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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter) |モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」 K385
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」 K385
ワルター指揮 ニューヨークフィル 1953年1月5日録音
Mozart:交響曲第35番「ハフナー」 「第1楽章」
Mozart:交響曲第35番「ハフナー」 「第2楽章」
Mozart:交響曲第35番「ハフナー」 「第3楽章」
Mozart:交響曲第35番「ハフナー」 「第4楽章」
悩ましい問題の多い作品です。
一般的に後期六大交響曲と言われる作品の中で、一番問題が多いのがこの35番「ハフナー」です。
よく知られているように、この作品はザルツブルグの元市長の息子であり、モーツァルト自身にとっても幼なじみであったジークムント・ハフナーが貴族に列せられるに際して注文を受けたことが作曲のきっかけとなっています。
ただし、ウィーンにおいて「後宮からの誘拐」の改訂作業に没頭していた時期であり、また爵位授与式までの日数もあまりなかったこともあり、モーツァルトといえどもかなり厳しい仕事ではあったようです。そして、モーツァルトは一つの楽章が完成する度に馬車でザルツブルグに送ったようですが、かんじんの授与式にはどうやら間に合わなかったようです。(授与式は7月29日だが、最後の発送は8月6日となっている)
それでも、最終楽章が到着するとザルツブルグにおいて初演が行われたようで、作品は好評を持って迎えられました。
さて問題はここからです。
よく知られているように、ハフナー家に納品(?)した作品は純粋な交響曲ではなく7楽章+行進曲からなる祝典音楽でした。その事を持って、この作品を「ハフナーセレナード」と呼ぶこともあります。しかし、モーツァルト自身はこの作品を「シンフォニー」と呼んでいますから、祝典用の特殊な交響曲ととらえた方が実態に近いのかもしれません。実際、初演後日をおかずして、この中から3楽章を選んで交響曲として演奏された形跡があります。
そして、このあとウィーンでの演奏会において交響曲を用意する必要が生じ、そのためにこの作品を再利用したことが問題をややこしくしました。
馬車でザルツブルグに送り届けた楽譜を、今度は馬車でウィーンに送り返してもらうことになります。しかし、楽譜は既にハフナー家に納められているので、レオポルドはそれを取り戻してくるのにかなりの苦労をしたようです。さらに、7楽章の中から交響曲に必要な4楽章を選択したのはどうやら父であるレオポルドのようです。
こうしてレオポルドのチョイスによる4楽章で交響曲として仕立て直しを行ってウィーンでのコンサートで演奏されました。ところが、後になって楽器編成にフルートとクラリネットを追加された形での注文が入ったようで、時期は不明ですがさらなる改訂が行われ、これが現在のハフナー交響曲の最終の形となっています。
つまりこの作品は一つの素材を元にして4通りの形(7楽章+行進曲・3楽章の交響曲・4楽章の交響曲・フルート・クラリネットが追加された4楽章の交響曲)を持っているわけす。
一昔前なら、最後の形式で演奏することに何の躊躇もなかったでしょうが、古楽器ムーブメントの中で、このような問題はきわめてデリケートな問題となってきています。とりわけ、フルートとクラリネットを含まない方に「この曲にぼくは全く興奮させられました。それでぼくは、これについてなんら言う言葉も知りません。」と言うコメントをモーツァルト自身が残しているのに対して、フルートとクラリネットありの方には何のコメントも残っていないことがこの問題をさらにデリケートにしています。
やはり今後はフルートとクラリネットを入れることにはためらいが出てくるかもしれません。
ワルターのベストはニューヨークフィルとのモノラル録音にあり!!
ワルターといえば一昔前はモーツァルト演奏のスタンダードでした。彼が没したあとにはその地位にベームが「就任」したわけなのですが、そのモーツァルト演奏の素地も、ワルターのもとで修行したミュンヘン歌劇場時代に培ったものでした。
それから時は流れ、古楽器による演奏が一世を風靡する中で、モダン楽器による大編成のオケでモーツァルトを演奏するなんてことは時代錯誤も甚だしいと思われるようになってしまいました。
たしかに、ベームによる交響曲全集を聴くと「鈍重」という言葉を否定しきれませんし、ワルター最晩年のコロンビア響との演奏においても事情は同じです。古楽器演奏は必ずしも好きではないユング君ですが、それでもその洗礼を受けてしまった耳には、彼らの演奏はあまりにも反応が鈍いと思わざるをえません。
問題は低声部の強調にあるのだろうと思います。
とりわけワルターは低声部をしっかりと響かせます。その結果として、土台のしっかりとした厚みのある壮麗な響きを実現しています。
しかし、低声部を担当する楽器というのは小回りはききません。そう言う小回りのきかない鈍重な楽器を強調すれば、それはオケ全体の機能性にとっては大きなマイナスとならざるを得ません。これが、セルとクリーブランドのような「鬼の集団」ならばクリアするのでしょうが、その様なやり方はワルターが好むところではありません。
しかし、ワルターが現役として活躍した50年代前半のモノラル録音を聴くと、同じように低声部はしっかりと響かせながらも、決して「鈍重」なモーツァルトとは感じません。オケはモダン楽器の特性をいかした壮麗な響きを保持しながら、ワルターの棒に機敏に反応しているように聞こえます。結果として音楽は「鈍重」になることなく生き生きとした活力に満ちています。
おそらく、ここに「現役」の指揮者として活動している時と、「引退」した指揮者の「昔語り」との違いがあるのでしょう。
ワルターは戦前のSP盤の時代から、最晩年のステレオ録音の時代まで数多くのモーツァルト演奏を録音として残しています。別のところでも書いたことですが、その長い活動の中で演奏スタイルを大きく変えていったのがワルターの特長です。
そして、その長い活動の中の「昔語り」に属する演奏が、ワルターを代表する業績として世間に広く流布して、それでもって彼の評価がされるようになったということは実に不幸なことでした。これは、ニューヨーク時代のモノラル録音のリリースに積極的でなかったSONYの責任が大きいのですが、それもまたコロンビア響とのステレオ録音を売らんがための戦略だったとすれば悲しいことです。
しかし、幸いなことに、ワルターのモノラル録音のほぼすべてがパブリックドメインの仲間入りを果たしました。今後、ネット上で広く流布することを通してワルターへの再評価が進めばこれほど嬉しいことはありません。
なお、モノラル録音の時代にもオケが「コロンビア交響楽団」となっているものがありますが、これは最晩年のステレオ録音のために特別に編成された「コロンビア交響楽団」とは全く別の団体です。
その実態は明確ではありませんが、おそらくはニューヨークフィルのメンバーを主体にしてそこにメトのメンバーが加わった臨時編成のオケだったと思われます。ちなみに、ステレオ録音を担当した「コロンビア交響楽団」の方はロサンジェルスフィルを主体とした50人程度の小規模なオケだったと言われています。
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よせられたコメント 2013-03-08:TAKASHI 周りにクラシックを聞く人がいなく、大学の図書館で調べてワルターのモーツアルトを知って聞いて、私のクラシック人生の原点です。
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