レハール:喜歌劇「ジプシーの恋」序曲
ハンスゲオルク・オットー指揮 ドイツ劇場管弦楽団 1966年発行
Lehar:Zigeunerliebe: Overture
ミュージカル音楽の礎
レハールは20世紀に活躍したもっとも有名なオペレッタ作曲家で、特にアメリカかで評判をとった事の意義は大きく、それが現在のアメリカのミュージカル音楽の礎になったと言われています。
喜歌劇「ジプシーの恋」は9世紀初めのハンガリーとルーマニアを舞台に、大地主ドラゴティンの娘ゾリカがジプシーのヴァイオリン弾きヨッシィの自由な生き方にひかれていく物語です。しかし最後はジプシーの仲間に入って暮らしはじめるもののその生活には到底馴染めず、最後は愛する
ヨッシィから「ジプシーには一生貞操を守る者などいない!ジプシーのありのままを受け入れろ」と突き放され、一人残されたゾリカは自分の愚かさに聖壇の前で泣き崩れて幕が閉じられます。
序曲はレハールらしくチャルダッシュを中心にワルツを挟んだ20世紀初頭らしい新しさをもった音楽になっています。
音楽をすることの楽しさが溢れている
オペレッタというのは一般的には「喜歌劇」と訳されます。しかし、その中味は喜劇だけではなく、ラヴロマンスや風刺劇、さらには涙をさそう悲劇というものもあります。ですから、本来は「小さな歌劇」と訳した方が妥当なのかもしれません、
しかし、オペラとオペレッタの一番の違いは、オペラは貴族や裕福な市民層によって支えられていたのに対して、オペレッタは一般庶民によって支えられていたという点です。ですから、オペレッタには小難しい約束事や、それくらいは知っていて当然だろうというような素養などが一切求められなません。
ですから、お高くとまった教養よりはユーモアやウィットに富んだ洒落て楽しい舞台であることが求められました。
それ故に一般的にはオペレッタはオペラよりも一段低いものと見なされ、私がよくヨーロッパを訪れていた1990年代頃までは、例えばウィーンの国立歌劇場などではヨハン・シュトラウスの「こうもり」だけを例外として、オペレッタは一切上演しないという不文律がありました。ただし、今はどうなっているのかは承知していません。
さらに言えば、オペレッタのアリアを録音したシュヴァルツコップをマリア・カラスが批判したのも有名な話です。カラスにしてみれば、いやしくも、歌劇場の舞台に立つプリマがオペレッタのアリアを歌うなどと言う行為は論外だったのでしょう。
しかし、音楽なんてものは精神性がどうのこうのと言ったところで、聞いて楽しくなければ客は集まりません。ですから、ヨーロッパの歌劇場の全ては国や行政からの支援なしでは成り立たない構造になっているのに対して、各地方にある小さなオペレッタの劇場はそういう支援なしに自前で運営しているところも少なくありませんでした。
ただし、これも今はどうなっているのかは知りません。
しかし、かつてはそう言うオペレッタの歌劇場は数多くあったことは事実であり、それは、多くの一般庶民はそう言う楽しくてお洒落で明るい音楽を聞きたかったと言うことです。
さすがに、歌手とは違ってオーケストラの場合は名のあるコンサート・オーケストラであっても、なんの躊躇いもなくオペレッタの序曲などは演奏しますし、録音もします。
しかし、こういう録音を聞くと、そう言う上品な演奏とは違うので、きっとヨーロッパの地方の劇場で日々演奏されている音楽はこういう感じなんだろうなと納得させられます。とにかく、音楽をする事が楽しくて楽しくて仕方がないという雰囲気がひしひしと伝わってきます。
おそらく、指揮者も小難しいことは言わないのでしょう。みんなが一緒になって音楽を楽しんでいるという雰囲気がたまりません。
もちろん、ウィーンフィルやベルリンフィルのようなエリート・オーケストラによる録音と演奏等はさすがと思わせる輝きがあることは否定できないのですが、音を楽しむ「音楽」という点ではこういう録音も侮れません。
なお、指揮者に関してはほとんど知らない人たちです。
それでも、フランツ・アンドレはベルギーを代表する指揮者で、1951年から1964年までエリザベート王妃国際音楽コンクールの伴奏指揮という骨の折れる仕事をつとめた指揮者でした。
アルトゥール・ローターは世界初のステレオ録音であるギーゼキングとの「皇帝」の伴奏指揮者として知られているのですが、戦後はかなり不遇でB級指揮者扱いのようでした。
ハンスゲオルク・オットーに至ってはほとんど情報がありません。
しかし、どの演奏も音楽をすることの楽しさが溢れています。
ヨーロッパ音楽界の底辺の厚みを思い知らされる一枚です。
よせられたコメント 2022-03-02:コタロー レハールというと、小学校の音楽鑑賞の授業で彼の「金と銀」を聴いたのが印象に残っています。というわけで、ある種の懐かしさを覚えます。
この曲はジプシー情緒が満点で、楽しく聴くことができました。
指揮者とドイツ劇場管弦楽団 (怪しげなオケですが、正体は何だったのしょうね)も頑張って演奏をしていますね。
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