クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」 第1幕全曲

クナッパーツブッシュ指揮 ウィーンフィル (S)キルステン・フラグスタート他 1957年10月28日~30日録音





Wagner:楽劇「ワルキューレ」 第1幕 第1場

Wagner:楽劇「ワルキューレ」 第1幕 第2場

Wagner:楽劇「ワルキューレ」 第1幕 第3場


楽劇「ワルキューレ」第1幕の概要

<序奏>
低弦楽器の激しいリズムで音楽が始まります。やがて、トランペットによる稲妻、ティンパニの雷鳴がとどろき、やがてそれが静まると幕が開きます。

<第1場>
ジークムントは嵐の中を追っ手から逃れるために館の中に入って倒れてしまいます。

「ここが誰の家であっても、ここで休まずにはおれない・・・」

その館の妻であるジークリンデは驚きながらも、水を求めるジークムンデに水を差しだしまします。チェロの独奏が、そのもてなしに心癒されるジークムンデを表現します。そして、力を回復したジークムンデは先を急ごうとするのですが、ジークリンデは彼を強く引き止めます。

「それなら、ここに留まってください。不幸が住んでいる家に、あなたが不幸を持ち込むことはないのですから」

必死で引き止めるジークリンデにただならぬ気配を感じたジークムンデは、夫であるフンディングの帰りを待つことにします。

<第2場>
トロンボーンによる「フンディングの動機」とともにフンディングが登場します。

「私のかまどは神聖だ。私の家があなたにとっても神聖であるように」

やがて、ジークムンデは二人の求めに応じて身の上を語り始めます。しかし、その語りによって、フンディングはジークムントこそが己の敵であることを悟ります。ジークムントは狼の一族であり、フンディングは「犬」の意味を持ちます。そして、野生に狼は飼い慣らされた犬にとっては常に宿敵であるのです。

「私はある野蛮な一族を知っている」

しかし、決して野卑な人間ではないフンディングは礼儀に則り、その夜はジークムントに宿を提供し、翌日決闘するように迫ります。

<第3場>
一人取り残されたジークムンデは、かつての父であるヴェルゼ(ヴォータンの仮の姿)が約束した剣のありかを尋ねて叫びます。

「一本の剣を父は私に約束した」
「ヴェルゼ、ヴェルゼ!あなたの剣はどこにあるのですか」

そうすると、トリネコの木に突き刺さった剣ノートゥングに光りが当たります。きらめく「剣の動機」が何度も繰り返されると、やがてあたりは静かになり、突然ジークリンデが現れます。そして、彼女はフンディングに眠り薬を飲ませたので今夜のうちに逃げることをすすめます。
そして、ジークリンデは彼女の不幸な結婚と、結婚式の日におこった不思議な出来事を語り始めます。

「一族郎党が広間に座っていました」

一人の片目の老人が現れ、トリネコの木に剣を深く刺していったのだが、その剣を誰も抜くことができなかった。そして、その剣を抜くことができるのはジークムント、あなたしかいないといってその胸に飛び込みます。
その時、突然窓が開き、春の光りが差し込んできます。
ジークムントは「冬の嵐は過ぎ去り」、それを受けてジークリンデは「あなたこそ春です」を歌い、やがてその二つは愛の二重唱へと発展していきます。やがて、ジークリンデは彼こそは生き別れになっている双子の兄ではないかと思い始め、ついにジークムントが父の名がヴェルゼであることを明かしたとたんそれは確信へと変わり、彼のことを初めてジークムントと声高く叫びます。

「ジークムントとあなたを名づけましょう」

ジークムントも自らをジークムントであることを宣言し、トリネコの木に刺さった剣を「ノートッング」と名づけてそれを引き抜きます。そして、「剣の動機」が高らかに鳴り響く中、ジークリンデも自分の名を告げて、やがて二人は一族の血を栄えさせることを決意して幕がおりますが、オーケストラはやがて訪れる悲劇を予感させるような不協和音を響かせて音楽は終わります。

中途半端な録音です・・・が、演奏は凄い!!


何とも言えず変則的な録音です。3幕構成の楽劇「ワルキューレ」の一幕だけなのですから、いったいどうしたんだろうと思われます。さらに困ったことは、この一幕だけの演奏がとてつもなく素晴らしいのです。
引退した後とはいえ、伝説のワーグナー歌手フラグスタートの風格あふれる歌声が聞けるのですから、それだけでも二重丸です。
さらに言えば、クナとウィーンフィルの組み合わせは素晴らしい音色で聞くものを魅了しますし、冒頭の弦楽器の刻みからしてただならぬ雰囲気を漂わせています。これだけの音楽を聴かされたら、何とか続きも聞いたみたいと思うのが人情というものですが、何故かデッカはこの録音を打ち切って、翌年からショルティを起用して指輪4部作の歴史的録音をスタートさせます。

この辺の経緯は、以前にも少し書きました。その部分を引用すると、

「よく知られていることですが、この「ラインの黄金」ははじめはクナッパーツブッシュで録音される予定でした。
フルトヴェングラーもクラウスも鬼籍に入ったあとではクナッパーツブッシュこそが最高のワーグナー指揮者でしたから、この記念碑的な録音を任せる指揮者としては当然の選択でした。
しかし、カルショーはデッカの社長を説得して、当時46歳の若手指揮者だったショルティにチェンジさせます。
この時カルショーはわずか34歳だったのですから、この大事業を任されるだけでも大変なことでした。ところが、さらに己の理想を実現するために社長に直談判して、指揮者を偉大なるマエストロから駆け出しの若手にを変更させたのですから驚かされます。」

つまりは、カルショーは57年にクナと組んでこの素晴らしい録音を成し遂げたにもかかわらず、彼は指揮者の交代を望んだのです。伝え聞くところによると、小さな子どもがわがままを言うようなクナの態度にかなり手を焼かされたようなのです。
それはそうでしょう。自分はきちんと指揮をして間違いなく演奏したのに、どこどのぼんくら歌手が音を外したといっては何度も繰り返しを要求されるのがセッション録音というものです。基本的には劇場の人であるクナにとって、歌手が一カ所か二カ所音を外したくらい何の不都合も感じないはずです。ところが、カルショーは重箱の隅をつつくように録音をチェックしてテイク2,テイク3を要求してくるんですから、それはクナの本姓から考えればたまったものではないでしょう。

しかし、カルショーにしてみれば、明らかにミスが有ることが分かっている録音をそのまま放置することなどできるはずがありません。カルショーがあの手この手でクナを宥めながら録音させた様子は、むずかる小さな子どもをあやすようだったと伝えられています。

この経験が、クナでは4部作の録音は絶対に完成しないと言うことをカルショーに確信させたでしょうし、クナもまた、そのような骨の折れる仕事は御免被りたいと思わせたようなのです。

なお、この録音には、既に引退をしたフラグスタートの声をステレオ録音で残すという使命もありました。しかし、トリスタンの録音での嫌な思い出(でなかった高音部をシュヴァルツコップの声で補った)もあったからでしょう、彼女は高音が求められる第2幕は拒否をしましたので、取りあえずはこの第1幕と第3幕だけが録音されました。このことも、この録音が中途半端な形で終わらざるを得なかった一因ともなっているようです。
ちなみに、第3幕の録音はショルティが指揮をしています。

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