シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43
パウル・クレツキ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年6月15,16日録音
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [1.Allegretto]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [2.Tempo Andante, Ma Rubato]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [3.Vivacissimo - 4.Finale (Allegro Moderato]
シベリウスの田園交響曲
シベリウスの作品の中ではフィンランディアと並んでもっとも有名な作品です。そして、シベリウスの田園交響曲と呼ばれることもあります。
もちろん、ベートーベンの第6番を念頭に置いた比喩ですが、あちらがウィーン郊外の伸びやかな田園風景だとすれば、こちらは疑いもなく森と湖に囲まれたフィンランドの田園風景です。
さらに、この作品にはフィンランドの解放賛歌としての側面もあります。
重々しい第2楽章と荒々しい第3楽章を受けた最終楽章が壮麗なフィナーレで結ばれるところが、ロシアの圧政に苦しむフィンランド民衆の解放への思いを代弁しているというもので、この解釈はシベリウスの権威と見なされていたカヤヌスが言い出したものだけに広く受け入れられました。
もっとも、シベリウス本人はその様な解釈を否定していたようです。
言うまでもないことですが、この作品の暗から明へというスタイルはベートーベン以降綿々と受け継がれてきた古典的な交響曲の常套手段ですから、シベリウスは自分の作品をフィンランドの解放というような時事的な際物としてではなく、その様な交響曲の系譜に連なるものとして受け取って欲しかったのかもしれません。
しかし、芸術というものは、それが一度生み出されて人々の中に投げ込まれれば、作曲家の思いから離れて人々が求めるような受け入れ方をされることを拒むことはできません。シベリウスの思いがどこにあろうと、カヤヌスを初めとしたフィンランドの人々がこの作品に自らの独立への思いを代弁するものとしてとらえたとしても、それを否定することはできないと思います。
この作品は第1番の初演が大成功で終わるとすぐに着手されたようですが、本格的取り組まれたのはアクセル・カルペラン男爵の尽力で実現したイタリア旅行においてでした。
この作品の中に横溢している牧歌的で伸びやかな雰囲気は、明らかにイタリアの雰囲気が色濃く反映しています。さらに、彼がイタリア滞在中にふれたこの国の文化や歴史もこの作品に多くのインスピレーションを与えたようです。
よく言われるのは第2楽章の第1主題で、ここにはドンファン伝説が影響を与えていると言われています。
しかし、結局はイタリア滞在中にこの作品を完成させることができなかったシベリウスは、フィンランドに帰国したあとも精力的に作曲活動を続けて、イタリア旅行の年となった1901年の末に完成させます。
一度聞けば誰でも分かるように、この作品は極めて少ない要素で作られています。そのため、全体として非常に見通しのよいすっきりとした音楽になっているのですが、それが逆にいささか食い足りなさも感じる原因となっているようです。
その昔、この作品を初めて聞いた私の友人は最終楽章を評して「何だかハリウッドの映画音楽みたい」とのたまいました。先入観のない素人の意見は意外と鋭いものです。
正直言うと、若い頃はこの作品はとても大好きでよく聴いたものですが、最近はすっかりご無沙汰していました。
やはり、食い足りないんですね。皆さんはいかがなものでしょうか。
大らかで幅の広い音楽
パウル・クレツキと言う指揮者は視野に入っていなかったわけではありません。しかし、気がつけば、彼の録音は協奏曲の伴奏だけしかアップしていないことに気づきました。ですから、コンサート指揮者としての力量を推し量れるような録音は全くアップしていないと言うことになります。
そう言えば、数年前にクレツキのボックス盤が発売された記憶があるのですが結局はスルーしてしまいました。残念ながら今はもう廃盤となっているようですが、結局はそれだけ興味が持てなかったと言うことなのでしょう。
思い出してみれば、その背景にはクレツキというのはどこか乾いた響きの音楽をやる人という先入観があったように思います。ですから、中古レコード屋でこの一枚に巡り会ったときには「一度聞いてみるか」という感じで購入した次第です。(まあ、一枚300円でしたが・・・)
ところが買ってくると盤質は「極めて良好」と記されていたにもかかわらず、第1楽章の冒頭4分間ほどが傷がついていました。しかし、それ以外の部分はそこそこの状態だったので、その4分間ほどだけは最低限のノイズ・リダクションをかけて誤魔化してみました。
さて、問題は演奏の方なのですが、これは「乾いた響きの音楽」という先入観がいったいどこから私の中に入り込んできたのだろうかと訝しく思うほどに大らかで幅の広い音楽に仕上がっていました。
とりわけ、第2楽章をじっくりと腰を据えて深い情緒で歌い上げていくのは非常に気に入りました。この作品の第2楽章の演奏としてはこれが一番好きかもしれません。
そう言えば、このクレツキという人はもとは作曲家だったのですが、戦争中に両親と姉妹がナチスによって皆殺しにされ、そのショックで作曲活動が出来なくなるという悲劇を味わっています。
作曲家としてはフルトヴェングラーやトスカニーニからも高く評価されていて、とりわけフルトヴェングラーとは深い親交があったそうなので、実に悲劇的なことと言わざるを得ません。
そして、作曲活動が出来なくなったのを切っ掛けに指揮活動に専念することになるのですが、やはり根が作曲家だけに作品をしっかりと分析して明晰に表現するという思いこみがあったのかもしれません。
もっとも、恥ずかしながら彼のまともな録音を聞いたのはこれが初めてなので、もしかしたらこのシベリウスが例外的な演奏なのかもしれません。
そう言えば、アンチェルもまたクレツキと同じような悲劇を味わうのですが、このシベリウスを聴く限りでは音楽の方向性はクレツキのほうがはるかに穏やかです。
その背景には自らも収容所に入れられながらも、音楽の能力故に生き残ったというアンチェルの体験は他人には推し量れないほどの重みがあったのでしょう。
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