クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

グラナドス:ゴイェスカス

アタウルフォ・アルヘンタ指揮 スペイン国立交響楽団 (S)コンスエロ・ルビオ (Ms)アナ・マリア・イリアルテ (T)ヒネス・トラノ (Br)マヌエル・アウセンシ マドリード・シンガーズ





Granados:Goyescas [1.Act1]

Granados:Goyescas [2.Intermedio]

Granados:Goyescas [3.Acct2]

Granados:Goyescas [4.Intermedio]

Granados:Goyescas [5.Act3]


ピアノ組曲を素材としたオペラ

もとはピアノ組曲「ゴイェスカス」として発表した作品をオペラに仕立て直したものです。というか、基本的にはピアノ組曲の方こそが有名で、グラナドスを代表する作品となっています。ですから、それをもとにしたオペラなんてあったの?と言う方が普通でしょう。
ピアノ組曲「ゴイェスカス」は「恋するマハとマホ ゴヤの絵画の場面集」との副題を持つように、グラナドスが大好きだったゴヤの作品にインスピレーションを得て、その作品から感じとった感情をピアノ曲にしたものでした。

そして、そのピアノ曲の素材を使って3幕であるものの上演時間は50分程度という不思議なオペラに仕上げたのがもう一つの「ゴイェスカス」です。
オペラの内容は1800年頃のマドリッドで、美女のロザリオとフェルナンドの恋物語と、闘牛士のパキーロに対する嫉妬を描いていたものです。もちろん、ゴッホの「マハとマホ」にちなんで、マヤとマホも登場するのですが、それは特定の人物ではなくてマドリードの陽気ないい奴らと言う意味で、マヤは若い男性、マホは若い女性をあらわし、このオペラでは合唱団が受け持ちます。

主な登場人物は以下の通りです。

  1. 上流階級の令嬢、ロザーリオ(ソプラノ)

  2. 上流階級の士官、フェルナンド(テノール)

  3. 下層階級である闘牛士のマホ、パキーロ(バリトン)

  4. 下町の娘でパキーロの恋人、ペーパ(メゾ・ソプラノ)


第1幕


マドリッドの下町の広場にマホとマハたちが集っています。その中には闘牛士パキーロがいて、やがて恋人のペーパも登場しふたりは愛の言葉を歌います。
そこへ上流階級の令嬢であるロザーリオを乗せた馬車が通ります。そのロザリオの美しい姿にパキーロは目胸をときめかせ口説きはじめます。

それをロザーリオの恋人でもある上流階級の士官であるフェルナンドが遠くから見つけて嫉妬します。
また、ペーパもパキーロが、ロザーリオを踊りに誘ったので気を悪くします。

しかしながら、そんなことはお構いなしにマホやマハはマドリッドの広場で楽しく歌い、恋人たちはそれぞれに踊りに出かけます。

第2幕


場面は場末のダンスホール。マホとマハ達が楽しく踊っていると、ペーパは令嬢のロザーリオがこんなダンスホールに来たことを皮肉ります。そんなペーパをロザーリオは怖がって早く帰りたいとフェルナンドに訴えます。
その様子に、パキーロは「ロザーリオをここに誘ったけれども、お前を誘った覚えはない」とフェルナンドを怒らせます。
ダンスホールはただならぬ雰囲気となり、マホとマハ達はどうなることかと見守ります。

そして、フェルナンドの怒りは収まらず、二人は決闘で決着をつけることになります。
あまりの事の成り行きにロザーリオは気を失い、ペーパはいい気味よとほくそ笑みます。

第3幕


ロザーリオの自宅にやってきたフェルナンドはロザーリオの愛を疑います。しかし、ロザーリオは絶対に心を動かしたことはないと誓います。
その時に決闘の時を知らせる10時の鐘が響きます。

決闘に出て行こうとするフェルナンドをロザーリオは必死で止めます。しかし、彼はロザーリオを振り払って決闘におもむきます。ロザーリオはそんなフェルナンドを追いかけるのですが、やがて静けさの中で剣を抜く音が響くと2人の悲鳴が響きました。
そして、あられたのは傷を負ったフェルナンドと彼を抱えたロザーリオでした。

やがてフェルナンドは息絶え、ロザーリオは死にゆく恋人を前に嘆き悲しみ、幕となります。


母国の偉大な作曲家へのオマージュと鎮魂

この滅多に上演されることのない、そして今に至るまでも滅多に上演される事の少なかった作品の録音を残してくれたことだけでも感謝しなければいけません。
では、何故にこの作品は上演される機会が少なかったのかと言えば、決して作品そのものが上演に値する価値がなかったわけではありません。

この作品の初演には悲劇がつきまとっています。
このオペラはアメリカからの注文で作曲されたので、初演はアメリカのニューヨークで行われました。その初演のためにグラナドスは大西洋を越えてアメリカに向かいました。そして、諸説あるのですが(^^;、その初演は成功をおさめ、グラナドスはヨーロッパに帰ります。
ところが、そのヨーロッパに向かう客船がドイツ軍の潜水艦の攻撃によって沈められてしまったのです。
伝えられる話では、グラナドス自身は救命ボートに引き上げられるのですが、妻が海上に漂う姿を発見して再び海に飛び込んでしまい、結局二人ともに帰らぬ人となったと言うことです。

その悲劇は、母国スペインだけでなくヨーロッパでもこの作品を演奏する事に躊躇いをもたらしたようです。
さらに現実的な話として、この作品の版権はアメリカの出版会社が持っていて、その楽譜のレンタル料がかなりの高額だったことも演奏の機会を奪ったようです。

つまりは、そのような困難(^^;の中でアルヘンタとスペイン国立交響楽団は貴重な録音を残してくれたのです。それは、母国の偉大な作曲家へのオマージュと鎮魂のためだったのかもしれません。

この作品はスペインの伝統であるサルスエラの形式で書かれています。それ故に、伝統的なオペラを想像して聞き始めるといささか面食らってしまいます。
サルスエラはスペインで独自の発展を遂げた叙情的なオペラ音楽であり、アルヘンタは若い頃にサルスエラの歌手と活発に演奏活動を行い、録音も行っています。そう言う意味では、まさにこのコンビによる「ゴイェスカス」の演奏と録音は理想的な組み合わせても言えます。

ともすれば、リハーサルでは注文が多く、さらにはその注文を長々と説明し続けるために、ともすれば精緻で整ってはいてもどこか音楽の自発性に欠ける傾向が否定できないアルヘンタでした。しかし、この録音では全ての演奏家がアルヘンタと一体となって溢れるような情熱の発露を実現しています。
しかし、録音クレジットを見ると1953年から1956年となっています。
詳しいことは分からないのですが、録音を聞く限りでは、そんな長期にわたってバラバラに録音をしたものをつなぎ合わせたような雰囲気はありません。いや、それとは正反対の情熱に溢れて一気呵成に録音したように聞こえるほどです。

もしかしら、最初は1953年から録音をはじめたもののアルヘンタは納得がいかず、最終的には大部分を1956年に録音したのかもしれません。

母国の偉大な作曲家へのオマージュと鎮魂


この滅多に上演されることのない、そして今に至るまでも滅多に上演される事の少なかった作品の録音を残してくれたことだけでも感謝しなければいけません。
では、何故にこの作品は上演される機会が少なかったのかと言えば、決して作品そのものが上演に値する価値がなかったわけではありません。

この作品の初演には悲劇がつきまとっています。
このオペラはアメリカからの注文で作曲されたので、初演はアメリカのニューヨークで行われました。その初演のためにグラナドスは大西洋を越えてアメリカに向かいました。そして、諸説あるのですが(^^;、その初演は成功をおさめ、グラナドスはヨーロッパに帰ります。
ところが、そのヨーロッパに向かう客船がドイツ軍の潜水艦の攻撃によって沈められてしまったのです。
伝えられる話では、グラナドス自身は救命ボートに引き上げられるのですが、妻が海上に漂う姿を発見して再び海に飛び込んでしまい、結局二人ともに帰らぬ人となったと言うことです。

その悲劇は、母国スペインだけでなくヨーロッパでもこの作品を演奏する事に躊躇いをもたらしたようです。
さらに現実的な話として、この作品の版権はアメリカの出版会社が持っていて、その楽譜のレンタル料がかなりの高額だったことも演奏の機会を奪ったようです。

つまりは、そのような困難(^^;の中でアルヘンタとスペイン国立交響楽団は貴重な録音を残してくれたのです。それは、母国の偉大な作曲家へのオマージュと鎮魂のためだったのかもしれません。

この作品はスペインの伝統であるサルスエラの形式で書かれています。それ故に、伝統的なオペラを想像して聞き始めるといささか面食らってしまいます。
サルスエラはスペインで独自の発展を遂げた叙情的なオペラ音楽であり、アルヘンタは若い頃にサルスエラの歌手と活発に演奏活動を行い、録音も行っています。そう言う意味では、まさにこのコンビによる「ゴイェスカス」の演奏と録音は理想的な組み合わせても言えます。

ともすれば、リハーサルでは注文が多く、さらにはその注文を長々と説明し続けるために、ともすれば精緻で整ってはいてもどこか音楽の自発性に欠ける傾向が否定できないアルヘンタでした。しかし、この録音では全ての演奏家がアルヘンタと一体となって溢れるような情熱の発露を実現しています。
しかし、録音クレジットを見ると1953年から1956年となっています。
詳しいことは分からないのですが、録音を聞く限りでは、そんな長期にわたってバラバラに録音をしたものをつなぎ合わせたような雰囲気はありません。いや、それとは正反対の情熱に溢れて一気呵成に録音したように聞こえるほどです。

もしかしら、最初は1953年から録音をはじめたもののアルヘンタは納得がいかず、最終的には大部分を1956年に録音したのかもしれません。
もちろん、何の根拠もありませんが・・・。

よせられたコメント

2021-10-15:コタロー


2021-10-15:yk


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