ワーグナー:管弦楽曲集
ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1957年4月11日録音
Wagner:楽劇「ワルキューレ」より「魔の炎の音楽」
Wagner:楽劇「神々の黄昏」よりジークフリートのラインへの旅
Wagner:歌劇「タンホイザー」より序曲とヴェーヌスベルクの音楽
いつ頃からの習慣なのでしょうか?
*ワーグナー:歌劇「タンホイザー」より序曲とヴェーヌスベルクの音楽
*ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」より「魔の炎の音楽」
*ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」よりジークフリートのラインへの旅
ワーグナーの管弦楽曲集というCDが巷にあふれていますが、そんな作品を書いた覚えはワーグナーにはなかったでしょう。もちろんオペラの序曲だけを抜粋してコンサートピースにすることはよくある話ですが、ワーグナーの場合はオペラの中に埋め込まれているおいしそうな部分を指揮者が適当に編曲した「管弦楽曲」があふれています。
原典尊重で楽譜のちょっとした改変にもヒステリックに反応する人も、こういう大胆な改変にはいたって寛容です。中にはオペラのハイライト版みたいなキャッチコピーがついているCDもあったりするのですが、日頃は「ハイライト版なんか聞く暇があるなら全曲を聴いてほしい」と言っている評論家先生が、そう言う管弦楽曲集をユニークな企画と言って誉めているのを見て実に不思議な思いになったりまします。
閑話休題。
でも、ワーグナーの作品をこのように「管弦楽曲」としてコンサート用の作品に編曲して提供するというのはいつ頃から始まったのでしょうか?調べてみたのですがはっきりとした事は分かりませんでした。
個人的にはアンコールピースとして聞かされるのは大歓迎ですが、こればっかりでプログラムを組まれるとちょっとウンザリしてしまいます。
吉田秀和氏がどこかでセル&クリーブランドのコンサートでその様なプログラムにぶち当たって「威勢がいいだけで中途半端な作品ばかり聴かされた」とぼやき、さらには「おそらくそう言うタイトルで録音する企画でもあるのだろう」と勘ぐりを入れて、「そう言う録音の下準備につきあわされた聴衆こそいい面の皮」だと怒りをぶちまけていました。
おそらくユング君も同じようなプログラムに出会えばきっと同じ事を思ったでしょう。まあ、基本的にはそう言う作品だと言うことです。
剛毅なワーグナー
こういうワーグナーは願い下げという人も多いでしょうね。とにかく音楽が「うねる」と言うことが全くなくって、とことん直球の一本勝負です。ただし、その直球たるや阪神の藤川も真っ青というほどのキレの良さなので、おそらくは録音の良さもかなりの役割果たしているのでしょうが、本当に剛毅でかつクリアなワーグナーに仕上がっています。
例えば、隣接権の関係で今回は紹介できなかったトリスタンとイゾルデの前奏曲なんかは、愛の妙薬を口実に不倫を合理化する軟弱な男女の物語・・・等と軽口を叩くのが躊躇われるほどの真摯な音楽に仕上がっています。まさに、「命をかける」という言葉が比喩としてではなく、言葉そのままの重みを持った「愛」が描かれています。それと似たことが「ブリュンヒルデの自己犠牲」にもいえます・・・って、そちらもまだ隣接権が切れてない(^^;そして、残念ながら、今回紹介した3曲はそれらと比べるといささか落ちるかもしれませんが、そう言うライン上で考えれば、それはそれでなかなかに立派なものです。ただ、タンホイザーの序曲とヴェーヌスベルクの音楽なんかだと、後半のヴェーヌスベルクの音楽にはもう少し「妖しさ」みたいなものがほしいかな、と思ってしまったりします。でも、低音楽器をしっかりとならしながらも響きが混濁することなく驀進していく様はそれはそれで十分に聴き応えのある音楽であることは間違いありません。
よせられたコメント
2015-02-26:ヨシ様
- ミュンシュのワーグナー。とても異質な感じもしますが、それはミュンシュがオペラを振らなかったから、尚更そう感じるのだと思います。
ところで、ミュンシュはゲヴァントハウス管のコンサートマスター出身らしいですね。余談ですが、当時のゲヴァントハウス管は指揮がワルター、ヴィオラにコンヴィチュニー、オーボエにケンペが居たらしいです。今思えば凄いメンバーですね。
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