ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)
Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [1.Allegro Ma Non Troppo (Apacibles Sentimientos Que Despierta La Contemplacion De Los Campos)]
Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [2.Andante Molto Moto (Escena Junto Al Arroyo)]
Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [3.Allegro (Animada Reunion De Campesinos) ]
Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [4.Allegro (La Tormenta, La Tempestad) ]
Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral" [5.Allegretto (Cancion Pastoril, Gratitud Y Reconocimiento Despues De La Tormenta)]
標題付きの交響曲
よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
この上もなく貴重な田舎オケの風合い
カイルベルトのブラームスの紹介が終わったので、次はベートーベンということになります。
カイルベルトはテレフンケンで1番から8番まで録音が残っています。残念ながら9番だけは彼の早すぎた死に追いつけなかったみたいです。オケは彼に最もなじみのあるバンベルク交響楽団・ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団・ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団の3つのオケです。
ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1956年録音
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音
ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1959年録音
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93:ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音
さて、ここで我ながら不思議に思ったのは、ブラームスに関しては完全に視野外だったのに対して、ベートーベンに関しては3番「エロイカ」だけがアップされていて、その後長く放置されてしまっているのです。ふつうはエロイカをアップすれば残りの交響曲もアップしてるだろうと思うのですが、・・・これはどうしたことだ?・・・と「エロイカ」のページを確認すると次のようにほざいていました。
前回アップしたブルックナーでは、作品そのものが煉瓦を積み重ねたような構造をしているので演奏そのものもゴツゴツしたものになったのですが、エロイカだとそこまで無骨にはなりません。でも、この「物わかりの良さ」がいささかもの足りず、出来れば、あのブル9のようなごっついエロイカを聞かせてほしかったなとも思います。
ただし、そのあたりがカイルベルトという人の限界だったのかもしれません。
持って回った言い方をしていますが、そのころの私にはこの「エロイカ」はいまひとつ気に入らなかったのでしょう。そう思って、試しに5番「運命」を聞いてみると、なるほど、そういうことかと「ほざいた理由」がなんとなくわかりました。
一言でいえば、カイルベルトの演奏にしては「エロイカ」も「運命」もはいささか「なで肩」だと思ったようなのです。
それゆえに、なんだかカイルベルトのベートーベンって今一つかなと思ってしまったようです。
そして、それ以後の交響曲を紹介するのが後回しになり、その後回しがいつの間にか放置という結果になっていたのでしょう。
そして、今回もう一度聞き返してみたのですが「エロイカ」や「運命」に関しては、その感想は基本的にはあまり変わりませんでした。しかし、まあこういうのもありかなとは思いました。
しかし、それ以外の交響曲に関してはそこまでの不満は感じませんでした。
カイルベルトといえば「武骨」という言葉が常に付きまとうのですが、私は意外と旋律ラインを大切にする人だという思いがあります。そして、その思いが「エロイカ」と「運命」では前に出すぎているような気がするのです。
しかし、それ以外の交響曲に関しては歌心と構成のバランスがうまく取れていて、勁くて伸びやかな音楽が魅力的です。
そう、まさに「強い」のではなく「勁い」のです。「勁い」とは単なる強度ではなくて、芯がしっかりして張りつめているさまをあらわします。つまりは、全体の構成はしっかりとしていながら、その中に豊かでありながらきりっとした歌心が満ちているのです。
そして何よりも聞くべきは、かつてのドイツのオケが持っていた伝統的な響きです。どっしりとした低声部に支えられた生成りの風合いは今では聞くことのできないものです。
昨今のオケは各声部のバランスを完璧に取った上で均等に鳴らすという神業のようなことを平然とやってのけます。結果として、オケの響きは「自然素材の風合い」ではなくて、「クリスタルな透明感」が支配的となります。もちろん、それがどれほど凄いことなのかはよくわかっているつもりです。それは「極上の響き」といってもいいと思っています。
しかし、7番のように、カラヤン統治下にあって未だドイツの田舎オケの風情を残したベートーベンを聞くと、「やっぱりいいなぁ」とほざいてしまうのです。
バンベルク交響楽団とハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団はベルリンフィルと比べれば不満な部分はあるのですが、それでも昔懐かしい田舎オケの風合いは今となってはこの上もなく貴重なものです。
まあ、とにかく1番から順にカイルベルトのベートーベンを聞いてもらいましょう。
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