クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:交響曲第7番

トスカニーニ指揮 BBC交響楽団 1935年6月12日(?)





Beethoven:交響曲第7番「第1楽章」

Beethoven:交響曲第7番「第2楽章」

Beethoven:交響曲第7番「第3楽章」

Beethoven:交響曲第7番「第4楽章」


深くて、高い後期の世界への入り口

 「不滅の恋人」は「アマデウス」と比べるとそれほど話題にもなりませんでしたし、映画の出来そのものもいささか落ちると言わなければなりません。しかし、いくつか印象的な場面もあります。(ユング君が特に気に入ったのは、クロイツェル・ソナタの効果的な使い方です。ユング君はこの曲が余りよく分からなかったのですが、この映画を見てすっかりお気に入りの曲になりました。これだけでも、映画を見た値打ちがあるというものです。)

 それにしても、「アマデウス」でえがかれたモーツァルトもひどかったが、「不滅の恋人」でえがかれたベートーベンはそれに輪をかけたひどさでした。
 第9で、「人類みな兄弟!!」と歌いあげた人間とは思えないほどに、「自分勝手」で「傲慢」、そしてどうしようもないほどの「エキセントリック」な人間としてえがかれていました。一部では、あまりにもひどすぎると言う声もあったようですが、ユング君は実像はもっとひどかったのではないかと思っています。
 
 偉大な音楽家達というものは、その伝記を調べてみるとはっきり言って「人格破綻者」の集まりです。その人格破綻者の群の中でも、とびきりの破綻者がモーツァルトとベートーベンです。
 最晩年のぼろ屑のような格好でお疾呼を垂れ流して地面にうずくまるベートーベンの姿は、そのような人格破綻者のなれの果てをえがいて見事なものでした。

 不幸と幸せを足すとちょうど零になるのが人生だと言った人がいました。これを才能にあてはめると、何か偉大なものを生み出す人は、どこかで多くのものを犠牲にする必要があるのかもしれません。

 この交響曲の第7番は、傑作の森と言われる実り豊かな中期の時期をくぐりぬけ、深刻なスランプに陥ったベートーベンが、その壁を突き破って、後期の重要な作品を生み出していく入り口にたたずむ作品です。
 ここでは、単純きわまるリズム動機をもとに、かくも偉大なシンフォニーを構築するという離れ業を演じています。(この課題に対するもう一つの回答が第8交響曲です。)
 特にこの第2楽章はその特徴のあるリズムの推進力によって、一つの楽章が生成発展してさまをまざまざと見せつけてくれます。

 この楽章を「舞踏の祝祭」と呼んだのはワーグナーですが、やはり大したものです。

そしてベートーベンはこれ以後、凡人には伺うこともできないような「深くて」「高い」後期の世界へと分け入っていくことになります。

もう一つの別解


フルトヴェングラーによるベートーベン演奏は、誰もまねができないけれども一つのスタンダードになっています。この7番についても、戦時中のすさまじい演奏は言うまでもなく、戦後のスタジオ録音に置いてもその位置は揺るぎません。
しかし、ベートーベンがこの作品で求めた課題、リズム動機によって交響曲を構築するという課題については、このトスカニーニの演奏の方がよりスタンダードな解かもしれません。

執拗に繰り返されるリズムがやがては強力な推進力を生み出し、それが最後には壮大な交響的構築物に変容していく様をありありと提示してくれます。これを聴けば、凡百の指揮者による7番の演奏がいかに軟弱であったかを知らされます。ワーグナーが「舞踏の祝祭」とよんだ真意もこの演奏を聞くことによって納得させられます。この面について言えば、トスカニーニはフルトヴェングラーを上回っています。

トスカニーニの真骨頂が晩年のNBC交響楽団との演奏にはないことを私たちは肝に銘じておかなければなりません。もし、晩年のトスカニーニを聞いて幻滅を感じられた方は、ぜひこの演奏に耳を傾けてください。

よせられたコメント

2008-06-05:koco


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