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Home|ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団(Vienna Concert House Quartet)|モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調, K.285

モーツァルト:フルート四重奏曲 第1番 ニ長調, K.285

(Flute)ハンス・レズニチェック:ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 1949年録音



Mozart:Flute Quartet in D major, K.285 [1.Allegro]

Mozart:Flute Quartet in D major, K.285 [2.Adagio]

Mozart:Flute Quartet in D major, K.285 [3.Rondo]


フルートがオペラのヒロインのように感じられる

モーツァルトのフルートを独奏楽器とする作品は、裕福な商人でもあったフェルディナン・ド・ジャンからの依頼によっていやいやながらも作曲されたものだと言われいてきました。つまりは、モーツァルトはフルートという楽器はあまり好きではなかったと言うのです
しかし、最近の研究によると、それは少しばかり事情が違うようだと考えられる様になってきているそうです。

ド・ジャンはフルートの素人奏者だったのですが、彼がモーツァルトに示した報酬は破格のものでした。それは、フルート協奏曲と四重奏曲の作曲に対して200グルテンを支払うというものだったのです。
200グルテンというのは、当時の音楽家が受け取れる半年分の報酬にあたるものだったのです。

そして、その依頼は、パリへの旅行の途中で立ち寄ったマンハイムで世話になったヴェンドリンがモーツァルトをマンハイムにもう少しとどめておくために用意した仕事だったようです。
そして、その依頼に対して、モーツァルトは父親への手紙で2ヶ月もあれば仕上げられると安請け合いしているのです。
しかし、息子の性格をよく知っている父親のレオポルドはこの言葉を全く信用せず、仕事をはやく済ませるようにお尻を叩く手紙を送ります。しかし、モーツァルトはあれやこれやと言い訳を書き連ねた手紙を送るばかりで仕事ははかどらず、ついにはレオポルドが予想したように約束の期間に作品は完成しなかったのです。

モーツァルトが約束の期間に完成させたのは協奏曲2曲と四重奏曲3曲だったのですが、依頼されたのは協奏曲4曲と四重奏曲6曲だったのです。そのために、ド・ジャン氏から支払われた報酬は半分の96グルテンにとどまってしまったのです。
モーツァルトはその事に対して「半分ならば4グルテン不足だ」と父親に書き送ったために、それまでの手紙のやり取りでモーツァルトが依頼された作品の数を少なく偽っていたことがばれてしまいます。

当然の事ながら、レオポルドは息子に対して手厳しい手紙をおくって彼の怠惰を非難するのですが、その手紙に対してモーツァルトは「ご存知の通り、僕は我慢できない楽器のために書かなくてはならないときは、いつもたちまち気が乗らなくなります」と言い訳の手紙を送ったのです。

モーツァルトはフルートという楽器がお気に入りではなかったという通説はこのモーツァルトの「手紙」に基づくのですが、どうやら真実は、父親からの厳しい叱責を切り抜けるためのその場限り「嘘」だった可能性の方が高いのです。

落ちついて考えてみれば、いかにモーツァルトといえども、嫌いな楽器のためにこれほどにユーモアと温かみ、そして洗練された音楽が書けるというのは考えがたいのです。
さらに言えば、この一連のフルートのための作品はフルートという楽器の技術的な可能性を学び取り、その限界に挑戦しているものの、その限界を超えて演奏者を困らせるような事はしていないのです。
フルートという楽器が嫌いならば、それは考えがたいことです。

アインシュタインはこの第1番のアダージョ楽章を「甘美な憂愁」とよび「おそらく今までにフルートのために書かれたもっとも美しい伴奏付きの独奏曲」と絶賛しています。


違うからこそいい

ウィーンフィルにはコンサートマスターを中心に各パートの首席がカルテットを結成する習慣があります。しかし、このコンツェルトハウス四重奏団はその様な楽団ではなくて、首席奏者の後ろで演奏しているメンバーたちが自主的に結成したものです。
ちなみに、この時代のエリート四重奏団はワルター・バリリをリーダーとしたバリリ四重奏団でした。

まあ、言ってみればバリリ四重奏団の方はウィーン・フィルという「金看板」を背負わざるをえないのですが、コンツェルトハウス四重奏団のほうにはそう言うプレッシャーがありません。ですから、彼らの演奏はいつも親密で寛いだ雰囲気がただよっていて、カルテットというスタイルに伴う緊張感のようなものとは無縁です。
そう言えば、以前にもふれたのですが、この四重奏団のリーダーだったカンパーのことを「彼はムジカー(音楽家)だったが、同時にムジカント(楽士)でもあった」と評した人がいました。

それは、優れた芸儒的な資質は持っているものの、心の奥には街の辻で音楽を楽しげに演奏するような心を失う事はなかったという誉め言葉でしょう。
それ故に、彼らの演奏するハイドンやベートーベン、そしてモーツァルトなどには「我らが町の音楽」という強い自負に裏打ちされた自由さが溢れています。そして、その様な自由さに裏打ちされた音楽は、機能美に溢れたハイテク・カルテットが生み出す音楽とは随分と雰囲気が異なるのですが、まさにそこにこそ彼らの値打ちがあります。

そして、独奏者を務めているオーボエのハンス・カメシュもフルートのハンス・レズニチェックもともにウィーン・フィルの仲間であり、その価値観は共有されています。
音楽の冗談で一緒に演奏しているメンバーもおそらくは全てウィーンフィルのメンバーでしょう。そうでなければ、これほどまでに楽しく演奏が出来るはずがありません。

いつも言っていることですが、今の時代には聞くことのできない演奏を聞けるというのは古い録音を巡り歩く楽しみです。
そしt、それが普通の演奏とはスタイルからあまりにも異なるからと言って拒否するならば、それは人生の楽しみの少なくない部分を失うことを意味していまか。

言葉をかえれば、違うからこそいいのです。

この演奏を評価してください。

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