モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543
ベーム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1955年9月録音
Mozart:Symphony No.39 in E flat major, K.543 [1.Adagio - Allegro]
Mozart:Symphony No.39 in E flat major, K.543 [2.Andante con moto]
Mozart:Symphony No.39 in E flat major, K.543 [3.Menuetto (Allegretto) - Trio]
Mozart:Symphony No.39 in E flat major, K.543 [4.Finale (Allegro)]
白鳥の歌
Googleで、「モーツァルト 白鳥の歌」と検索をかけてみると様々な作品が引っかかってきました。
まずは、「白鳥の歌」という言葉の概念通りに、彼の最後の作品となった「レクイエム:をあげている人、その少し前の「クラリネット協奏曲」に言及している人、さらには最後のピアノ協奏曲を引き合いに出している人と、実に多様です。
しかし、昔からモーツァルトの白鳥の歌といえばこの39番のシンフォニーをあげるのが定番でした。
もともと白鳥の歌というのは、「白鳥は死ぬ前に最後に一声美しく鳴く」という言い伝えから、作曲家の最後の作品をさす言葉として使われました。しかし、その後はもう少し拡大解釈されて、作曲家の最後に相応しい作品を白鳥の歌と呼ぶようになっているようです。
その意味でいえば、最後の三つの交響曲の中で最も明るく優美で、そして古典的な均衡を崩さないこの作品は「白鳥の歌」という言葉に最も相応しい作品だといえます。さらに、アインシュタインがこの作品に対して「あるのは永遠への訴えである」と語ったように、そこに彼岸的な美しさを見つけるならば、そのお思いはより確固としたものになります。
ベーム全盛期の録音・・・でしょうか?
同時代にヨッフムが録音したモーツァルトのことを「まるでベートーベンのように響く」と書いたのですが、このベームの録音を聞くとそれ以上に直線的であり、攻撃的ですらあります。そうなると、こういうモーツァルトというのは50年代中葉のヨーロッパでは決して珍しいものではなく、もしかしたら当時における一つのスタンダードなモーツァルト像だったのかもしれません。
とにかく39番のシンフォニーはまさにベートーベンです。この演奏からはモーツァルトの白鳥の歌に相応しい優美な姿はどこを探して見いだすことは出来ません。これとくらべれば、ト短調のシンフォニーはいささかおとなしくて特徴に乏しいかもしれませんが、ジュピターでは再び堂々たるシンフォニーとして仕上がっています。
さらに驚嘆させられるのは、この翌年に録音されたレクイエムです。初めて聞いたときは、ヴェルディのレクイエムかと勘違いするほどの圧倒的な迫力に驚かされました。そう言えば、モーツァルトの没後200年を記念してショルティがシュテファン大聖堂でレクイエムを演奏したのですが、世間ではヴェルディと勘違いしているのかと揶揄されたものです。しかし、56年に録音されたベームのレクイエムと比べれば、あのシェルティのものでさえおとなしく聞こえるはずです。
おそらくこれほど直線的で、筋肉質なモーツァルトは後にも先にも聞いたことがないように思います。
好き嫌いはあるでしょうが、まさにベーム全盛期の記録としては貴重な録音だと言えます。
よせられたコメント 2012-11-10:アマデウス 「三大交響曲」のひとつですがさすがに完成度が高い。平和で温和な感じのする曲ですが、2本のクラリネットの使い方の美しさも理由です。弦楽器やファゴットと調和して全体として典雅なおもむきとなっており、中でも第二楽章など透き通るような音楽です。ベームは冷静に、しかし彼独特の嫌味のない歌心で全体を堅実にまとめていると思います。以前このLPを買ったとき「モーツァルトは感傷的ではないと確信した」とベームは語ったと確か書いてありましたが、まさにそれを実践した名演だと思います。あと忘れてはならないことは、ベームは現代性も強く持ち合わせていることだと思います。懐古趣味からは遠い鋭い一面も聴き取れます。
【最近の更新(10件)】
[2025-10-02]
J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-30]
ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)
[2025-09-28]
エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)
[2025-09-26]
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)
[2025-09-24]
フォーレ:夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(Faure:Nocturne No.3 in A-flat major, Op.33 No.3)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2025-09-22]
ブラームス:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op. 51-2(Brahms:String Quartet No.2 in A minor, Op.51 No.2)
アマデウス弦楽四重奏団 1955年2月11日~12日&14日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in February 11-12&14, 1955)
[2025-09-20]
エルガー:序曲「フロワッサール」, Op.19(Elgar:Froissart, Op.19)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)
[2025-09-18]
バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV.564(Bach:Toccata, Adagio and Fugue in C major, BWV 564)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-16]
メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 Op.54(Mendelssohn:Variations Serieuses, Op.54)
(P)エリック・ハイドシェック:1957年9月20日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n September 20, 1957)
[2025-09-14]
フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)