クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ハイフェッツ(Jascha Heifetz)|シューベルト:アヴェ・マリア D.839

シューベルト:アヴェ・マリア D.839

(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ:(P)エマニュエル・ベイ 1947年12月17日録音



Schubert:Ave Maria, D.839


父の罪が赦されることを祈る歌

この作品は今となってはウィルヘルミによって編曲されたヴァイオリン曲としての方が有名になっています。
しかしながら、作曲したときからこの歌曲の美しさは多くの人に愛されたようで、シューベルト自身もよく歌っていたようです。

歌詞はイギリスの詩人ウォルター・スコットの「湖上の美人」からとられたものです。
シューベルトはこの叙事詩から7つの詩を選び出して作曲しているのですが、これはその6番目に当たる作品です。

「湖上の美人」はスコットランドのカトリン湖を背景に、エレンを中心とした恋と武勇の物語なのですが、コノ「アヴェ・マリア」はそのエレンが湖畔の聖母象に額づいて父の罪が赦されることを祈る歌です。

アヴェ・マリアやさしき乙女
お聞きください ひとりの娘の願いを
この険しく荒々しい岩山の上より
わが祈りがあなた様のもとへと届きますように
私共は安らかに眠ります 朝が来るまで
たとえ人々がどんなに残酷であろうとも
おお乙女よ、嘆きにくれるこの娘をご覧ください
おお聖母様、嘆願するひとりの子のことをお聞きください
アヴェ・マリア

アヴェ・マリア穢れなきお方
私共がこの岩場に伏して
眠るときも あなたの護りに包まれてさえいれば
この堅い岩も私共には柔らかく感じられることでしょう
あなたがほほ笑めば、バラの香りが漂います
この湿った岩の隙間にも
おお聖母様、この子の願いをお聞きください
おお乙女よ、この娘が呼びかけます
アヴェ・マリア

アヴェ・マリア清らかな乙女よ
大地と空の悪魔たちも
あなたのやさしい眼差しの恵みに追われて
私共のところに住み着くことはできません
私共は頭を垂れて 運命に従いましょう
私共にあなたの聖なる慰めがあるならば
この娘に身をかがめられてください
この子、父のために願いをかける者の方へと



ひたすら生真面目に追求した美しき小品たち

このような「旋律」優先の小品をハイフェッツの演奏で聞くと何処か物足りなさを感じていました。しかし、超絶技巧を誇示するヴィエニャフスキの「スケルツォ・タランテラ」をイダ・ヘンデルの演奏と聞き比べてみて、そこに大きな間違いあることに気づかされました。
もちろん、イダ・ヘンデルの「スケルツォ・タランテラ」の演奏も見事なものでした。あのテクニックを誇示するだけで大変な作品を、彼女ならではの色気によって、何処か妖艶な雰囲気すらただよう音楽に仕上げていました。ただし、そこには当然の事ながらハイフェッツの恐ろしいまでの切れ味を要求するのは不可能でした。
もちろん、そこにはテクニックの差というものもあるのでしょうが、それ以上にイダ・ヘンデルが「スケルツォ・タランテラ」に嗅ぎ取った匂いと、ハイフェッツが嗅ぎ取った匂いとはそもそも異なるものであって、そして両者はともに自らが嗅ぎ取った音楽の姿を完璧に表現しているのです。
例えば、シューベルトの「アヴェ・マリア」を例に取り上げてみれば、確かにエリカ・モリーニの演奏は見事なものであって、それと比べればハイフェッツの音楽はあまりにも生真面目にすぎるような気がして物足りなさを感じていました。しかし、考えてみれば、ハイフェッツにしてみれば「アヴェ・マリア」という音楽の中に見ているものはエリカ・モリーニとは全く異なるのです。
ハイフェッツの本質は徹底的に作品と生真面目に向き合うことでした。そこに「遊び」とか「色気」などと言うものが入り込む余地はありませんでした。つまりは、ハイフェッツにとっては音楽とは全身全霊を傾けてそのスコアと向き合い。そこでつかみ取った音楽の巣がtを完璧なテクニックで表現するという作業だったのです。

そう言えば、100万ドルトリオと言われたコンビを組んだときも、どうしても「遊び」のようなパフォーマンスを入れたいルービンシュタインとの間で諍いが絶えなかったそうです。そのたびにチェリストのフォイアマンが間に入ってなだめていました。そして、その関係はフォイアマンの突然の死によってチェリストがピアティゴルスキーに変わっても変わりはなかったようです。

ルービンシュタインにひたすらな生真面目さ求めるのが不可能なように、ハイフェッツに遊びを求めるのも不可能なのです。
ですから、100万ドルトリオがわずかの期間で解散したのは当然のことでしたし、それ以後にハイフェッツが中心となって行った室内楽録音では、即物主義という言葉ですら裸足で逃げていきそうなほどの徹底的に突き詰めた硬派な音楽になっているのです。

つまりは、ハイフェッツとはそう言う音楽家であり、そう言う視点からこのような美しい旋律に彩られた作品眺めてみれば、それがどのように映ずるのかを楽しむべきなのでしょう。、

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



4189 Rating: 4.6/10 (41 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-11-21]

ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)

[2024-11-19]

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)

[2024-11-17]

フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)

[2024-11-15]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-11-13]

ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)

[2024-11-11]

ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)

[2024-11-09]

ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)

[2024-11-07]

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)

[2024-11-04]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)

[2024-11-01]

ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)