ich schlos der Streit (Brunnhilde)[争いはよくない結果に終わったようですね:ブリュンヒルデ]
どうしようもない誓約をさせられて暗い顔をしているヴォータンに対して、ブリュンヒルデは甘えるように「お父様、あたしにどんなお話を?」となだめます。
7.Was keinem in Worten ich kunde (Wotan)[言葉で誰にも言えないことは:ヴォータン]
ここから、「愛の快楽を求める若き日々が過ぎ去ったあと、私は、心の底から権力を渇望した。激しい望みと怒りに駆り立てられるようにして、私は、この世界を手中にしたのだ。」と、これまでの経緯を語り始めます。
これは大変な長丁場であり、聞き手にとってはかなりの忍耐を求められる場面でもあります。
8.Ein andres ist's achte es woh (Wotan)[そうではない、ヴァラの警告の意味をよく考えてみるのだ:ヴォータン]
ヴォータンの語りはやがて「アルベリヒが指輪を取り戻したとき、ヴァルハラは終わりではないかということだ」という恐れへと発展していきます。
そして、その語りは「消え去るがいい!神々しい輝きよ!神の華麗に彩られた恥辱よ!崩れ落ちよ!私が作ったすべてよ!私はもはや事を成さず、望むことはただ一つだけ、終末!終末だけだ!」という言葉で頂点をむかえます。
そして、この箇所こそは神々の運命が破滅へと向かっていく重要な転換点となるのです。
9.O sag, kunde was sull nun dein Kind (Brunnhilde)[ああ、では、あなたの娘はどうすればいいのですか:ブリュンヒルデ]
結局、ヴォータンは為すすべもなくブリュンヒルデにジークムントを倒すように指令を出します。
当惑するブリュンヒルデに対して強硬に命令を繰り返すとヴォータンは馬を駆って姿を消してしまいます。そして、ブリュンヒルデだけが一人取り残されて重い気分で立ちつくします。
<第3場>
10.Raste nun hier gonne dir Ruh! (Siegmund)[ここで止まろう、休もう!:ジークムント]
逃避行を続けるジークムントとジークリンデが登場する。取り憑かれたように先を急ぐジークリンデに対してジークムントは彼女を引き留めて休もうとします。
11.Hinweg! Hinweg Flieh die Entweihte! (Sieglinde)[離れて、離れて!汚れた私を捨てて:ジークリンデ]
ジークリンデは突然自分の汚れた過去を語り出します。 「行って!行って!けがれた女から離れて!」「不浄の手で、あなたを抱いている女から、この体は、汚され、けがしつくされている、こんな死体からは離れて!手を放して!」
そして、ジークムントが戦いの中で倒れる幻覚にとらわれて気を失ってしまいます。ジークムントは優しく妹を介抱するのですが、それが二人にとって最後の会話となってしまいます。