クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

セルゲイ・タネーエフ:交響曲第4番 ハ短調, Op.12

アレクサンドル・ガウク指揮:モスクワ・ラジオ交響楽団 1951年6月21日録音





Sergei Taneyev:Symphony No.4 in C minor, Op.12 [1.Allegro molto]

Sergei Taneyev:Symphony No.4 in C minor, Op.12 [2.Adagio]

Sergei Taneyev:Symphony No.4 in C minor, Op.12 [3.Scherzo: Vivace]

Sergei Taneyev:Symphony No.4 in C minor, Op.12 [4.Allegro energico - molto maestoso]


ロシアのブラームス

セルゲイ・タネーエフの名前はかなりマイナーな部類にはいるでしょう。私もクラシック音楽などと言うものを40年以上聞いてきていますが、このタネーエフの作品を聞いたのはこれが初めてです。

歴史的ポジションとして言えば、チャイコフスキーなどに作曲を学び、弟子にはラフマニノフやスクリャービン、プロコフィエフががいると言うことです。つまりは、ロシアの交響曲の歴史の中で見てみれば、チャイコフスキーとラフマニノフ、プロコフィエフなどの中間に入りというか、つなぎ目というか、そう言うポジションにあったと言うことです。

また、ピアニストとしても著名でチャイコフスキーのピアノ協奏曲の第1番も第2番タネーエフによって初演されています。
と言うことで、この経歴を見ればもっと世に知られていいと思うのですが、その作風はチャイコフスキーの流れを汲むもので、「ロシアのブラームス」とよばれるほどに保守的な音楽であったことが時代とずれたと言うことでしょうか。

タネーエフは4曲の交響曲を残しているのですが、生前に出版されたのはこの第4番だけで、出版の時には当然の事ながら「第1番」として世に出ています。その後、作曲された順番通りに番号が割り振られて、今ではタネーエフ最後の交響曲として「第4番」が割り振られています。
ただし、それは当時のタネーエフの評価が低かったからではなくて、出版と言うことに無頓着だった彼の姿勢によるところが大きいようです。

実際に聞いてみれば、この作品がかくもマイナー作品として逼塞しているのかと不思議になるほどの重厚で精緻な音楽です。おそらく何らかの切っ掛けがあればカリンニコフのように再評価が進むかもしれません。
そして、そうならなければ、ロシアにおける交響曲の歴史においてそこがミッシング・リンクになりかねません。

対位法を駆使し循環形式を用いた重厚な音楽は、19世紀末の音楽としては確かに古すぎたのかもしれませんし、第2楽章の田園的な風景がロシア的な雰囲気が薄いのも足を引っ張っているのかもしれません。
そして、最終楽章の堂々たる構えと華やかなフィナーレは何ともドイツ的と感じるかもしれません。
そのあたりが、「ロシアのブラームス」という、誉めているのか貶しているのか分からない中途半端な評価に繋がっているのかもしれません。
ちなみに、タネーエフ自身はブラームスは好きではなかったようで、ワーグナーの音楽も大嫌いだったそうです。

鬼のごとき統率力で最後までオケを引っ張っている


アレクサンドル・ガウクと言うのは面白いおじさんですね。
彼の演奏を初めて聞いたのはオボーリンの伴奏を務めたラフマニノフの協奏曲でした。オケも全く同じモスクワ・ラジオ交響楽です。
そして、その演奏は率直に言ってかなり雑な部分が目立つものでした。そして、それが初めてだったので、このコンビというのはこの程度のものかと思い、カップリングされていたギレリス&コンドラシンの演奏に対して「コンドラシンはプロの指揮者だなと感じ入ります」と書いていました。

ところが、このタネーエフの交響曲では、これが全く同じ指揮者、同じオーケストラのものとは思えないほどに素晴らしい演奏なので驚いてしまいました。
これを聞くと、オボーリンの伴奏をつとめた録音では気が乗らないというか、何でオレがこんな奴の伴奏しなきゃいけないんだというか、そう言うあまりにも人間的なものがもろにでていたことに気づかされて苦笑してしまいました。

もちろん、タネーエフの交響曲なんて今まで聞いたこともなかったので、他と較べて比較検討などは出来ないのですが、こういうマイナー曲をここまで面白く聞かせてくれるのですから悪かろうはずはありません。
ラフマニノフでは時にオケのバランスが崩れる場面も見受けられたのですが、ここではまさに鬼のごとき統率力で最後までオケを引っ張っています。そして、オケの方もそう言うガウクの指示に応えて、重厚な響きでありながらも緊張感に満ちた引き締まった響きを聞かせてくれます。

アレクサンドル・ガウク、やる気のあるときには凄い力を発揮するのですが、やる気のでないときは平気でを抜いてしまう困ったおじさんだったのでしょうか。
もちろん、ここではタネーエフへの深い敬意をバックボーンにした素晴らしい演素を聞かせてくれています。

ついでながら、1951年の録音ですがメロディアによる録音のクオリティは悪くありません、
音源にした中古レコードの盤質も極上でした。実に、これはお買い得の一枚でした。

よせられたコメント

【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-07-24]

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調, Op.104(Dvorak:Cello Concerto in B Minor, Op.104)
(Cello)アンドレ・ナヴァラ:ルドルフ・シュワルツ指揮 ナショナル交響楽団 1954年録音(Andre Navarra:(Con)Rudolf Schwarz The New Symphony Orchestra Recorded on, 1954)

[2024-07-22]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3(Beethoven:Piano Sonata No.18 In E Flat, Op.31 No.3 "The Hunt")
(P)クララ・ハスキル:1960年9月録音(Clara Haskil:Recorded on September, 1960)

[2024-07-20]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第9番 イ長調 K.169(Mozart:String Quartet No.9 in A major, K.169)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-07-18]

ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ短調 作品31(Vieuxtemps:Violin Concerto No.4 in D minor, Op.3)
(Vn)ヴァーシャ・プシホダ:フランツ・マルスツァレク指揮 ケルン放送交響楽団 1954年録音(Vasa Prihoda:(Con)Franz Marszalek Kolner Rundfunk-Sinfonie-Orchester Recorded on 1954)

[2024-07-16]

サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 イ短調, Op.33(Saint-Saens:Cello Concerto No.1 in A Minor, Op.33)
(Cello)ガスパール・カサド:イオネル・ペルレア指揮 バンベルク交響楽団 1960年5月録音(Gaspar Cassado:(Con)Ionel Perlea Bamberg Symphony Orchestra Recorded on May, 1960)

[2024-07-14]

ヨハン・シュトラウス:ワルツ「芸術家の生活」, Op.316(Johann Strauss II:Artists Life Op.316)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1962年録音(Jascha Horenstein:Vienna State Opera Orchestra Recorded on December, 1962)

[2024-07-12]

ラロ:スペイン交響曲 ニ短調, Op21(Lalo:Symphonie espagnole, for violin and orchestra in D minor, Op. 21)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ・コロンビア交響楽団 1946年11月16日録音(Zino Francescatti:(Con)Andre Cluytens La Grand Orchestra Symphonique Colombia Recorded on November 16, 1946)

[2024-07-10]

J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042(Bach:Violin Concerto No.2 in E major, BWV 1042)
(Vn)レオニード・コーガンエ:ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 1959年録音(Leonid Kogan:(Con)Rudolf Barshai Moscow Chamber Orchestra Recorded on 1959)

[2024-07-08]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」 ニ短調 Op.31-2(Beethoven:Piano Sonata No.17 In D Minor, Op.31 No.2 "Tempest")
(P)クララ・ハスキル:1960年9月録音(Clara Haskil:Recorded on September, 1960)

[2024-07-06]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第8番 ヘ長調 K.168(Mozart:String Quartet No.8 in F major, K.168)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

?>