クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調, Op.50(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50)

(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)



Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50


実に耳に入りやすい作品

ベートーベンにとってこの「ロマンス」と題されたオーケストラとヴァイオリンのための音楽は得意な位置を占めています。それは、彼がこのような協奏的な小品をほとんど書いていないからです。
また、作品50のヘ長調は、ベートーベンには珍しいほどに旋律重視の作品で、その意味でも特異なポジションを占めていると言えます。作品40のト長調の方はメロディよりは和声を軸とした構成感があるのでベートーベンらしい作品とも言えます。
しかし、世間の人は美しいメロディラインの方が好きなのであって、それはベートーベンの作品に対しても同じで、人気の点ではヘ長調の方に軍配が上がります。
おそらく、この冒頭のメロディはクラシック音楽などに全く興味のない人でも、一度や二度はどこかで耳にしたことがあるでしょう。

作品の構成は両方とも典型的なロンド形式(A-B-A-C-A-コーダ)で書かれているので、実に耳に入りやすい作品です。

妖しい色気を振りまくロマンス


ベートーベンのロマンスなんてもう聞き飽きたという人も少なくはないでしょう。不遜なモノ言いながら、私も少なからずそういう思いがなかったかといえば嘘になります。しかし、この間のフランチェスカッティつながりの中で、こういう作品も録音していたんだと思い聞いてみました。
そして、聞き終わった後の感想を問われれば、いささか度肝を抜かれた答えざるを得ません。
おそらく、これほどに妖しい色気を振りまくロマンスはほかにはないでしょう。しかし、ベートーベンの作品に「妖しい色気」がふさわしいのかといえばいささか疑問がないわけではないのでファースト・チョイスに選ぶにはためらいを感じます。しかし、「ベートーベンのロマンスなんてもう聞き飽きた」という人にはぜひとも一度は聞いてもらいたい録音です。

フランチェスカッティという人は協奏曲においては指揮者を選ぶようです。彼は、指揮者が自分をご本尊としてたてまつり、オケはそのご本尊を華やかに飾り立てる「荘厳」であることを要求します。
ちなみにこの「荘厳」は「しょうごん」と読んでください。「しょうごん」と読めばそれは「天蓋(てんがい)・瓔珞(ようらく)などで、仏像・仏堂を飾ること」という意味になります。
そして、そのバランスが最もよかったのはミトロプーロスだったようです。
ミトロプーロスはフランチェスカッティを十分にたてまつりながら、それをこの上もなく見事に、しかし出しゃばりすぎることもなく実にバランスよく引き立てていました。
逆になんとも相性が悪かったのはバーンスタインあたりだったようです。彼のような指揮者だと、「荘厳」が周りを覆い尽くしすぎて肝心のご本尊の姿がかすんでしまっています。

ということで、このロマンスなのですが、ジャン・モレルという指揮者はベートーベンにふさわしい「荘厳」を用意するにはいささか控えめすぎるかもしれませんが、フランチェスカッティという御本尊を奉る気持ちは半端じゃなかったようです。
ジャン・モレルはフランス生まれの指揮者で、1939年に渡米し、ニューヨーク・シティ・オペラの首席指揮者をつとめています。後にメトロポリタン歌劇場のフランス・オペラ担当の指揮者にもなっているので、基本的にはオペラ指揮者なのでしょう。そして、そののちにジュリアード音楽学校で後進の指導をする傍ら、同校のオーケストラの指揮者も務めたそうです。

そんな、彼にとってフランチェスカッティとの録音は大きな喜びだったのかもしれません。
彼はひたすらフランチェスカッティの魅力を引き出すことに全力を集中し、フランチェスカッティもまたそういうことを前提に己の色気をフルに発揮させています。

いやはや、探せばびっくりさせられるような録音はまだまだあるものです。
これからも頑張ってこういうのを発掘しなければいけませんね。

よせられたコメント

2024-04-09:Kazuo Tanaka


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-10-25]

ヴォーン・ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲(Vaughan Williams:Fantasia on a Theme_by Thomas Tallis)
マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on 1959)

[2026-10-23]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30(Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30)
(P)モーラ・リンパニー:アンソニー・コリンズ指揮、ロンドン新交響楽団(Moura Lympany:(Con)Anthony Collins New Symphony Orchestra of London Recorded on 1952)

[2026-10-21]

リリ・ブーランジェ:古い仏教の祈り(Boulanger:Vieille Priere Bouddhique)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (T)レイモンド・アマデ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Alain Fauqueur Recorded on 1958)

[2026-10-19]

エマヌエル・ポンセ:イ短調組曲(Poncw:Suite In A minor)
(Gt)アンドレス・セゴビア:1930年録音(Andres Segovia:Recorded on 1930)

[2026-10-17]

ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

[2026-10-15]

メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)

[2026-10-13]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)

[2026-10-11]

ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)

[2026-10-09]

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)

[2026-10-07]

J.S.バッハ:カンタータ第51番「全地よ、神を向かえて歓呼せよ」,BWV 51(J.S.Bach:Cantata: "Jauchzet Gott in Allen Landen", BWV 51)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ペーター・ゲルホルン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年10月6日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(cpn)Peter Gellhorn Philharmonia Orchestra Recorded on October 6, 1950)

?>