ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92(Beethoven:Symphony No.7 in A major ,Op.92)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1959)
Beethoven:Symphony No.7 in A major , Op.92 [1.Poco Sostenuto; Vivace]
Beethoven:Symphony No.7 in A major , Op.92 [2.Allegretto]
Beethoven:Symphony No.7 in A major , Op.92 [3.Presto; Assai Meno Presto; Presto]
Beethoven:Symphony No.7 in A major , Op.92 [4.Allegro Con Brio]
深くて、高い後期の世界への入り口
「不滅の恋人」は「アマデウス」と比べるとそれほど話題にもなりませんでしたし、映画の出来そのものもいささか落ちると言わなければなりません。しかし、いくつか印象的な場面もあります。(特に気に入ったのは、クロイツェル・ソナタの効果的な使い方です。私ははこの曲が余りよく分からなかったのですが、この映画を見てすっかりお気に入りの曲になりました。これだけでも、映画を見た値打ちがあるというものです。)
それにしても、「アマデウス」でえがかれたモーツァルトもひどかったが、「不滅の恋人」でえがかれたベートーベンはそれに輪をかけたひどさでした。
第9で、「人類みな兄弟!!」と歌いあげた人間とは思えないほどに、「自分勝手」で「傲慢」、そしてどうしようもないほどの「エキセントリック」な人間としてえがかれていました。一部では、あまりにもひどすぎると言う声もあったようですが、私は実像はもっとひどかったのではないかと思っています。
偉大な音楽家達というものは、その伝記を調べてみるとはっきり言って「人格破綻者」の集まりです。その人格破綻者の群の中でも、とびきりの破綻者がモーツァルトとベートーベンです。
最晩年のぼろ屑のような格好でお疾呼を垂れ流して地面にうずくまるベートーベンの姿は、そのような人格破綻者のなれの果てをえがいて見事なものでした。
不幸と幸せを足すとちょうど零になるのが人生だと言った人がいました。これを才能にあてはめると、何か偉大なものを生み出す人は、どこかで多くのものを犠牲にする必要があるのかもしれません。
この交響曲の第7番は、傑作の森と言われる実り豊かな中期の時期をくぐりぬけ、深刻なスランプに陥ったベートーベンが、その壁を突き破って、後期の重要な作品を生み出していく入り口にたたずむ作品です。
ここでは、単純きわまるリズム動機をもとに、かくも偉大なシンフォニーを構築するという離れ業を演じています。(この課題に対するもう一つの回答が第8交響曲です。)
特にこの第2楽章はその特徴のあるリズムの推進力によって、一つの楽章が生成発展してさまをまざまざと見せつけてくれます。
この楽章を「舞踏の祝祭」と呼んだのはワーグナーですが、やはり大したものです。
そしてベートーベンはこれ以後、凡人には伺うこともできないような「深くて」「高い」後期の世界へと分け入っていくことになります。
この上もなく貴重な田舎オケの風合い
カイルベルトのブラームスの紹介が終わったので、次はベートーベンということになります。
カイルベルトはテレフンケンで1番から8番まで録音が残っています。残念ながら9番だけは彼の早すぎた死に追いつけなかったみたいです。オケは彼に最もなじみのあるバンベルク交響楽団・ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団・ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団の3つのオケです。
ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1956年録音
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
さて、ここで我ながら不思議に思ったのは、ブラームスに関しては完全に視野外だったのに対して、ベートーベンに関しては3番「エロイカ」だけがアップされていて、その後長く放置されてしまっているのです。ふつうはエロイカをアップすれば残りの交響曲もアップしてるだろうと思うのですが、・・・これはどうしたことだ?・・・と「エロイカ」のページを確認すると次のようにほざいていました。
前回アップしたブルックナーでは、作品そのものが煉瓦を積み重ねたような構造をしているので演奏そのものもゴツゴツしたものになったのですが、エロイカだとそこまで無骨にはなりません。でも、この「物わかりの良さ」がいささかもの足りず、出来れば、あのブル9のようなごっついエロイカを聞かせてほしかったなとも思います。
ただし、そのあたりがカイルベルトという人の限界だったのかもしれません。
持って回った言い方をしていますが、そのころの私にはこの「エロイカ」はいまひとつ気に入らなかったのでしょう。そう思って、試しに5番「運命」を聞いてみると、なるほど、そういうことかと「ほざいた理由」がなんとなくわかりました。
一言でいえば、カイルベルトの演奏にしては「エロイカ」も「運命」もはいささか「なで肩」だと思ったようなのです。
それゆえに、なんだかカイルベルトのベートーベンって今一つかなと思ってしまったようです。
そして、それ以後の交響曲を紹介するのが後回しになり、その後回しがいつの間にか放置という結果になっていたのでしょう。
そして、今回もう一度聞き返してみたのですが「エロイカ」や「運命」に関しては、その感想は基本的にはあまり変わりませんでした。しかし、まあこういうのもありかなとは思いました。
しかし、それ以外の交響曲に関してはそこまでの不満は感じませんでした。
カイルベルトといえば「武骨」という言葉が常に付きまとうのですが、私は意外と旋律ラインを大切にする人だという思いがあります。そして、その思いが「エロイカ」と「運命」では前に出すぎているような気がするのです。
しかし、それ以外の交響曲に関しては歌心と構成のバランスがうまく取れていて、勁くて伸びやかな音楽が魅力的です。
そう、まさに「強い」のではなく「勁い」のです。「勁い」とは単なる強度ではなくて、芯がしっかりして張りつめているさまをあらわします。つまりは、全体の構成はしっかりとしていながら、その中に豊かでありながらきりっとした歌心が満ちているのです。
そして何よりも聞くべきは、かつてのドイツのオケが持っていた伝統的な響きです。どっしりとした低声部に支えられた生成りの風合いは今では聞くことのできないものです。
昨今のオケは各声部のバランスを完璧に取った上で均等に鳴らすという神業のようなことを平然とやってのけます。結果として、オケの響きは「自然素材の風合い」ではなくて、「クリスタルな透明感」が支配的となります。もちろん、それがどれほど凄いことなのかはよくわかっているつもりです。それは「極上の響き」といってもいいと思っています。
しかし、7番のように、カラヤン統治下にあって未だドイツの田舎オケの風情を残したベートーベンを聞くと、「やっぱりいいなぁ」とほざいてしまうのです。
バンベルク交響楽団とハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団はベルリンフィルと比べれば不満な部分はあるのですが、それでも昔懐かしい田舎オケの風合いは今となってはこの上もなく貴重なものです。
まあ、とにかく1番から順にカイルベルトのベートーベンを聞いてもらいましょう。
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