クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ガーシュイン:パリのアメリカ人

スタンリー・ブラック指揮 ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団 1966年発行





Gershwin:American In Paris


管弦楽化:ジョージ・ガーシュイン!!

作曲家としての名声を確立したあともガーシュインは自分に専門的知識が乏しいことに劣等感も感じていました。そのためある時、ガーシュインは意を決してフランスに渡りラヴェルの門をたたきます。しかし、ガーシュインの才能を高く評価していたラヴェルは、「君はすでに一流のガーシュインなのだから、何も二流のラヴェルになる必要はない」といって励ましたのは有名なエピソードです。
そんなラヴェルの励ましもあったためか、ガーシュインは自分の力だけでオーケストラ曲の作曲に取りかかります。
ご存じのように、この作品の前に、すでに彼は「ラプソディ・イン・ブルー」を世に送り出しているのですが、オーケストレーションはグローフェが行っています。ですから、この「パリのアメリカ人」が完成したときはスコアに「作曲および管弦楽化:ジョージ・ガーシュイン」と書き込んでいたそうです。

音楽の方は聞いてみればすぐに分かるように、この作品はガーシュインなりのアメリカとヨーロッパの融合だったようです。
音楽の素材は彼の血肉とも言うべきジャズやブルースを使いながら、それらの料理法はヨーロッパの伝統的な和声法で仕上げてようとしたようです。
ですから、彼はこの作品に「パリ見物に来たアメリカ人の情景と感情」と書き込みながら、標題音楽ではないと説明していたそうです。そのあたりにも、彼のなかに巣くっていた悲しいまでの劣等感がかいま見られるようですが、音楽の方はそんな彼の思いとは関係なく20世紀を代表する「交響詩」といえる素晴らしさを持っています。


上品なだけではつまらない


1927年にガーシュインがピアノのソロを担当した録音があります。バックは ポール・ホワイントマンが指揮したポール・ホワイトマン楽団です。この楽団はいわゆるジャズのビッグ・バンドでした。
その録音を初めて聞いた時には仰け反ってしまいました。
あまりのアクの強さに驚かされ、同時に作曲者がイメージした「ラプソディー・イン・ブルー」がこんなものなら、いわゆるクラシック音楽として演奏される大部分の「ラプソディー・イン・ブルー」はあまりにもお行儀がよすぎるのではないかという思いがしたものです。

確かに、クラシック音楽としてガーシュインの音楽をとららえてみれば、バーンスタインなどの演奏がスタンダードの一つとなるでしょうし、それはそれで魅力的な音楽であることは否定しません。
しかし、そう言う演奏ばかりを聞いていると、時にはあのガーシュイン自身がピアノを演奏した録音のように、もっと自由で、もっと突き抜けたような演奏も聞いてみたくなります。

そんな時に出会ったのがこの一枚でした。
A面に「ラプソディー・イン・ブルー」、B面に「パリのアメリカ人」がカップリングされていて、演奏しているにはスタンリー・ブラック指揮のロンドン・フェスティヴァル管弦楽団です。

両方ともに、最初の音が出たとたんに仰け反ってしまいます。
そして、こういう演奏を聞きたかったんだと叫びたくなります。ただし間違ってもスタンダードにはなりません。

これは、そう言うクラシック音楽としての枠の中におさまったガーシュインを散々聞いてみた人にとって、思わず拍手をしたくなる演奏なのです。
そして、個人的には全く未知だったスタンリー・ブラックという指揮者とロンドン・フェスティヴァル管弦楽団という存在をネットで調べてみて、何故に彼らがこのような演奏が出来たのかが分かりました。

スタンリー・ブラックは基本的に映画音楽の作曲家であり演奏家でした。
そして、ロンドン・フェスティヴァル管弦楽団という、いかにも妖しげな名前のオケはいわゆる「覆面オケ」ではなくて、映画音楽を演奏し、録音することを本業とした団体でした。

一般的に言えば、クラシック音楽というものは聞き手に対してある程度の「辛抱」を求めることが許される世界です。最初は多少退屈でも、最後までしっかりと聞いてくれれば感動させます、と言うわけです。
しかし、映画音楽の世界ではそんな「辛抱」を聞き手に求めるなどと言うことはあり得ません。

そして、この録音はそう言うクラシック音楽が持つある種の「甘え」みたいなものを一切かなぐり捨てた上に成り立つ演奏です。
買い込んだ中古レコードには「Phase 4 Stereo」という文字が麗々しく印刷されています。
Decca自慢の録音と言うことなのでしょうが、確かに音は悪くはありませんし、その事がこういう演奏には大きな役割をはたしています。

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