クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーベン:ピアノソナタ第23番 へ短調 作品57 「熱情」

(P)バックハウス 1958年録音





Beethoven:ピアノソナタ第23番 ヘ短調  「熱情」  作品57 「第1楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第23番 ヘ短調  「熱情」  作品57 「第2楽章」

Beethoven:ピアノソナタ第23番 ヘ短調  「熱情」  作品57 「第3楽章」


ベートーベン中期の大傑作

外面的には荒れ狂うようなパッションにあふれていますが、それを生み出しているのは寸分の隙もないほどに造形された構成です。
その意味では、ベートーベンの中期ソナタの最高傑作と言って間違いはないでしょう。

しかしこのパラドックスはピアニストに大変な困難を課します。
なぜならば、氷のような冷静沈着さを持って荒れ狂わねばならないのです。禁欲的なまでにその音楽的な構成を再現して見せないと作品はガタガタになります。かといって、それをきちんと仕上げるだけでは肝心のパッションがスポイルされてしまいます。

その困難さゆえに多くのピアニストがチャレンジし続けた作品だと言えます。ただし、冷静に狂うのは難しい!!

第1楽章
 アレグロ・アッサイ ヘ短調 8分の12拍子 ソナタ形式
第2楽章
 アンダンテ・コン・モート 変ニ長調 4分の2拍子 変奏曲形式
この変奏曲は限りなく美しい。激しい闘争はこの美の中に埋没していく!
第3楽章
 アレグロ・マ・ノン・トロッポ ヘ短調 4分の2拍子 ソナタ形式
あらゆる障害を蹴散らして驀進していくベートーベン。まさに、「This is the BEETHOVEN」

評価の分かれる演奏


随分と評価の割れるバックハウス二度目のソナタ全集です。
私自身も、以前にモノラルによる旧全集をアップしたときにこんな事を書いていました。

「面白いのが、音質的には劣るモノラル録音の方がステレオ録音よりも高く値段が設定されていることです。・・・こういう古い録音は最終的には需要と供給の関係で決まるようですから、多くの人が音質的には劣ることは分かっているのにモノラル録音を求めることをこの事実は示しています。
理由はいうまでもありません、演奏そのものが圧倒的にモノラル録音の方が優れているからです。」

この評価は、今も私のなかでは変わっていません。
ですから、このステレオ録音による新全集もアップしようかどうかいささか悩みました。(初期に録音したものはパブリックドメインの仲間入りをしはじめました。)
しかし、世間的には、今もってこのステレオ録音はベートーベン演奏の一つのスタンダードとして位置づけられているのですから、その評価は多くの聞き手にゆだねるべきだろうと思って、アップすることにしました。

私がこのステレオ録音に不満を感じるのは、モノラルの時代にはみなぎっていた「覇気」が、ここでは随分おとなしくなってしまっていることです。
もちろん、悪い演奏ではないと思います。
なかには、絶対的権威への反発からかこの演奏をぼろくそに貶す人がいますし、その事をもって己の見る目の高さを誇る向きもあります。しかし、そこまで言われるほどに「酷い演奏」ではないと思います。
しかし、ベートーベン演奏の絶対的権威とも言うべき演奏なのかと言われれば、それもまた首をかしげざるを得ません。

つまりは、数ある優れたベートーベン演奏の一つ、としてあるがままに受け入れればいいのではないかと思います。
確かに、この一連の演奏を聴いて随分とぞんざいな弾き方だと思う人もいるでしょう。逆に、私が「覇気」が乏しいと批判しても「淡々と流れ行く音楽のエネルギーの底に、何か静かな瞑想的な静けさを感じます。」という人もいるでしょう。
さらに言えば、「モノラルの録音なんか聞いていられるか、聞くならステレオでしょう!」という方もおられるでしょう。

ただ、やはりバックハウスほどの人でも年を取れば衰えるんだな、という全く当たり前のことを感じつつ、心静かに聞くことの出来る年寄りには相応しい音楽なのかもしれません。
私も、そう言う年になってしまいました。

よせられたコメント

2010-11-11:松本文樹


2012-10-01:オーソドックスな名演


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