ショパン:前奏曲集
アラウ:1950年録音
Chopin:前奏曲集 第1番 ハ長調
Chopin:前奏曲集 第2番 イ短調
Chopin:前奏曲集 第3番 ト長調
Chopin:前奏曲集 第4番 ホ短調
Chopin:前奏曲集 第5番 ニ長調
Chopin:前奏曲集 第6番 ロ短調
Chopin:前奏曲集 第7番 イ長調
Chopin:前奏曲集 第8番 嬰ヘ短調
Chopin:前奏曲集 第9番 ホ長調
Chopin:前奏曲集 第10番 嬰ハ短調
Chopin:前奏曲集 第11番 ロ長調
Chopin:前奏曲集 第12番 嬰ト短調
Chopin:前奏曲集 第13番 嬰ヘ長調
Chopin:前奏曲集 第14番 変ホ短調
Chopin:前奏曲集 第15番 変ニ長調
Chopin:前奏曲集 第16番 変ロ短調
Chopin:前奏曲集 第17番 変イ長調
Chopin:前奏曲集 第18番 ヘ短調
Chopin:前奏曲集 第19番 変ホ長調
Chopin:前奏曲集 第20番 ハ短調
Chopin:前奏曲集 第21番 変ロ長調
Chopin:前奏曲集 第22番 ト短調
Chopin:前奏曲集 第23番 ヘ長調
Chopin:前奏曲集 第24番 ニ短調
長さも性格も、そして形式もバラバラな24曲の集合体

長さも性格も、そして形式もバラバラな24曲の集合体、それがこの前奏曲集です。これをもって、「あらゆる制作の課程におかれている絵画でいっぱいの画家の画嚢を想起せずにはおれない」と言う評価が出てきます。
しかし今日では、その様な様々な作品群が一つの調和を保つことによって一つの作品として完成されたものとして見る見方が一般的になっています。つまり、この作品は一つ一つがバラバラに演奏されるのではなく、全24曲をひとまとめとして演奏されるべきだと言うことになります。
そして驚くべきは、それら全ての作品が一つの楽想を中心として構成されていながら、そのあとの展開が自由奔放であり、どれ一つをとっても定型的なものがないことです、まさに作曲家が自らの感興に任せて思うがままに筆を走らせているようです。にもかかわらず、どれもが行き過ぎることもなく、足らざることもなく、高いレベルで完成しているところにショパンの天才がかいまみられます。
まさに音楽史において天才と呼べるのはモーツァルトとショパンただ二人です。
通好みの渋いピアニストでした。
クラウディオ・アラウと言えば、疑いもなく20世紀を代表するビッグ・ネームの一人でしょう。しかし、ビッグ・ネームと言っても、例えばホロヴィッツのようなスター演奏家とは随分とたたずまいが異なり、どちらかと言えば「通好み」の渋い演奏家というのが一般的な認識です。また、80歳を過ぎるまで衰えというものを感じさせないほどに世界の第一線で精力的に活躍したピアニストでもあります。
しかし、死して15年も経過(19991年に亡くなっている)してしまうと次第に忘却の淵に沈みそうになっているのはそう言う「地味さ」の故かもしれません。
例えば、この若き時代のショパンの前奏曲集を聞いてみると、いわゆる「華やかさ」みたいなものを前面に押し出すタイプでないことはすぐに分かります。とにかく、大袈裟な身振り手振りでいたずらに感傷的になることをさけ、それよりは、バランスを崩さないように留意しているようです。そのため、いささかゴツゴツした感じのするショパンなっているようで、いささかお気に召さない方もおられることと思います。
ただ、こういう演奏は、最初はあまり面白くないと思っても、聞きすすめていくうちにジワジワと感興が盛り上がっていくと言うことも事実で、その辺が「通好み」と言われるゆえんかもしれません。
<追記:2011年4月9日>
再生システムに「Voyage MPD」を据えてから、今まではそれほどでもないと思っていた録音が、実は凄かったという体験を何度かしています。ただし、この逆も結構多くて、録音だけで演奏を評価することの難しさを思い知らされます。
今回は、アラウが56年に録音したエチュードをアップするにあたって、少し気になったのでこの「前奏曲集」を聞き直してみました。
結果は、やはり危惧(?)したとおりで、「Voyage MPD」を使って聞いた前奏曲集は、とてもその時代のものとは信じがたいほどの良好な音質でアラウの凄さが収録されていることに気づかれました。
そして、その結果として、以前はこの50年録音の前奏曲集に収録された大切な部分をものの見事に聞き落としていた事を知らされました。
ですから、この「全曲集」の録音に対して「いわゆる華やかさみたいなものを前面に押し出すタイプでないことはすぐに分かります」などと書いたことは全面的に訂正し直さないといけないことに気づかされました。
40代の後半という、まさに気力、体力がみなぎった全盛期の演奏であり、その演奏は「「感覚的な美や効果に満ちあふれた」、まさに「口に入れたとたんに至福の世界が広がる」素晴らしい華やかさにあふれていました。
つまり、50年に録音された「前奏曲集」も56年に録音された「エチュード」も、ともに同じベクトルを持った演奏だったのです。
その輝かしい響きでもって、全ての音が何の曖昧さもなく鳴り響く様はまさにピアノによる音楽を聞くときの感覚的な楽しみに満ちあふれています。そして、驚くべきは、そのような一音たりとも曖昧にしない明晰さを保持しながら、音楽は決して固くなることはなく、しなやか歌心に満ちていて、その背景からショパンという男の素顔が浮かび上がってくることです。
また、そのテクニックの素晴らしさもホロヴィッツと比べたって何の遜色もないものです。
晩年の「枯れた演奏」だけでアラウを知っている人には、是非とも一度は聞いてほしい録音です。(ただし、MP3を通して、その素晴らしさがどこまで伝わるかには懸念がありますが・・・。)
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