Home|
ワルター(Bruno Walter)|ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1951年2月21日録音
Brahms:交響曲4番「第1楽章」
Brahms:交響曲4番「第2楽章」
Brahms:交響曲4番「第3楽章」
Brahms:交響曲4番「第4楽章」
とんでもない「へそ曲がり」の作品

ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。
この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。
この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!
それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?
控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。
ワルターとフルトヴェングラーの演奏を追加
同じ作品を、同じオーケストラで演奏しているのに、ここまで違うのかと驚かされるのが、チェリとフルトヴェングラーです。チェリの演奏が至極まっとうな物だけにその違いが際だってきます。
ただこうして並べて聞いてみると、フルヴェンの演奏はあまりにも内部の見通しが悪いなと思ってしまいます。(^^;(確かに、ドラマティックではあるんですけどね・・・)
細部の細かいからみはすべて塗りつぶされて、なんだか音の固まりのようにしか聞こえてこない部分もあります。もちろんこのあたりは録音の問題も絡んでくるので軽々しくは結論付けはできませんが、チェリの演奏の精緻さは注目に値します。
それからワルターです。
はっきり言って、ブラームスに関しては、ワルターのベスト盤はこのニューヨークフィルとの演奏です。一般的には最晩年のコロンビア響との演奏がよく聴かれますし、その中でも4番に関しては高く評価されていることは事実です。ブラームス晩年の諦観のにじみ出たこの作品には、ワルター最晩年の演奏が相応しいのかもしれません。
しかし、ブラームスというのは人間的には結構脂ぎった俗物的側面も強く持った人でした。この4番と言っても、そうそう涼やかな諦観だけの音楽であるはずがありません。そして、ニューヨークフィルとの演奏では、晩年の演奏からは感じ取れないパワーと強さみたいな物が感じ取れるて、一筋縄ではいかないブラームスという人の作品にはこちらの方が相応しいのかな?などと思ってしまいます。
ワルターと言えば「中庸の美」みたいなことが言われるのですが、どうしてどうして、なかなかに男っぽい音楽を作る人だったんです。そしてこのニューヨークフィルとの演奏を聴くと、彼がいかに素晴らしいブラームスの理解者であったかも分かります。
ワルターを再発見するには興味深い演奏だといえます。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
204 Rating: 5.2/10 (261 votes cast)
よせられたコメント
2023-01-20:コタロー
- 私もワルターの「ブラ4」ではこの演奏が断然良いと思います。
一般的にはコロンビア交響楽団とのステレオ録音が親しまれているようです。しかしオーケストラの響きが薄味で、この曲の魅力がいまいち堪能できないのが残念です。
ちなみにワルターのニューヨークフィルとの演奏は、1970年代前半に1200円の廉価盤で発売されていました。しかも、ブラームスに関しては交響曲だけでなく「大学祝典序曲」「ハンガリー舞曲第1,3,10,17番」が聴けるのが魅力でした。特に「ハンガリー舞曲集」はまた聴いてみたいですね。
【最近の更新(10件)】
[2025-10-22]

バターワース:管弦楽のための狂詩曲「シュロップシャーの若者」(Butterworth:A Shropshire Lad)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1956年6月20日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 20, 1956)
[2025-10-20]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ハ短調 Op.13()Beethoven:Piano Sonata No.8 in C minor, Op.13 "Pathetique"
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1955年11月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on November, 1955)
[2025-10-18]

フォーレ:夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(Faure:Nocturne No.4 in E-flat major, Op.36)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-10-16]

J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月5日~8日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 5-8, 1961)
[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)
[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)