クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ドビュッシー:ベルガマスク組曲

(P)アルベール・フェルベール 1955年6月24~25日録音



Debbussy:Suite bergamasque [1.Prelude]

Debbussy:Suite bergamasque [2.Menuet]

Debbussy:Suite bergamasque [3.Clair de lune]

Debbussy:Suite bergamasque [4.Passepied]


ドビュッシーのピアノ作品の中では最も有名な作品

アラベスクに続いてドビュッシーが着手した作品であり、その親しみやすい旋律から彼の作品の中では最もポピュラーな作品だと言えます。とりわけ、第3曲「月の光」はドビュッシーの名刺代わりと言ってもいい作品で、これ単独で演奏されることも多いです。

さて、このベルガマスクという曰くありげなネーミングですが、これはよく知られているようにローマ留学の時に立ち寄ったイタリアのベルガモ地方に由来しています。しかし、作品の内容とベルガモ地方の間には何の関係もないようで、その言葉のニュアンスから来る古風な宮廷音楽という雰囲気を表したかったようです。
実際、この時代のドビュッシーは古典的な舞曲や古い教会旋法などを使って、後期ロマン派が迷い込んだ袋小路からの脱出をはかっていました。これは、実に面白いことで、ラヴェルもドビュッシーもバロック期の古典音楽に傾倒していき、そこから新しい音楽を切り開くヒントを得ようとしていました。
しかし、そこから誰も気づかなかった響きを聞き取り、その響きを使って誰も思いつかなかったような世界を切り開いていったのはドビュッシーの方でした。同じように18世紀のフランス古典音楽に傾倒しながらも、ラヴェルがそこから得たものは古典的な明晰さと簡潔な形式美でした。
二人は同じものを見ながら、お互いに随分と異なる世界へと突き進んでいったわけです。
個人的に言えば、そう言うドビュッシーの響きの「世界」がどうしてもなじめないがゆえに、長く「敬して遠ざけ」てきました。それと比べれば、古典的な明晰さと簡潔さを持ち続けたラヴェルははるかに親しみやすい作曲家だったのです。
ただし、ここで聞くベルガマスク組曲は、その様な新しい世界に突き進んでいく手間にある作品であり、その当時のフランスのサロン音楽の雰囲気をただよわせています。その辺が専門家的に言えば物足りないのでしょうが、成熟したドビュッシーに苦手意識を持つユング君のような人にとっては聞きやすく親しみやすい音楽だと言えます。

1. 前奏曲(Prélude)
2. メヌエット(Menuet)
3. 月の光(Clair de Lune)
4. パスピエ(Passepied)

茫洋とした響きがクリアに表現されている演奏


「Albert Ferber」は「アルベール・フェルベール」と読むそうです。そんなことを紹介しなければいけないほどに、このピアニストは忘れ去られた存在になっています。

調べてみると、1919年にスイスのルツェルンに生まれ、マルグリット・ロンやヴァルター・ギーゼキングといった名匠に師事し、ラフマニノフの薫陶も受けたピアニスト・・・という紹介がされていました。
そして、ピアニストとして成功してからは活動の本拠をイギリスに据えるのですが、録音活動は「デュクレテ=トムソン」と言うフランスのローカルレーベルで行ったので、フランス風の「アルベール・フェルベール」が定着したようです。

彼はこの「デュクレテ=トムソン」というレーベルでかなり多くの録音活動を行い、特にこのドビュッシーの録音は高く評価されたようです。
しかし、ローカルレーベルの悲しさか、レーベルの消滅とともに彼の録音も忘れ去られてしまったようです。
ただし、中古LP市場ではかなりの高値で取引されているようですから、一部の好事家の間での評価は高かったようです。

そして、最近になって、漸くにしてCDによる復刻がなされ、誰もが簡単に聞けるようになってみると、なるほど、分かっている人には分かっていたんだと納得できる素晴らしい演奏でした。
そして、個人的な感想を言わせてもらえば、どうにもこうにも苦手だったドビュッシーのピアノ作品を、初めて面白く聞かせてもらえることができました。

私が苦手だったのは、あの茫洋としたドビュッシーの響きです。
何を言ってるんだ、それこそがドビュッシーの魅力なんだろう!と言われそうなのですが、まさにそれこそが「嫌い」だったのです。

しかし、このフェルベールのピアノによるドビュッシーには、そう言う茫洋とした雰囲気が希薄です。
おかしな言い方ですが、その茫洋とした響きがクリアに表現されているような気がするのです。ですから、ドビュッシーの音楽にいつも感じるとりとめのなさが姿を消して、どこかにとっかかりを持ちながら聞き続けることができるのです。

そう考えると、これは異端なドビュッシー演奏なのかも知れませんが、これを好きだという人がいて、とんでもない高値で中古LPを購入する人もいるのですから、これはこれで立派なドビュッシーなのでしょう。

なお、「デュクレテ=トムソン」というレーベルはかなりの優秀録音だったようで、50年代中頃のモノラル録音とは信じがたいほどのクリアな音質です。

よせられたコメント

2020-08-28:コタロー


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