Strauss Festival
カール・シューリヒト指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1963年9月録音
J_Strauss:Champagne Polka
J_Strauss:Perpetuum Mobile
J_Strauss:Overture "Der Zigeunerbaron"
J_Strauss:Vienna Blood
J_Strauss:Wine Women and Song
J_Strauss:Roses from the South
社交の音楽から芸術作品へ
父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。
そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。
後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。
しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。
収録曲
- シャンペン・ポルカ
- 常動曲
- ジプシー男爵
- ウィーン気質
- 酒・女・歌
- 南国のばら
薄化粧のウィーン美人のようなワルツ
噂によると、シューリヒトはこの録音に先立って「私はウィーン生まれではないので、ウィーンの人が持つ真のウィーン精神から少しでもはずれる事があれば正しい道に引き戻して下さい」みたいな事をオーケストラのメンバーに語ったという話が残っています。
一部にはこのエピソードを持ってシューリヒトの偉大さを示す事のように言う人もいますが、信じがたいことです。
自分の音楽に自信がなくて、その自信のなさをオケのメンバーによってフォローしてほしいのならば、最初から指揮などしなければいいのです。
このエピソードがどこまで真実を含んでいるのかは分かりませんが、100歩譲って全くのデマだとしても、そう言うデマがまことしやかに流布されてしまうところに、シューリヒトという指揮者の限界のようなモノを感じてしまいます。
シューリヒトというのは悪い指揮者だとは思いませんが、よく言えばジェントルマン、有り体に言えばこの職業に絶対必要な押しの強さがあまりにも希薄だったと言わざるを得ません。
ところが、そう言う押しの弱さは、普通ならばオケのメンバーから「馬鹿」にされて終わりになるのがこの業界の掟なのですが、何故かこの爺さんはウィーンフィルとの相性がとてもよかったのです。
そして、その不思議な相性の良さがあるからこそ、普通だったら馬鹿にされて終わりになってしまう腰の低さに、あの「すれっからしのウィーンフィル(国立歌劇場のオケですが実質はウィーンフィルでしょう。当時ウィーンフィルはDECCAの専属でしたからコンサート・ホールはその名前が使えなかったものと思われます)」がほいほいとのせられて結構いい仕事をやってしまうのです。
ですから、最初に紹介したような物言いは、もしかしたら本当にあったのかもしれません。
シューリヒトはいつものように、どちらかと言えば薄味でスッキリと仕上げようとしているのですが、そこにウィーンのオケが上手く味付けをして絶妙の味わいになっているのです。
おそらく、この録音を、いつものようにドイツの放送オケと録音していれば、絶対こんな音楽にはならなかったはずです。彼らは指揮者が指示したようにしか演奏しませんから、スッキリあっさりのウィンナー・ワルツが出来上がったはずです。
それはそれで面白そうな気もするのですが、こういう薄化粧のウィーン美人のようなワルツも悪くはありません。
ただし、その手柄の半分はオケの方にあることは間違いありません。
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