ロッシーニ:ウィリアムテル序曲
ヴィクトル・デ・サバタ指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団 1948年録音
Rossini:ウィリアム・テル序曲
序曲だけがあまりにも有名になりました。
オペラそのものはめったに上演されないのに、その序曲だけが有名になると言うことがあります。小学校の音楽の時間には必ず聞かされたスッペの「軽騎兵序曲」などはその典型例ですが、このウィリアム・テル序曲の知名度もオペラ本体と比べると段違いです。
もっとも、こちらはオペラそのものの出来が悪いと言うよりは、あまりにも規模が大きすぎて上演される機会が少ないことがその原因となっています。現役盤のカタログをくってみても、この全曲盤はムーティによるワンセットだけみたいで、それも限定盤のようです。こうなると、このオペラの全貌を聞く機会はほとんど無いと言うことであり、結果として序曲とオペラ本体とのポピュラリティにますます差が出きると言うことになります。
この作品はスイス兵の行進を表すテーマがあまりにも有名で、テレビなどではその部分だけが使われる事が多いので、作品そのものも「あのテーマ」からはじまるように思われています。
それだけに、はじめてこの作品を聞いた人は、いったい何の曲がはじまったのか?と思うようです。
聞いてもらえば分かるように、この作品は4つの部分からなっています。「夜明けー嵐ー静けさースイス兵の行進」です。
冒頭の夜明けはウェーバーを連想させるような、まさにゲルマンの森の描写です。まさに「あのテーマ」とは正反対の音楽ですから、「一体何がはじまったんだ?」と思うのも無理はありません。しかし、最後のスイス兵の行進で聞くことができる弾むようなリズムと前進力にあふれる旋律はいかにもロッシーニらしい音楽となっています。
ユング君は、この序曲を聴くと、変な連想ではありますが、ショスタコーヴィッチの最後のシンフォニーとなった15番を思い出します。
この作品には、作曲家自身が幼いときに大きな影響を受けた音楽として二つのメロディが引用されています。一つがワーグナーの「ワルキューレ」に出てくる「運命の動機」で、もう一つがウィリアム・テル序曲の「あの有名なテーマ」です。
序曲の有名なテーマは第1楽章に都合5回も引用されていますが、このテーマがショスタコーヴィッチ自身が生まれてはじめて好きになった旋律だと言うことを息子のマキシムが語っています。幼いショスタコーヴィッチがこのウィリアムテル序曲の有名なテーマを聞いてはキャッキャと喜んでいる姿が浮かんで来るようなエピソードです。
そして、まさにこのような分かりやすさと親しみやすさこそがロッシーニの真骨頂だったことを考えると、ロッシーニを褒め讃えるのにこれほど素晴らしいエピソードもないように思います。
録音の少ないサバタ
サバタは、フルトヴェングラーやワルターよりも若く、67年に亡くなっているにもかかわらず、残された録音は極めて少ない指揮者です。
何故かというと、理由は今もってよく分からないそうですが、1953年春にスカラ座で指揮したのを最後に引退してしまったからです。その引退から彼は15年も生きたわけですから、心身が消耗したとは考えられません。
やはり、ナチス政権下での活躍が影響したのでしょうか。
よせられたコメント
2013-12-14:Joshua
- これはいいですよ!
冒頭のチェロが生々しい。そのあともずっといい!
吉田秀和は、サバタの録音は音が貧しい、って「世界の指揮者」で書いてるけど、この録音は、全然そんなことはない。
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