クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)

(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)



Viotti:Duet for Violin Solo in G minor [1.Allegro]

Viotti:Duet for Violin Solo in G minor [2.Andante]

Viotti:Duet for Violin Solo in G minor ]3.Allegretto]


波乱万丈の人生

彼の生涯は、単なる「演奏家」の枠に留まらず、宮廷音楽家、歌劇場の経営者、さらには亡命者、ワイン商人へと転身を繰り返した、極めて波乱に満ちたものでした。
イタリア北部のフォンタネット・ポーで鍛冶屋の息子として生まれました。幼少期から類稀な才能を示し、トリノのチステルナ公爵の庇護を受けて教育を受けました。
770年より、大ヴァイオリニストであるガエターノ・プニャーニに師事します。プニャーニを通じて、アルカンジェロ・コレッリから続くイタリア・ヴァイオリン界の正統な伝統を完璧に受け継ぎました。その後、トリノの王立礼拝堂楽団に入団し、プロとしてのキャリアを開始します。

1780年、師プニャーニとともにスイス、ドイツ、ポーランド、ロシアを巡る大演奏旅行に出発します。
1782年に単身でパリへ渡り、高名な演奏会「コンセール・スピリテュエル」でデビューすると、その圧倒的な演奏でパリ中を熱狂させました。

彼の演奏はヴェルサイユ宮廷の目に留まり、王妃マリー・アントワネットの御前演奏家に任命されます。
そして、1788年、ルイ16世の弟だったプロヴァンス伯の庇護のもと、歌劇場「ムッシュー劇場)」を設立し、ルイジ・ケルビーニらを招いてオペラ興行主としても大成功を収めました。

しかし、1789年にフランス革命が勃発すると、王室との繋がりが深かったヴィオッティは身の危険を感じ、1792年に楽器(1709年製ストラディバリウス)だけを持ってロンドンへ亡命します。
ロンドンではソロ奏者や指揮者として活動し、当時現地を訪れていたヨーゼフ・ハイドンのサロモン・コンサートでも共演しました。
ところが、1798年、フランス革命政府のスパイであるという無実の容疑をかけられ、イギリスから一時追放されます。
のちに容疑が晴れてロンドンに戻りますが、音楽業界に失望した彼は演奏活動をほぼ引退し、ワイン商のビジネスに没頭しました。 しかし、そのワイン・ビジネスも破産して再び音楽活動を再開します。

そして、1819年に王政復古となったフランスへ呼び戻され、パリ・オペラ座の総監督に就任しました。
しかし、劇場内の政治的トラブルや自身の衰えもあり、わずか2年で辞任へと追い込まれます。
失意のうちに再びロンドンへ渡り、1824年、親しい友人の家でその波乱の生涯を閉じました。

まさに、波乱万丈の人生だったようです。

そんな、波乱万丈の人生を送ったヴィオッティの最大の業績は、自身が直接指導したピエモンテ学派の技術をベースに、パリで「近代ヴァイオリン奏法」の基礎を確立したことです。
彼の教えやスタイルは、パリ音楽院の教授となったピエモンテ・ロード、ピエモンテ・バイヨ、ロドルフ・クロイツェルらへと受け継がれ、19世紀の「フランス・ベルギー派」として世界のバイオリン界の主流となりました。

ヴァイオリン二重奏曲 ト長調


彼が残した数多くのヴァイオリン二重奏曲は、単なる初心者のための練習曲ではなく、2つの楽器が常に対等な立場で高度な技法を競い合い、対話するように書かれた「協奏的(コンチェルタント)」な性格を強く持っています。
このト長調の二重奏曲も、まるで小さなヴァイオリン協奏曲を2人で演奏しているかのような華やかさと、イタリア由来の伸びやかで気品あるメロディが特徴です


  1. 第1楽章:Allegro
    華やかで快活な古典派らしいオープニングで始まります。
    第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交互に主題を提示し合い、流麗なアルペジオや小気味よいスタッカートのパッセージが次々と現れます。
    片方が主旋律を歌う間、もう片方は巧みな伴奏に回り、それが目まぐるしく入れ替わるスリリングな掛け合いが聴きどころです。

  2. 第2楽章:Andante
    ヴィオッティの最大の魅力である、オペラのアリアを思わせる叙情性に満ちた緩端楽章です。
    2つのヴァイオリンが極めて美しく、甘美なメロディを重ね合わせます。
    メニューインとデ・ヴィートの録音では、お互いの音色が溶け合いながらも、それぞれの濃厚な歌心が際立つ、この上なく高貴でロマンティックな演奏が展開されます。

  3. 第3楽章:Allegretto
    軽快で踊るようなリズムが心地よい、フィナーレにふさわしい楽章です。
    終楽章らしく、よりロンド風の軽やかさと技巧的なパッセージが散りばめられています。2本のヴァイオリンが追いかけっこをするようなユーモアあふれる展開を見せ、最後は爽快かつ華やかに曲を締めくくります。



「古さ」を味わうには十分な魅力を持っています


ジョコンダ・デ・ヴィートと言えば、真っ先にブラームスの音楽が浮かび、その次にバッハの音楽が思い浮かぶのでしょうか。
しかし、その短い録音歴の中で残された演奏を調べてみると、意外なことに、ヘンデルの器楽作品を数多く取り上げていて、それ以外にもパーセルの「黄金のソナタ」等も取り上げています。そして、彼らよりはもう少し後の時代になるのですが、シュポアやヴィオッティというヴァイオリンのヴィルトゥオーソが自分のために書いた作品も良く取り上げています。

こういう事だけで判断するのは軽率に過ぎるかもしれないのですが、こういうあたりにも彼女が「古い時代」に属するヴァイオリニストであることが窺われるような気がするのです。そして、そう言うタイプの演奏家であったが故に、バロック時代の器楽作品であっても、何処かロマン派の音楽のように聞こえてしまうのであって、それがまた私のような聞き手にとっては魅力的なのです。
それだけに、時代が下がるにつれて、彼女の演奏が次第に薄味になっていくのは残念でならないのです。

なお、1951年録音のヘンデルのヴァイオリン・ソナタはパチパチノイズ満載なのでそれだけで拒絶反応を示す人も多いかと思いますが、1949年録音バッハのヴァイオリン協奏曲と同じように、デ・ヴィートならでは濃厚な歌い回しがおさめられているので敢えてアップしました。
それと比べると、それ以外のトリオ・ソナタやパーセルの「黄金のソナタ」などはメニューインとの二重奏なので、私の駄耳ではどちらがどのパートを演奏しているのかを聞き分けることも出来ませんので、細かいことをあれこれと述べる資格はありません。しかし、全体的に見れば、51年の録音よりも薄味に聞こえます。
とは言え、それらも十分にロマンティックな演奏であり、「古さ」を味わうには十分な魅力を持っています。

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