サン=サーンス:ハバネラ 作品83
Vn.リッチ ピエロ・ガンバ指揮 ロンドン交響楽団 1959年9月録音
Saint_Sanes:ハバネラ ホ長調 作品83
「音のサーカス」にはもってこいの作品
ハバネラと言えば真っ先に思い浮かぶのはカルメンの中でうたわれる「恋は野の鳥」でしょう。ということで、このハバネラというのはスペイン発祥の民族音楽かと思えば大違いで、源流はフランスのコントルダンスなるものにあるようです。それが、遠くハイチに渡り、それがキューバを経て船乗りによってスペインに持ち込まれるという複雑な経路をたどって「スペイン舞曲」であるかのようなポジションを獲得したようです。
最も、そのような蘊蓄などは音楽を聴く上ではどうでもいいことであって、大事なことはあの一拍目が飛び上がるような特徴な的なリズムを持った音楽だと言うことです。
ところが、これも有名な話ですが、サン・サーンスのメトロノーム記号は異常に早くて、冒頭の部分などは指定通りに演奏するととてもハバネラに聞こえないそうです。その他、至る所で彼の指定は演奏するものにとっても聞くものにとっても、あまり嬉しくないようなテンポが指定されているとか・・・。(私は実際にスコアを見たことがないのでネット上の情報の受け売りですが・・・)
よって、世間では一定の劇場的約束事である程度の妥当なテンポは決まっているものの、最終的には演奏者の腕次第という側面の強い作品になるようです。
その上に、ヴァイオリンの技巧の見本市みたいな面もありますから、まさに「音のサーカス」にはもってこいの作品です。おまけに、その合間に何ともメランコリックなメロディが挟まるのですから、まさにショーピースとしては最適の作品と言えます。(ただし、腕に覚えのあるヴァイオリニストに限る)
ハイフェッツのあとにアップするのはいささか意地が悪いでしょうか。
ハイフェッツの名前は偉大でその輝きが失われるにはどれほどの年月を要するのでしょうか。
それと比べると、ルジェーロ・リッチの名前は既に黄昏につつまれているように聞こえます。
ハイフェッツによる歴史的名演とも言うべき録音を既にアップしたあとで、リッチの録音をアップするというのはいささか意地が悪すぎるかもしれません。しかし、この二人の録音を聞き比べてみると、ハイフェッツの「凄味」というものがよく分かります。
もちろん、リッチの録音も決して凡庸なものではありません。もしかしたら、ヴァイオリンの音色はリッチの方が美しいかもしれませんし、テクニックの冴えも悪くはありません。
彼が得意としたサラサーテのツィゴイネルワイゼンなんかはいかにもスタンダードという雰囲気で、この作品の持ついささか大袈裟な雰囲気が上手く表現されています。つまり、サン・サーンスのハバネラやカプリチオーソにしても、どこか落ち着いた雰囲気があって、それが「匕首」を突きつけてくるようなハイフェッツとの演奏と比べると落ち着いて聞くことができるという「美点」にもつながります。
しかし、それだけではやはり悲しいかな、長い年月の間に人々の記憶から消えていってしまうのです。
やはり、忘れらられたらいやだと思えば、聞き手ののど元に「匕首」を突きつけるような演奏をしないとダメだと言うことなのでしょう。
よせられたコメント
2012-05-26:前川保祐
- すばらしい演奏だと思います。音色に輝きと艶があり、聴き始めるとすぐにリッチのヴァイオリンに引き込まれてしまいます。耽美でロマンティシズムに溢れるリッチの演奏には、ハイフェッツには感じられない魅力があります。
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