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Home|カール・ミュンヒンガー(Karl Munchinger)|J.S.バッハ:カンタータ第51番「すべての地にて歓呼して神を迎えよ」BWV.51(J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51)

J.S.バッハ:カンタータ第51番「すべての地にて歓呼して神を迎えよ」BWV.51(J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51)

カール・ミュンヒンガー指揮 (S)シュザンヌ・ダンコ (Trp)Paolo Longinotti (Cemb)Germaine Vaucher-Clerc シュトゥットガルト室内管弦楽団 1953年録音(Karl Munchinger:(S)Suzanne Danco (Trp)Paolo Longinotti (Cemb)Germaine Vaucher-Clerc Stuttgarter Kammerorchester Recorded on 1953)

J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51 [1.Aria (soprano): Jauchzet Gott in allen Landen]

J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51 [2.Recitative(soprano): Wir beten zu dem Tempel an]

J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51 [3.Aria (soprano): Hochster, mache deine Gute]

J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51 [4.Chorale (soprano): Sei Lob und Preis mit Ehren]

J.S.Bach:Jauchzet Gott in allen Landen, BWV 51 [5.[Finale] (soprano): Alleluja! (C major)]


ずば抜けた華やかさと圧倒的な技巧

J.S.バッハのカンタータ全集の中でも、ずば抜けた華やかさと圧倒的な技巧で異彩を放つ作品です。
バッハが遺した約200曲の教会カンタータの中で唯一「ソプラノ独唱とトランペット」のために書かれた作品です。

自筆譜の表紙には「三位一体節後第15日曜、ならびにあらゆる機会に(et in ogni tempo)」と書き添えられており、特定の礼拝日に限らず広く演奏できるようバッハ自身が意図していました。
全5楽章で構成され、ソプラノのコロラトゥーラ(超絶的な装飾的旋律)とトランペットの華麗なファンファーレが拮抗するように展開します。


  1. 第1楽章アリア (Vivace)
    「すべての地にて歓呼して神を迎えよ」ハ長調(C-dur)のまばゆい響きの中、トランペットのファンファーレとソプラノの急速な16分音符が競い合います。
    協奏曲の第一楽章を思わせる圧倒的な推進力と歓喜に満ちた冒頭曲です。

  2. 第2楽章レチタティーヴォ
    「われは御堂に向かいて祈り」前半は厳かな弦の伴奏に乗った自由な朗唱、後半は通奏低音の上で優美に歌うアリオーソ(Andante)となり、神の恵みへの感謝を静かに掘り下げます。

  3. 第3楽章アリア (Expressivo)
    「至高なる者よ、その御恵みを」ハ短調(c-moll)の3/8拍子。通奏低音のバッソ・コンティニュオだけを伴奏に、ソプラノが深い祈りと内省的な感情を美しく歌い上げます。
    第1楽章との対比が鮮やかです。

  4. 第4楽章コラール (Choral)
    「賛美と誉れと栄光あれ」讃美歌「いざ造り主を賛美せよ」の旋律をソプラノが朗々と歌う傍らで、2本のヴァイオリンが16分音符の流麗な対位法を織りなします。トランペットはお休みです。

  5. 第5楽章フィナーレ (Alleluja)「アレルヤ」
    第4楽章から途切れなく(あるいはそのまま)続く、急速な2/4拍子の「アレルヤ」フガート。
    再びトランペットが加わり、ソプラノとの息をのむようなアクロバティックな掛け合いを経て、絢爛豪華なクライマックスを迎えます。




ドイツ・バロック演奏の良心

カール・ミュンヒンガーと言えば、かつてはリヒターと並んでバロック音楽の権威と見なされていました。
しかしながら、リヒターがピリオド演奏という激流の中にあってもみくちゃにされながらも、再び評価されて大きな位置を占め続けているのに対して、ミュンヒンガーの方はその激流の中に没してしまったように見えます。

リヒターがミュンヘンの街で「私たちと新しい音楽をしませんか」と呼びかけるビラをまきながら、ミュンヘン・バッハ管弦楽団を創立したのは1953年の事でした。

しかし、ミュンヒンガーがシュトゥットガルトで室内管弦楽団を設立したのは戦争が終わった1945年のことでした。
シュトゥットガルトはドイツの工業の中心でした。そのために、連合国によって徹底的に空爆をされて瓦礫となった街でした。
そんな瓦礫の中で、弦楽器を主体とした10数名程度の団体だったとはいえ、戦争が終わると同時に音楽活動を始めたという事実には驚かされます。

そして、その活動は1948年にドイツを訪れた若きカルショーにも大きな感銘を与えたようです。

シュトゥットガルトで・・・もっとも強烈な印象を受けたのは、5月2日の日曜日の朝に崩れかけたホールで聴いた、カール・ミュンヒンガーと新編成のシュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏会だった。ロンドンのボイド・ニールの合奏団のことは深く尊敬はしているけれども、シュトゥットガルトの音楽家たちはまるで別の種類の存在だと思われた。


そして、カルショーはヴィクター・オロフにすぐに録音契約を結ぶように電報を打つのですが、そんな提案は無視されたとも述べていました。
しかしながら、幸いだったのは、その1年後にはオロフによっても「発見」されるので、彼らはめでたく「Decca」と契約を結ぶようになるのです。

この時代の「バロック音楽」の盛り上がりはイムジチ合奏団による「四季」の録音がきっかけのように言われます。
しかし、その下地としてミュンヒンガーなどに代表されるような音楽活動があったようです。実際、「Decca」からリリースされた彼らのレコードは最初からよく売れたようです。

彼らは、当時のバッハ演奏の主流だった「大編成で厚塗りのロマン主義」に真っ向から異を唱えました。
「峻烈で宗教的情熱に満ちたリヒター」に対し、ミュンヒンガーは「知的で均整の取れた客観美」を代表する存在と見なされていました。

しかし、1970年代に入るとピリオド演奏という激流の中で「折衷的で時代遅れ」と批判されるようになった事は最初にふれたとおりです。
とはいえ、ミュンヒンガー達が「DECCAに残した数多くの録音の価をが減じるものではありませんでした。

ミュンヒンガーは、リヒターのような「一世を風靡したカリスマ」ではありませんでした。
しかし、「バロック演奏のスタンダードを数段階引き上げた開拓者」であったことは事実です。

そして、ピリオド演奏に原理主義に取りついた悪夢のような時代が過ぎてみれば、彼らの残した音楽は「モダン楽器によるもっとも洗練されたバロック音楽」としての普遍的な美しさを持っていたことに多くの人が気づいたのです。
劇的なデフォルメを避け、楽譜に誠実に、かつ音楽的な気品を保つスタイルは、ドイツ・バロック演奏の良心だったと言うべきなのかもしれません。

この演奏を評価してください。

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