クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ショパン:ポロネーズ集(第1番~第6番)

P:マウツジンスキ 1959年5月22,23,28&29日録音



Chopin:Polonaises No.1 in C sharp minor Op.26-1

Chopin:Polonaises No.2 in E flat minor Op.26-2

Chopin:Polonaises No.3 in A Op.40-1 "Military"

Chopin:Polonaises No.4 in C minor Op.40-2

Chopin:Polonaises No.5 in F sharp minor Op.44

Chopin:Polonaises No.6 in A flat Op.53 "Heroic"


雄々しさと憂愁

今回、この録音をアップしようとして、何と・・・!!、今まで全くショパンのポロネーズをアップしていないことに気づきました。
何という、大いなる欠落!!
確かに、クラシック音楽という膨大な海の中でその全てをカバーしきるのは不可能なのですが、かくも重要なレパートリーを欠落したままの状態で放置していたとは、あまりにも迂闊でした。

とは言え、気を取り直して、簡単に楽曲解説などをしておきます。

ショパンのポロネーズと言えば一般的に7曲です。それ以外にも何曲かこの形式の作品を作曲しているようですが、少年時代の習作と言うことで、ポロネーズ全集と言えば以下の7曲という事になっています。
作品番号順に1番から7番というナンバーも割り振られています。


  1. ポロネーズ第1番嬰ハ短調Op.26-1

  2. ポロネーズ第2番変ホ短調Op.26-2

  3. ポロネーズ第3番イ長調Op.40-1「軍隊」

  4. ポロネーズ第4番ハ短調Op.40-2

  5. ポロネーズ第5番嬰ヘ短調Op.44

  6. ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄」

  7. ポロネーズ第7番変イ長調Op.61「幻想」



この中で、最も有名なのは第6番の「英雄ポロネーズ」でしょう。掛け値なしにショパンの最高傑作の一つと言っていいでしょうし、古今東西の数あるピアノ作品の中でも屈指の名作でしょう。そして、それに続く「幻想ポロネーズ」となると、それは「ポロネーズ」という形式を完全に脱却して、全く新しい類の音楽になっています。
リストがこの作品の中に、熱病的な苦悶の色合いを感じ取ったのは慧眼でした。そこには、かつてのショパンの特徴であった華やかなピアニズムはどこにも見あたりません。当時の聴衆はこの作品に戸惑い、ただただ錯乱した響きしか感じ取れなかったほどの「先進性」を内包した作品です。

そして、これら傑出した2作品に先行したのが第5番のポロネーズです。
リストはこの作品のことを次のように述べています。
「うつらうつらと目覚めがちの冬の一夜を過ごしたのちに、鋭い灰色の冷たい日射しに破られた夢の物語のような印象を与える。」
何とも分かったような分からないような表現ですが、最晩年のショパンはポロネーズという形式を使いながら、極めて個人的な独白であるような幻想曲へと作品の形式を昇華させていったことが分かります。

このような晩年の作品群と比べると、初期の4作品は真っ当なポロネーズです。とはいえ、今日では第1番とナンバーリングされている嬰ハ短調の作品でも、それはたんなる舞踏音楽の域を完全に抜け出しています。アレグロ・アパショナートを指定された序奏の凄まじさを聞くだけで、その事は簡単に納得がいくはずです。
それに対して、同じ作品番号が割り振られた第2番のポロネーズは対照的なほどの深い憂愁に彩られた作品に仕上がっています。その陰鬱な音楽は「シベリアで鎖につながれた悩めるポーランド人を描いたようだ」と言われ、「シベリア」とか「革命」というニックネームが付けられたほどです。
ここには、ポロネーズという形式がうちに秘めている二つの側面、ロシアの圧政に苦しめられたポーランドの憂愁と、それを打ち破ろうとする雄々しさがはっきりと刻印されています。
その事は、続く3番と4番のポロネーズにおいても同様の指摘ができます。ある人は、第3番ではポーランドの偉大さをあらわし、続く第4番ではポーランドの没落を表現していると述べています。
そう言う意味においても、この初期の4作品は、ポロネーズらしいポロネーズだと言えます。

ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ


「Malcuzynski」は「マウツジンスキ」と読むそうです。読み方さえ曖昧になるほどに、今ではほとんど忘れ去られた存在のピアニストですが、50年代から60年代にかけてはショパン弾きとしてそれなりのポジションを占めていたようです。それがどうして忘れ去られてしまったのかという興味もあって彼の一連の録音を聞いてみたのですが、正直なところ、その理由が全くもって分からないのです。

彼の録音を聞く前に、カペルの録音をまとめて聞いていました。カペルは若くして亡くなったこともあって、かなり忘却の淵に足を踏み込んではいるものの、知っている人は知ってるという存在で踏みとどまっています。それと比べれば、マウツジンスキの凋落ぶりは著しいものがあります。
ところが、この二人の録音を聞いてみれば、私の好みは明らかに「マウツジンスキ」です。

まず、彼の録音を聞いて真っ先に気に入ったのは、その響きの軽さです。
実に飄々と何の気負いもなくショパンのロマンを描き出していくピアノは実に魅力的です。それは、ともすれば鍵盤をぶっ叩くことに力を注ぎすぎているカペルやホロヴィッツのピアノとは対極に位置する世界です。そして、そう言う軽やかなショパンを聴いていると、カペルみたいな若手連中に対して「何もそんな青筋たててピアノを叩くモンじゃないよ。ショパンてぇのは、こんな風に弾くモンだよ」というマウツジンスキの呟きが聞こえてきそうな気になりました。

そして、彼のピアノでショパンを聴いていると、改めてショパンの音楽というのは基本的に「サロンの音楽」だったことに気づかされます。そう言う意味では、ソナタなんかよりはマズルカやワルツみたいな音楽の方がマウツジンスキにはあっているように思います。そして、もしも彼が終生このようなショパンを演奏していればもう少し彼の名前を多くの人の記憶にとどまったことでしょう。
これはあくまでも他人からの受け売りなので、自分の耳で確かめたことはにのですが、聞くところによれば60年代以降のマウツジンスキはさらに軽く淡泊なショパンになっていったそうです。50年代から60年代初めの頃のショパンが端麗な味わいだとすれば、その後は端麗が行き過ぎて「水くさく」なってしまったようなのです。そう言う意味では、60年前後に英EMIで録音された一連のショパン録音は彼の絶頂期を記録したものかもしれません。

埋もれさせるに惜しい録音をうまく拾いあげることができました。

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