ムソソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル編曲)
マルケヴィッチ指揮:ベルリンフィル 1953年2月21〜25日録音
Mussorgsky:展覧会の絵(ラベル編曲)
今までの西洋音楽にはない構成
組曲「展覧会の絵」は作曲者が35歳の作品。親友の画家で建築家のヴィクトール・ガルトマン(1834〜1873)の遺作展が開かれた際に、そのあまりにも早すぎる死を悼んで作曲されたと言われています。
彼は西洋的な音楽語法を模倣するのではなく、むしろそれを拒絶し、ロシア的な精神を音楽の中に取り入れようとしました。
この「展覧会の絵」もガルトマンの絵にインスピレーションを得た10曲の作品の間にプロムナードと呼ばれる間奏曲風の短い曲を挟んで進行するといった、今までの西洋音楽にはない構成となっています。
よく言われることですが、聞き手はまるで展覧会の会場をゆっくりと歩みながら一枚一枚の絵を鑑賞しているような雰囲気が味わえます。
作品の構成は以下のようになっています。
「プロムナード」
1:「グノームス」
2:「古い城」
「プロムナード」
3:「チュイルリー公園」
4:「ヴィドロ」
「プロムナード」
5:「殻をつけたままのヒヨコのバレエ」
6:「ザムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」
「プロムナード」
7:「リモージュの市場」
8:「カタコムベ(ローマ人の墓地)」
9:「ニワトリの足に立つ小屋(ババヤーガ)」
10:「雄大な門(首都キエフにある)
「鬼才」という言葉が一番ピッタリする指揮者
このサイトでマルケヴィッチを取り上げるのは初めてではないでしょうか。残念ながら、ユング君はマルケヴィッチの良い聞き手とはいえません。彼の録音で真っ先に頭に浮かぶのは、ハスキルの伴奏者としての仕事です。次に思い浮かぶのは春祭やラベルのボレロなんかに代表される管弦楽曲の指揮者としての顔です。まあ、そんな程度です。
しかし、一部では彼のことを「鬼才」もしくは「奇才」として評価する根強いファンが存在します。今回、遅まきながらユング君も彼の録音をある程度まとめて聴いてみて、「なるほど、これはたいしたものだ」と今さらながら感心している次第です。
彼は、作曲家として音楽家としてのキャリアのスタートしています。ロシア貴族の息子として生まれた彼は母親のつながりでロシアバレー団の偉大な興行師ディアギレフの知遇を得ます。同性愛者として有名だったディアギレフの最期の愛人と言われることもあったようですが、マルケヴィッチ自身には同性愛の傾向はなかったようです。しかし、マルケヴィッチはディアギレフのことを深く尊敬し、彼の才能を開花させる上で大きな役割を果たしたことは間違いありません。
しかし、ディアギレフの死と第2次大戦中の大病によって作曲家としての前途に見切りをつけたマルケヴィッチはシェルヘンに指揮を学んで、戦後は指揮者としてのキャリアをスタートさせます。そして、EMIとの契約も行いここでお聞きいただけるようにベルリンフィルとの録音も行って順風満帆のスタートを切ったかと思ったのに、突然にその契約を打ち切りフランスのパテ・マルコーニと契約してしまいます。
その後のことはすでに多くの人がご存知のように、2流、3流のオーケストラを渡り歩くことになり、さらに世界各地の辺境オケを指揮して歩く人生が始まります。(数えた人によると彼は世界50カ国で指揮活動をしたそうです。)
ざっと、思いつくだけでも彼がシェフを務めたオーケストラは、モントリオール響・コンセール・ラムルー管・ハバナ・フィル・スペイン放送響・モンテ・カルロ歌劇場管・ローマ聖チェチリア音楽院管などです。しかし、おかげで来日する機会も多く日本フィルやN響との録音も数多く残されています。
彼の演奏を聴いてみて驚くのは、オケの下手さを感じさせないほどに完成度が高いことです。もちろん、個々の奏者の力量はどうしようもないのでゴージャスでリッチな響きを求めるのは無理ですが、音楽の姿がいつも明確で実にクリアなのです。とにかく、一つ一つのフレーズが全て意味を持って鳴らされているので、曖昧さというものが全く存在しないのは実に驚くべき事です。
このベルリンフィルとのコンビで録音された展覧会の絵も、音楽の造形を常にクリアにしようとするマルケヴィッチの手法がよくあらわれています。派手さはありませんが、「展覧会の絵」という作品の構造が手に取るように分かる演奏です。
ただ、残念なのは彼がそのキャリアでトップオケのシェフに座ることがなかったために、結果として時の流れとともにその存在が忘れ去られていっていることです。残念なことです。
よせられたコメント
2013-01-06:渡邊 眞
- コンサートホールソサエティ盤でマルケヴィッチとモンテカルロ国立歌劇場管弦楽団によるアルルの女を聞いて以来、この組み合わせによる演奏を申し込みはがきによくリクエストしていました。そんな思い出があるので、わりと好きです。ユングさんのおっしゃると通りくっきりと音を鳴らすのが特徴だと思います。ただ、ごつごつした感じがするところに好き嫌いがはっきりと出るのだと思います。
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