クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 op.43

セル指揮 ニューヨークフィル 1953年1月18日録音





Sibelius:交響曲第2番 ニ長調 OP.43 「第1楽章」

Sibelius:交響曲第2番 ニ長調 OP.43 「第2楽章」

Sibelius:交響曲第2番 ニ長調 OP.43 「第3~4楽章」


シベリウスの田園交響曲?

シベリウスの作品の中ではフィンランディアと並んでもっとも有名な作品です。そして、シベリウスの田園交響曲と呼ばれることもあります。もちろん、ベートーベンの第6番を念頭に置いた比喩ですが、あちらがウィーン郊外の伸びやかな田園風景だとすれば、こちらは疑いもなく森と湖に囲まれたフィンランドの田園風景です。
さらに、この作品にはフィンランドの解放賛歌としての側面もあります。重々しい第2楽章と荒々しい第3楽章を受けた最終楽章が壮麗なフィナーレで結ばれるところが、ロシアの圧政に苦しむフィンランド民衆の解放への思いを代弁しているというもので、この解釈はシベリウスの権威と見なされていたカヤヌスが言い出したものだけに広く受け入れられました。
もっとも、シベリウス本人はその様な解釈を否定していたようです。
言うまでもないことですが、この作品の暗から明へというスタイルはベートーベン以降綿々と受け継がれてきた古典的な交響曲の常套手段ですから、シベリウスは自分の作品をフィンランドの解放というような時事的な際物としてではなく、その様な交響曲の系譜に連なるものとして受け取って欲しかったのかもしれません。
しかし、芸術というものは、それが一度生み出されて人々の中に投げ込まれれば、作曲家の思いから離れて人々が求めるような受け入れ方をされることを拒むことはできません。シベリウスの思いがどこにあろうと、カヤヌスを初めとしたフィンランドの人々がこの作品に自らの独立への思いを代弁するものとしてとらえたとしても、それを否定することはできないと思います。

この作品は第1番の初演が大成功で終わるとすぐに着手されたようですが、本格的取り組まれたのはアクセル・カルペラン男爵の尽力で実現したイタリア旅行においてでした。
この作品の中に横溢している牧歌的で伸びやかな雰囲気は、明らかにイタリアの雰囲気が色濃く反映しています。さらに、彼がイタリア滞在中にふれたこの国の文化や歴史もこの作品に多くのインスピレーションを与えたようです。よく言われるのは第2楽章の第1主題で、ここにはドンファン伝説が影響を与えていると言われています。
しかし、結局はイタリア滞在中にこの作品を完成させることができなかったシベリウスは、フィンランドに帰国したあとも精力的に作曲活動を続けて、イタリア旅行の年となった1901年の末に完成させます。
一度聞けば誰でも分かるように、この作品は極めて少ない要素で作られています。そのため、全体として非常に見通しのよいすっきりとした音楽になっているのですが、それが逆にいささか食い足りなさも感じる原因となっているようです。その昔、この作品を初めて聞いた私の友人は最終楽章を評して「何だかハリウッドの映画音楽みたい」とのたまいました。先入観のない素人の意見は意外と鋭いものです。
正直言うと、ユング君は若い頃はこの作品はとても大好きでよく聴いたものですが、最近はすっかりご無沙汰していました。やはり、食い足りないんですね。皆さんはいかがなものでしょうか?

シベ2でオケの聞き比べ?


 セルのシベ2といえば東京での70年ライブが圧倒的に素晴らしい。この演奏についていつだったか、こんな風に書いたことがあります。
「いつもは冷徹とも言える演奏をするセルがここでは素直に己の心情を吐露しています。決してその表現がシベリウスにふさわしいかどうかは評価の分かれるところでしょうが、その極上の響きでかくも熱い演奏を展開されれば、その生理的な快感には抗しがたい魅力があります。

 何よりも第4楽章の中間部で音楽が一度静まったあとに、再びボレロ的に高揚していくところなどはこの上もなく感動的です。正直に申し上げると、私はこの部分にくるといつも涙を禁じ得ません。そして、真に素晴らしいのはそのあとのコーダの部分です。
 ここには、オーケストラ芸術にその生涯を捧げた希代の天才の総決算があります。」

 ちなみに、セルはこのシベ2がお気に入りだったのか、結構たくさんの録音が残っています。それも、クリーブランドだけではなくてコンセルトヘボウやニューヨークフィルも振っているので、セルとオケとの相性を観察するのにピッタリです。

 セルのシベ2として最もポピュラーだったのが64年にコンセルトヘボウを相手にスタジオ録音したものです。以前はセルのシベ2といえばこの録音しか入手できませんでした。
 ところが、このスタジオ録音はどうした訳か、どれほどのセルマニアでも「これだけはちょっとな・・・!」と言わざるを得ないようなつまらぬ演奏になっています。とりわけ、70年ライブを聞いてしまった後では、とても同じ指揮者のものとは思えないほどにテンションが低いと感じてしまいます。

 もう一つが、今回紹介したニューヨークフィルとのライブ録音です。これもコンセルトヘボウほどではないにしても、いささか緩めの演奏です。
 セルは50年代の前半に結構ニューヨークフィルを振っているのですが、そのほとんどが手兵のクリーブランドと比べると緩めの演奏になっています。もちろん、手兵をギリギリと締め上げたような演奏に息苦しさを感じる人もいるのであって、そう言う人にとってはかえって好ましく思えるかもしれませんが、一般的なセルマニアは決してそんな見方はしないものです。

 そして最後は、セルの生誕100周年を記念してリリースされた自主制作盤に収録されている66年のライブ録音です。残念ながら入手は極めて困難です。
 このライブ録音の3,4楽章の圧倒的な盛り上がりは70年ライブにそっくりです。微妙にテンポを揺らしながらジワジワと雰囲気を盛り上げていくところなどは70年のライブ録音とそっくりです。ですから、このスタイルこそがセルが理想と考えたシベ2の姿だったのでしょう。
 この細かくも微妙なニュアンスを完璧なアンサンブルを維持しながら実現するのはかなり困難だと思えるのですが、クリーブランドのオケはセルの指示を完璧にこなしていて流石!と思わせられます。
 やはり、セルにとってクリーブランドのオケこそは唯一無二のパートナーだったということなのでしょう。

よせられたコメント

2009-12-27:Ohtaro


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