ハイドン:交響曲第96番「奇跡」
バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1952年録音
Haydn:交響曲第96番「奇跡」「第1楽章」
Haydn:交響曲第96番「奇跡」「第2楽章」
Haydn:交響曲第96番「奇跡」「第3楽章」
Haydn:交響曲第96番「奇跡」「第4楽章」
隠れた人気曲
ハイドンの交響曲というとまず94番「驚愕」が有名です。それに続いて、ロンドン・軍隊・時計・太鼓連打などのザロモン交響曲最後を飾る作品に人気が集まっています。そんな中にあって、地味ではありますがこの96番「奇跡」は一部の通には(?)人気のある作品です。
アダージョの序奏の後に展開される第1楽章は非常にがっしりとした構成を持っています。第2楽章の長大なコーダでは二台のヴァイオリンがソロで登場してとてもチャーミングな掛け合いを聞かせてくれます。そして最終楽章では8分音符だけでできた単純きまるロンド主題をベースに驚くほど充実した音楽を聞かせてくれます。
それから、この作品の副題ととして定着している「奇跡」はハイドン自身によるネーミングではなく後の人の後付です。
言い伝えによると、この作品を演奏しようとステージにハイドンを姿をあらわしたときに、その姿をよく見ようと聴衆が前に駆け寄ったときに、平土間の真ん中にシャンデリアが落下して多くの人が難を逃れたということです。その時に多くの人々が「奇跡だ!奇跡だ!」と叫んだことからこのネーミングが定着したというのです。
しかし、この逸話はハイドン研究家として有名なランドンの調査によって今日では完全に否定されています。
確かに、ザロモン・コンサートにおいて、演奏会の最中にシャンデリアが落下するという事件はあったことは報告されていますが、それはこの96番の演奏とは全く関係ないときに起こっています。(102番の終楽章のアンコール演奏の最中に起こったことが新聞記事によって確認されています。)にもかかわらず、この96番が奇跡というニックネームをつけられそれが広く流布したのかは今もって謎です。
ザロモン演奏会の概要
エステルハージ候の死によって事実上自由の身となってウィーンに出てきたハイドンに、「イギリスで演奏会をしませんか」と持ちかけてきたのがペーター・ザロモンでした。
彼はロンドンにおいてザロモン・コンサートなる定期演奏会を開催していた興行主でした。
当時ロンドンでは彼の演奏会とプロフェッショナル・コンサートという演奏会が激しい競争状態にありました。そして、その競争相手であるプロフェッショナル・コンサートはエステルハージ候が存命中にもハイドンの招聘を何度も願い出ていました。しかし、エステルハージ候がその依頼には頑としてイエスと言わなかったために、やむなく別の人物を指揮者として招いて演奏会を行っていたという経緯がありました。
それだけに、ザロモンはエステルハージ候の死を知ると素早く行動を開始し、破格とも言えるギャランティでハイドンを口説き落とします。
その結果として、1791年・1792年・1794年の3年間にハイドンを指揮者に招いてのザロモン演奏会が行われ、ハイドンもその演奏会のために93番から104番に至る多くの名作を生み出したわけです。
この演奏会はロンドンの聴衆を熱狂させ社会的なセンセーションを巻き起こしました。
また、イギリス王妃の誕生祝賀舞踏会に招かれたときに、皇太子が誰よりも先にハイドンに挨拶をしたことで、イギリス社交界におけるハイドンの地位も決定的なものとなりました。
ハイドンは行く先々で熱狂的な歓迎を受け、オックスフォード大学から音楽博士号を受けるという名誉も獲得します。
そして何よりも、この3年間にわたるザロモン演奏会でハイドンは2400ポンドの収入を得ます。エステルハージ家に仕えた辛苦の30年間で貯蓄できたのがわずか200ポンドであったことを考えれば、それは想像もできないような成功だったといえます。
ハイドンはその収入によって、ウィーン郊外の別荘地で一切の煩わしい出来事から解放されて幸福な最晩年をおくることができました。ハイドンは晩年に過ごしたこのイギリス時代を「一生で最も幸福な時期」と呼んでいますが、それは実に納得のできる話です。
驚くほどの音質の良さ
バルビローリのハイドンは彼の特徴からいっても緩徐楽章がすぐれています。そのたおやかな表現は他ではなかなか聞くことのできないものです。
しかし、クレンペラーの力業はありませんし、ワルターほどの濃厚なロマン性もありません。ビーチャムのウィットもないし、セルの精緻さもありません。
その様な二重丸の演奏と比べると存在感は薄いかもしれませんが、この録音は50年以上前のものとは思えないほどにすぐれています。そう言うこともプラスしたうえでの総合点となると、結構いい線をいくかもしれません。
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