モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番
ディヌ・リパッティ カラヤン指揮 ルツェルン祝祭管弦楽団 1950年8月23日 録音
Mozart:ピアノ協奏曲第21番「第1楽章」
Mozart:ピアノ協奏曲第21番「第2楽章」
Mozart:ピアノ協奏曲第21番「第3楽章」
20番のニ短調コンチェルトは兄弟関係の作品です
この作品は前作の20番が完成したわずか一ヶ月後に生まれています。その意味でこの二つの作品は明らかに兄弟関係にある作品だといえます。
しかし、前者がこの上もなくドラマティックな作品であるのに対して、これは対照的なほどに性格を異にします。
動的に対して静的、ディオニソス的に対してアポロ的、ドラマティックなものに対してポエティックな作品だといえましょうか?調性を見ても、モーツァルトにとってニ短調というのが情念の調性だとすれば、このハ長調は均整のとれた構築的な美しさを表出する調性でした。例えば、ジュピターであり、リンツ、そして25番のコンチェルトなどがその代表でしょうか。
この作品でも、冒頭は淡々と始まりますが、すぐにシンフォニックな姿をあらわしてきます。
モーツァルトは20番以降のコンチェルトにおいては、オーケストラ部分が単なる伴奏の領域から抜け出して密度の濃いものになっていきますが、ここでもそのような特徴ははっきりと表れています。特に、第2楽章のバスのピチカートとヴァイオリンの三連符の刻みにのってファーストヴァイオリンが歌い出す部分はモーツァルトが書いた音楽の中でも最も美しいもののの一つです。アインシュタインは、(物理学者じゃないですよ・・・アルフレート・アインシュタインですよ!)、この部分を「人間の声に関する一切の配慮から完全に解放された理想的なアリア」だと書いていますが、上手いことを言うものです。まさに、人類が持ち得た最高の歌の一つであることは間違いありません。
モーツァルトはこの時期、いわゆるウィーン時代の初期にはまったく交響曲を書いていません。その理由は、この時期のピアノ協奏曲を聴くとなるほどと納得がいきます。
そう、この時期のコンチェルトはどれもこれもがシンフォニックな作品ばかりです。そこからわざわざピアノを抜いた作品を作る必然性は感じなくなったのでしょう。しかし、このような方向性は18世紀の人々が求めていたピアノコンチェルトとは大きくずれはじめていました。
それはベートーベンの先駆と言うよりは、時にはロマン派の先駆けといえるほどの内容持っていましたから、18世紀の人々にはついていけなかったようです。結果として予約演奏会へのチケットは売れなくなり、この分野における創作のためのきっかけが失われることになります。
そして、その創作へのきっかけが絶たれることによって、モーツァルトはもう一度純粋なシンフォニーの創作へと立ち返っていくのです。おそらく、ピアノコンチェルトの創作への道が閉ざされなければ、私たちはプラハ以降のシンフォニーを持ち得なかったかもしれません。
リパッティの数少ない録音を楽しみましょう
リパッティのコンチェルトというと、まずはグリーグとシューマンが有名ですし、一部ではショパンの第1番のコンチェルトも高く評価されています。それ以外となると忘れられた存在になりつつありますが、決して数は多くないリパッティの録音なんですから楽しまないと損です。
このモーツァルトのコンチェルトですが、正直言ってオケがあまりにもしゃしゃり出すぎていて決して好ましい演奏ではありません。少なくともユング君の耳にはそのように聞こえます。しかし、それはリパッティには何の責任もない話です。
そんなオケに負けることなくリパッティのリリカルな響きは十分に楽しめる演奏です。
よせられたコメント
2010-08-01:南
- 何故かうるさかった。
音楽は、再生機器を含めて聞く環境で拝聴印象が変わります。
仏パテのレコード盤の印象のか細いピアノの音の印象が無く、オーケストラの演奏に煽られるのか、触発されるのか、バリバリと弾きまくるリパッティの驚きました。
どうしても、最後の演奏会ライブの印象がぬぐえませんが、当サイトで聞いたバルトークの演奏でリパッティへ今までもっていた概念は、当に崩れていましたので、新しい演奏として今回この演奏を聴けましたが、私の大事なモーツアルトがどっかに行ってしまいました。
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