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エルガー:弦楽セレナード ホ短調, Op.20(Elgar:Serenade for String Orchestra, Op.20)

アンソニー・コリンズ指揮 ロンドン新交響楽団 1952年3月31日~4月1日録音(Anthony Collins:New Symphony Orchestra of London Recorded on March 31-April 1, 1952)



Elgar:Serenade for String Orchestra in E minor, Op.20 [1.Allegro piacevole]

Elgar:Serenade for String Orchestra in E minor, Op.20 [2.Larghetto]

Elgar:Serenade for String Orchestra in E minor, Op.20 [3.Allegretto]


妻への結婚記念日のプレゼント

エルガーは作曲家としての地位を確立するまでは、生まれ故郷でアマチュアを相手にピアノやヴァイオリンを教えたり、指揮者を務めたりしていました。
イギリスは長く音楽の「消費国」であり、世界的に通用するような作曲家は長く登場していなかっただけに、エルガーにとっても夢と意気込みは持ちながらも雌伏の時だったことでしょう。そして、この「弦楽セレナード」は妻であるキャロライン・アリスに3回目の結婚記念日のプレゼントとして贈られたものでした。1892年5月の事でした。

妻のキャロラインはエルガーよりも8歳年上の姉さん女房であり、全く売れない作曲家を支え続けた人でもありました。

エルガーは1888年に地元のアマチュアメンバーによって構成された弦楽合奏団を指揮して「弦楽オーケストラのための3つの小品」を初演しているのですが。おそらくはその作品をもとに「弦楽セレナード」に書き直したものと考えられています。
「3つの小品」は「春の歌」(アレグロ)、「エレジー」(アダージョ)、「フィナーレ」(プレスト)で構成されていて、それは「弦楽セレナード」にも引き継がれています。
ですから、3楽章構成にはなっていますが、演奏時間は10分あまりの小さな作品です。

この「弦楽セレナード」を書いた数年後の1899年にエルガーは「エニグマ変奏曲」で大成功をおさめて一躍有名となり、1888年に第2楽章だけが演奏されただけだったこの「弦楽セレナード」も1905年に全曲が初演されました。
まさに、姉さん女房の内助の功が結実したときでした。


丁寧に作曲家に寄り添った演奏

生粋のイギリス人指揮者というのは、なんだかイギリスの作曲家の作品を演奏し録音する事が一つの義務のようになっているように見えてしまいます。そして、なかにはビーチャムとディーリアスとか、ボールトとヴォーン・ウィリアムズのように、分かちがたく結びついているような組み合わせもあります。
ただし、もう一つ不思議だと思うのですが、イギリス作曲家の作品としては断トツに知名度のあるホルストの「惑星」を録音しているイギリス人指揮者はあまり多くないと言うことです。
ボールトは複数回録音を残していますが、例えばバルビローリやビーチャムという大御所たちは録音を残していないのではないかと思います。そして、ここで紹介しているコリンズも録音は残していません。

コリンズに関して言えば、ビゼーの「カルメン組曲」で見せたようなスタンスで「惑星」を録音していれば、随分と面白い、ワクワクするような演奏を残してくれたかもしれません。
さらに言えば、エルガーの一番有名な「威風堂々」などもそれほど熱心には取り上げていないようです。

そして、その代わりと言えばへんですが、大陸側の指揮者が取り上げそうもないイギリス人作曲家の作品は熱心に取り上げるのです。もしかしたら、「惑星」の録音に彼らが熱心でなかったのは、自分たちが取り上げなくても大陸の方でいくらでも録音されると思っていたのかもしれません。
そう言えば、ホルストの「惑星」で大ヒットを記録したカラヤンはエルガーやディーリアスの作品は一つも録音していないはずです。ヴォーン・ウィリアムズに関してはかろうじて「トーマス・タリスの主題による幻想曲」だけを録音していますが、それも1953年の一回だけです。

そう考えれば、イギリスの作曲家の作品が今もそれなりに認知されているのは、そう言うイギリス人指揮者の献身があったからだとも言えそうです。
そう考えれば、日本のオーケストラや指揮者はもう少し日本の作曲家の作品に理解があってもいいのではないかと思われます。

そして、話をコリンズに戻せば、彼もまた熱心にエルガーやディーリアス、ヴォーン・ウィリアムズの作品を取り上げています。
残念ながら、その演奏の一つ一つにコメントをつけられるほどに彼らの作品を聞いていないのですが、間違いがないのは、あのビゼーの「カルメン組曲」で見せたようなエンターテイメント性はバッサリと切り捨てて、実に丁寧に作曲家に寄り添って、いらぬ主観性は排して自らは一歩引いた地点で音楽を形づくってています。
そう言う意味では、ボールトのような厳しさやバルビローリのようなイギリス訛りは薄くて、どこかアメリカの即物的なスタインバーグのようなアプローチだといえるのかもしれません。

しかし、映画音楽の作曲家兼指揮者としてのアンソニー・コリンズからすれば、全く何もおこらないディーリアスの音楽なんて言うのはどう考えても共感しにくいだろうなとは思いました。
しかし、実際に聞いてみれば、それほど無理をしている感じはしません。
そして、ふと思ったのは、ディーリアスのような何もおこらない音楽というのは、映像との関係で言えば互いが邪魔をすることなく、逆にお互いがお互いを引き立てるような要素を持っているのではないかと言うことです。
つまりは、映画音楽の作曲家兼指揮者としてのコリンズにとっては、ディーリスというのは逆に相性が良かったのかもしれません。

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