サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン, Op.20
(Vn)イダ・ヘンデル:(P)アルフレード・ホレチェク 1962年録音
Sarasate:Zigeunerweisen, Op.20
ヴァイオリンのテクニックの見本市
サラサーテと言えばツィゴイネルワイゼン、ツィゴイネルワイゼンと言えばサラサーテです。
多くの作曲家(サン=サーンス・ブルッフ・ラロなど)が彼のために多くの作品を献呈していますが、何と言っても彼の手になるこの「ツィゴイネルワイゼン(ジプシーの歌)」が一番有名であり、サラサーテの代名詞となっています。
ヴァイオリンの華やかな技巧の見本市ともいうべき作品であり、エンターテイメントとしてのヴァイオリンの楽しさをこれほどまでに満喫できる作品はそうあるものではありません。
この作品は、当時のハンガリーで広く普及していたジプシーオーケストラのハンガリーの歌が使われています。サラサーテはこのアンサンブル特有の演奏スタイルと自由な即興的形式を上手くこの作品に取り込んでいます。
感傷的なレチタティーヴォ、歌うようなメロディー、炎のチェルダシ(ハンガリーの民族舞踊)。
実に見事なものです。
作品と向かい合ってそこに何を感じ取れるかこそが大切
イダ・ヘンデルは録音嫌いとよく言われるのですが、先にも紹介したように、初めてDeccaと録音契約したときにスタッフからクリスマスに犬を贈られ、その後も彼女は犬を常に飼い続けその名前はいつも「Decca」でした。
ですから、レコード会写との関係、とりわけ「Decca」との関係は悪くなかったと推測はされるのですが、何故か極端に録音が少ないのもまた事実です。
しかし、最近は60年代のライブ録音が少しずつ世に出回りはじめました。録音から50年が経過してパブリック・ドメインとなっることで世に出始めました。
ここで取り上げているヴィエニャフスキの「ポロネーズ」や「マズルカ」はその様なライブ録音の一つです。
それから、紹介に使った音源には「スケルツォ-タランテラ」もライブ録音と記されていたのですが、これは間違いなくスタジオでの録音です。これ以外にも、パガニーニの「モーゼ幻想曲」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」などもスタジオ録音のようなのですが、よくぞ録音してくれたものです。
そして、ハイフェッツの「スケルツォ-タランテラ」の録音を紹介したときにも少しふれたのですが、この「スケルツォ-タランテラ」の演奏は実に素晴らしいものです。もちろん、一音たりとも曖昧にしないハイフェッツの演奏と較べれば少しは曖昧な部分はありますが、同時代のヴァイオリニストと較べてみればテクニック的には十分に賞賛に値します。言うまでもないことですが、ハイフェッツを比較の対象に持ってくるのが間違っているのです。
ただし、彼女の演奏にはハイフェッツにはないものがあります。それは、このヴァイオリン技法の誇示を目的としたような「スケルツォ-タランテラ」のような作品であっても、そこに何ともいえない「色気」が感じられて、それが鮮やかなテクニックと出会うときに音楽は「妖艶」とも言いたくなるような世界を見せてくれることです。
それはまさに、イダ・ヘンデルというヴァイオリニストが本能的に感じとった「スケルツォ-タランテラ」の世界であり、それに気づくことで逆にハイフェッツの凄さにもあらためて気づかせてくれたのでした。
また、同じヴィエニャフスキの作品であるマズルカやポロネーズははじめて聞く作品なのであまり確信を持ってはいえないのですが、それでも「ヴァイオリンのショパン」とも呼ばれたヴィエニャフスキらしい色気のある音楽に仕上げているように思えます。
また、さらに感心したのはパガニーニの「モーゼ幻想曲」です。
これもまた始めて聞く作品だったのですが、あのパガニーニがこのような叙情的なメロディを書いていたのかと驚かされました。そして、その演奏で見せるイダ・ヘンデルの妖艶さは見事なものです。そして、パガニーニの作品なんだからこのまま終わるはずはないだろうと期待していると、パガニーニも、そして演奏するイダ・ヘンデルもその期待に見事に答えてくれる締めくくりでこの作品を仕上げています。
そして、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」ですが、これはほぼヴィエニャフスキの「スケルツォ-タランテラ」を聞いたときに感じたことがより強く感じられます。とりわけ中間部における叙情的な部分における色気、とりわけ弱音部の歌わせ方にはゾクッとするような怪しげな魅力があふれています。
なるほど、演奏家と言うのはテクニックが大切なのではなくて、作品と向かい合ってそこに何を感じ取れるかこそが大切であり、その感じ取ったものを聞き手に伝えるためにどのようにテクニックを駆使するかが大切だと言うことを教えてもらった録音でした。
収録作品
ヴィエニャフスキ:スケルツォ-タランテラ Op.16
ヴィエニャフスキ:2つのマズルカ Op.19より第1番「オベルタス」
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ Op.4
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-07-24]
エルガー:「ゲロンティアスの夢」第1部 (Elgar:The Dream Of Gerontius, Op. 38 Part1)
マルコム・サージェント指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団 (T)リチャード・ルイス (MS)マージョリー・トーマス (Br)ジョン・キャメロン ハダースフィールド合唱協会 1954年11月4日~6日録音(Sir Malcolm Sargent:Liverpool Philharmonic Orchestra (T)Richard Lewis (MS)Marjorie Thomas (Br)John Cameron Huddersfield Choral Society Recorded on November 4-6, 1954)
[2026-07-22]
J.S.バッハ:カンタータ第202番「いまぞ去れ、悲しみの影よ」 (結婚カンタータ)BWV.202(J.S.Bach:Weichet nur, betrubte Schatten, BWV 202)
カール・ミュンヒンガー指揮 (S)シュザンヌ・ダンコ (Ob)フリッツ・フィッシャー (Vn)ヴェルナー・クロツィンガー (Cemb)ジェルマン・ヴォーシェ=クレール シュトゥットガルト室内管弦楽団 1953年録音(Karl Munchinger:(S)Suzanne Danco (Ob)Fritz Fischer (Vn)Werner Krotzinger (Cemb)Germaine Vaucher-Clerc Stuttgarter Kammerorchester Recorded on 1953)
[2026-07-20]
ベートーヴェン:魔笛の主題による12の変奏曲, Op. 66(Beethoven:12 Variations on Ein Madchen oder Weibchen from Mozart's Die Zauberflote in F Major, Op. 66)
(Cello)モーリス・ジャンドロン (P)ジャン・フランセ 1966年11月録音(Maurice Gendron:(P)Jean Francaix Recorded on November, 1966)
[2026-07-17]
サンマルティーニ:チェロ・ソナタ ト長調(Sammartini:Cello Sonata in G major)
(Cello)レナード・ローズ:(P)レオニード・ハンブロ 1953年5月11日~12日録音(Leonard Rose:(P)Leonid Hambro Recorded on May 11-12, 1953)
[2026-07-16]
F.クープラン(バズレール編):コンセールのための5つの小品(Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis")
カール・ミュンヒンガー指揮 (Cello)ピエール・フルニエ シュトゥットガルト室内管弦楽団 1952年録音(Karl Munchinger:(Cello)Pierre Fournier Stuttgarter Kammerorchester Recorded on 1952)
[2026-07-15]
ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第1番 イ長調, G.13(Boccherini:Cello Sonata No. 1 in A Major, G. 13)
(Cell)エンリコ・マイナルディ:(P)カルロ・ゼッキ 1952年録音(Enrico Mainardi:(P)Carlo Zecchi Recorded on 1952)
[2026-07-12]
ヤナーチェク:ヴァイオリン ソナタ(Janacek:Violin Sonata)
(Vn)ワルター・バリリ:(P)フランツ・ホレチェック 1954年録音(Walter Barylli:(P)Franz Holetschek Recorded on 1954)
[2026-07-10]
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調, Op.63(Prokofiev:Violin Concerto No.2 in G minor, Op.63)
(Vn)アイザック・スターン:レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1957年1月21日録音(Isaac Stern:(Con)Leonard Bernstein)New York Philharmonic Recorded on January 21, 1957)
[2026-07-09]
バルトーク:15のハンガリー農民歌, Sz.71(Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71)
(P)ジェルジ・シャーンドル:1951年1951年9月12日録音(Gyorgy Sandor: Recorded on September 12, 1951)
[2026-07-07]
ベートーベン:パイジェルロの「水車屋の娘」の「わが心もはやうつろになりて」による6つの変奏曲 ト長調 WoO 70(Beethoven:6 Variations on the Duet Nel cor piu non mi sento from La molinara, WoO 70)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)