モーツァルト:セレナード第13番ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
パブロ・カザルス指揮 ペルピニャン祝祭管弦楽団 1951年6月21日~22日録音
Mozart:Serenade No.13 in G major,K.525 "Eine kleine Nachtmusik" [1.Allegro]
Mozart:Serenade No.13 in G major,K.525 "Eine kleine Nachtmusik" [2.Romanze: Andante]
Mozart:Serenade No.13 in G major,K.525 "Eine kleine Nachtmusik" [3.Menuetto: Allegretto]
Mozart:Serenade No.13 in G major,K.525 "Eine kleine Nachtmusik" [4.Rondo: Allegro]
小さい枠ではあるが、それ自身で完結した小宇宙
この作品は驚くほど簡潔でありながら、一つの完結した世界を連想させるものがあります。
「音符一つ変えただけで音楽は損なわれる」とサリエリが感嘆したモーツァルトの天才をこれほど分かりやすく提示してくれる作品は他には思い当たりません。
おそらくはモーツァルトの全作品の中では最も有名な音楽の一つであり、そして、愛らしく可愛いモーツァルトを連想させるのに最も適した作品です。
ところが、それほどまでの有名作品でありながら、作曲に至る動機を知ることができないという不思議さも持っています。
モーツァルトはプロの作曲家ですから、創作には何らかのきっかけが存在します。
それが誰かからの注文であり、お金になる仕事ならモーツァルトにとっては一番素晴らしい動機だったでしょう。あるいは、予約演奏会に向けての作品づくりであったり、出来のよくない弟子たちのピアノレッスンのための音楽作りであったりしました。
まあ早い話が、お金にならないような音楽づくりはしなかったのです。
にもかかわらず、有名なこの作品の創作の動機が今もって判然としないのです。誰かから注文があった気配はありませんし、演奏会などの目的も考えられません。何よりも、この作品が演奏されたのかどうかもはっきりとは分からないのです。
そんなわけで、自分のために音楽を作るということはちょっと考えづらいモーツァルトなのですが、もしかしたら、この作品だけは自分自身のために作曲したのかもしれないのです。もしそうだとすると、これは実に貴重な作品だといえます。
そして、そう思わせるだけの素晴らしさを持った作品でもあります。
カザルスの歌うモーツァルト
指揮者カザルスの美質は何だろうと考えたときに、真っ先に思い浮かぶのは「歌う」事でしょう。ただし、その「歌」は流麗に流れていく心地よさとは無縁で、どこかその「歌」に命かけていますみたいな、そこに全体重がかかっているような「歌」なのです。
そう言えば、カザルスは何でもない「経過句」のようなワンセンテンスであっても、それを歌うことをオケに要求したと伝えられています。
カザルスにとって音楽に「経過句」なんてものは存在しなかったのです。
ですから、とりわけ彼の手になるモーツァルトは、ロマン派が好んだモーツァルトの姿を誰よりもロマン派風に描き出しているように聞こえます。
例えば、モーツァルトの青春の感傷が溢れている協奏交響曲の第2楽章なんかを聞けば、まさにカザルスとと言う巨人の全体重がかかったような歌い回しなのです。手垢にまみれたという言葉でさえも憚られるほどの「アイネ・クライ」にしても、第2楽章のロマンツェは今まで聞いたことがないような思いにとらわれます。
こういう音楽を聞いてそう言う思いにとらわれるというのは、それだけで値打ちがあります。(何だ、この指示代名詞だらけの文は^^;)
また、カザルスはプラド音楽祭では多くのピアニストとモーツァルトのコンチェルトを演奏しています。
長年の盟友でもあったホルショフスキーは言うまでもなく、ルドルフ・ゼルキン(生まれはボヘミアだが)やユージン・イストミン等のアメリカ勢、そしてイヴォンヌ・ルフェビュールやクララ・ハスキルというヨーロッパの女流ピアニスト等々です。そこでの、一番の聞き所は言うまでもなく歌う(嘆く?)第2楽章の重さでしょう。ライブ録音ですから、至るところから指揮者カザルスのうなり声は聞こえてくるは、そして、そう言うカザルスに触発されてピアノも心の底から歌っています。
もちろん、これを「重い」と思わぬわけではありませんが、ハイドンの時に感じたほどの違和感はありません。その辺りに、ハイドンとモーツァルトを分かつ何ものかがあるのかもしれません。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-11-03]
リリ・ブーランジェ:ピエ・イエズ(Boulanger:Pie Jesu)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 1958年日録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Michel Senechal Recorded on 1958)
[2026-11-01]
モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ ニ長調, K.448(Mozart:Sonata for 2 Pianos in D major, K.448/375a)
(P)モニク・アース ハインツ・シュレーター:1957年録音(Monique Haas:(P)Heinz Schroter Recorded on 1957)
[2026-10-30]
ヘンデル:ハープ協奏曲変ロ長調 Op.4-6(Handel:Harp Concerto in B-flat major, Op.4, No.6)
(Harp)リリー・ラスキーヌ:ジャン=フランソワ・パイヤール指揮 パイヤール室内管弦楽団 1964年1月22日録音(Lily Laskine:(Con)Jean-Francois Paillard Orchestre de chambre Jean-Francois Paillard Recorded on Januery 22, 1964)
[2026-10-27]
ディエゴ・オルティス:レセルカーダとその基となった歌曲およびマドリガル集(Diego Ortiz:Recercadas, Songs And Madrigals)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ (Vdg)アウグスト・ヴェンツィンガ (harpsichord)エドゥアルト・ミュラー 1953年10月8日~9日録音(Walter Gerwig:(Vdg)August Wenzinger (harpsichord)Eduard Muller Recorded on October 8-9, 1953)
[2026-10-25]
ヴォーン・ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲(Vaughan Williams:Fantasia on a Theme_by Thomas Tallis)
マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on 1959)
[2026-10-23]
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30(Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30)
(P)モーラ・リンパニー:アンソニー・コリンズ指揮、ロンドン新交響楽団(Moura Lympany:(Con)Anthony Collins New Symphony Orchestra of London Recorded on 1952)
[2026-10-21]
リリ・ブーランジェ:古い仏教の祈り(Boulanger:Vieille Priere Bouddhique)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (T)レイモンド・アマデ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Alain Fauqueur Recorded on 1958)
[2026-10-19]
エマヌエル・ポンセ:イ短調組曲(Poncw:Suite In A minor)
(Gt)アンドレス・セゴビア:1930年録音(Andres Segovia:Recorded on 1930)
[2026-10-17]
ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-10-15]
メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)