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バルトーク:管弦楽のための協奏曲 Sz.116

バーンスタイン指揮 ニューヨークフィル 1959年11月30日録音

Bartok:Concerto fpr Orchestra Sz 116 [1st movement]

Bartok:Concerto fpr Orchestra Sz 116 [2nd movement]

Bartok:Concerto fpr Orchestra Sz 116 [3rd movement]

Bartok:Concerto fpr Orchestra Sz 116 [4th movement]

Bartok:Concerto fpr Orchestra Sz 116 [5th movement]


ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽

 この管弦楽のための協奏曲の第3曲「エレジー」を聞くと、ハンガリーの大平原に沈む真っ赤な夕陽を思い出すと言ったのは誰だったでしょうか?それも、涙でにじんだ真っ赤な夕陽だと書いていたような気がします。
 上手いことを言うものです。音楽を言葉で語るというのは難しいものですが、このように、あまりにも上手く言い当てた言葉と出会うとうれしくなってしまいます。そして、この第4曲「中断された間奏曲」もラプソディックな雰囲気を漂わせながらも、同時に何とも言えない苦い遊びとなっています。ユング君はこの音楽にも同じような光景が目に浮かびます。

 バルトークが亡命したアメリカはシェーンベルグに代表されるような無調の音楽がもてはやされているときで、民族主義的な彼の音楽は時代遅れの音楽と思われていました。そのため、彼が手にした仕事は生きていくのも精一杯というもので、ヨーロッパ時代の彼の名声を知るものには信じがたいほどの冷遇で、その生活は貧窮を極めました。
 そんなバルトークに援助の手をさしのべたのがボストン交響楽団の指揮者だったクーセヴィツキーでした。もちろんお金を援助するのでは、バルトークがそれを拒絶するのは明らかでしたから、作品を依頼するという形で援助の手をさしのべました。
 そのおかげで、私たちは20世紀を代表するこの傑作「管弦楽のための協奏曲」を手にすることができました。(クーセヴィツキーに感謝!!)

 一般的にアメリカに亡命してから作曲されたバルトークの作品は、ヨーロッパ時代のものと比べればはっきりと一線を画しています。その変化を専門家の中には「後退」ととらえる人もいて、ヨーロッパ時代の作品を持ってバルトークの頂点と主張します。確かにその気持ちは分からないではありませんが、ユング君は分かりやすくて、人の心の琴線にまっすぐ触れてくるようなアメリカ時代の作品が大好きです。
 また、その様な変化はアメリカへの亡命で一層はっきりしたものとなってはいますが、亡命直前に書かれた「弦楽四重奏曲第6番」や「弦楽のためのディヴェルティメント」なども、それ以前の作品と比べればある種の分かりやすさを感じます。そして、聞こうとする意志と耳さえあれば、ロマン的な心情さえも十分に聞き取ることもできます。
 亡命が一つのきっかけとなったことは確かでしょうが、その様な作品の変化は突然に訪れたものではなく、彼の作品の今までの延長線上にあるような気がするのですが、いかがなものでしょうか。
<追記>
一度アップしてあったのですが、その後作品そのものの著作権が切れていないことが判明したので急遽削除した音源です。ところが、最近調べてみると、なぜか著作権が消滅していることが判明しました。
バルトークに関わる戦時加算の適用はきわめて複雑なようです。(よく分かりません^^;)
でも、無事にこの作品もパブリックドメインの仲間入りをしたようなので、再びアップしておきます。


バルトークとの距離感を感じる録音

若い頃のバーンスタインというのは面白い人物です。
彼は自分が共感できる音楽に対しては、その「共感」を何の衒いもなく表出します。
それは、彼の表芸であるマーラーであったり、裏芸であるチャイコフスキーなんかに顕著です。もしくは、シューマンの交響曲なんかもその範疇にはいるかもしれません。

そう言う作品に対する彼のアプローチは典型的な「俺さま」スタイルです。そして、その「俺さま」的な音楽の作りがいかに世間の「常識」とずれていても、そんなことには一切お構いなしにそう言う「俺さま」を貫く潔さがあります。

ところが、そこまでの「共感」がもてない作品になると、一転して「即物的」なスタイルが前面に出てきます。
いや、こんな書き方をすると誤解を招くのかもしれません。なぜなら、若い頃のベートーベンの交響曲に対するアプローチには「俺さま」の欠片もなく、至って分析的で精緻な構築に終始しているので、そう言う言い方をすると、バーンスタインは本心ではベートーベンの音楽には共感していないんだ、と聞こえるからです。
でも、そう思いつつも、若い頃のベートーベンをもう一度聴いてみると、やはりどこかよそよそしさみたいなものは感じざるを得ません。もちろん、若い頃の彼がベートーベンを理解していなかったと言うつもりはありませんが、それでもどこか体質的にしっくりこない部分があったんだろうなと思わせるような風情はあります。

そして、このバルトークのオケコンです。
ある意味ではパワーで押し切れる部分もある音楽ですから、こう言うところでバーンスタイン的な「俺さま」が前面に出ればさぞかし面白い演奏が聴けるだろうと期待したのですが、そんな期待はものの見事に裏切られます。

ここでは、明らかに「指揮者バーンスタイン」ではなく「作曲バーンスタイン」が前に出てきています。そして、彼がこの作品に本音の部分では共感していないんだろうな、と言うことは聞き進んでいくうちに確信になっていきます。

よく言えば、この20世紀を代表する「古典音楽」の良さを誰にでも理解してもらえるように、懇切丁寧に解説しているような演奏です。力づくになるような場面などは何処を探しても見つからず、最初から最後まで作品の構造を、「これ、こんな音楽ですよ」と言わんばかりに丁寧に提示しています。
ただ、その懇切丁寧な「ほら、こんな音楽ですよ!」という言葉の裏に「ほら、こんな程度の音楽ですよ!」という作曲家としてのバーンスタインの呟きが聞こえてきそうな気もして、少しばかり怖くなってきたりもします。

調べてみれば、バーンスタインはこの作品を再録音していませんし、それどころかバルトークの作品を晩年はほとんど取り上げていません。
つまりは、それがバーンスタインとバルトークとの距離感だったのかもしれません。

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