モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調 K.319
ヨッフム指揮 バイエルン放送交響楽団 1954年11月29〜30日録音
Mozart:交響曲第33番 変ロ長調 K.319 「第1楽章」
Mozart:交響曲第33番 変ロ長調 K.319 「第2楽章」
Mozart:交響曲第33番 変ロ長調 K.319 「第3楽章」
Mozart:交響曲第33番 変ロ長調 K.319 「第4楽章」
モーツァルトの田園交響曲
モーツァルトの最後のザルツブルグ時代に残した3曲のシンフォニーの一つです。
この3曲は似たような構成を持ちながら、性格は全く異なります。
それがモーツァルトのモーツァルトらしいところなのですが、32番の劇的な性格、34番の壮麗な音楽とくらべると一番こぢんまりした印象を与えるのがこの33番のシンフォニーです。編成もトランペットとティンパニーが省かれているためそう言う印象がより強くなります。
このシンフォニーの何よりもの特徴はその牧歌的な明るさです。有名なモーツァルト研究家は「奴隷的なザルツブルグでの拘束の中においても、モーツァルトが明るく満ち足りた時間を過ごした事を示す」とも書いています。まさに、モーツァルトの田園交響曲と言っていい作品です。
まるでベートーベンのシンフォニーのように響きます
ヨッフムという人は最晩年のブルックナー演奏における神々しいまでのお姿が目に(耳に?)焼き付いています。そこではテンポを大きく動かして入念な表情づけも行って実に雄大な音楽を作り上げていました。しかし、若い頃のヨッフムはその様なロマティクな演奏は「演奏の姿」としては「いけないもの」だと述べて、「新即物主義」の忠実な実践者のように見える演奏を展開していました。彼がいつ、どこで、どの様にして「心変わり」したのは不明ですが、この若い頃のモーツァルトを聴くと最晩年のヨッフムとは全くベクトルの異なる演奏になっています。
そう言えば、あのワルターでさえ、現役時代のニューヨークフィルとの演奏を聴くと意外なほどに造形がしっかりとしていて直線的だったことを思い出します。その事を思えば、時代が与える影響とは大きいものだと感心させられます。(もっともワルターの方は、最晩年のコロンビア交響楽団とのステレオ録音になるとその様なきちんとした造形は後退して、いわゆる「ワルターらしい」雰囲気で描き出したモーツァルト演奏に舞い戻っています)
ただ、この両者は「音の響き」という点では共通点があることに気づかされます。それは、同時代のラインスドルフやライナーのようにアメリカを活動の本拠にした指揮者と比べると明らかに低声部の響きが分厚いことです。とりわけ、ワルターのどっしりとした響きは印象的ですが、ヨッフムもまたかなり重心の低い音を響かせています。こんなあたりからも、魂がアメリにあるのかヨーロッパにあるかが判別できるのかもしれません。(ワルターは体はアメリカにあっても魂は常にヨーロッパに存在し続けた人でした)このヨッフムの若き日の演奏は、旋律よりは明らかにリズムを重視したもので、現役時代のワルターの演奏をさらにもう一回り筋肉質にして、さらに一回りパワフルに鳴らしたような演奏です。そして、低声部の響きが実に分厚いのでまるでベートーベンのシンフォニーのように響きます。
こんなモーツァルトを今の若い方々がお聞きになればどの様な感想を持たれるのでしょうか?面白いと思うのでしょうか、それともご免被りたいと思うのでしょうか?ちょっと聞いてみたくなる気をおこさせるほど、現在という時代から見るとある意味ではユニークな演奏だと言えます。
よせられたコメント 2023-06-11:joshua ヨッフムは、わたしが本番指揮を聴けた数少ない指揮者のひとりです。しかも、レコ芸でしたか、インタビューを受けた半年後、84年の人生を閉じました。見るからに好々爺、人格者然とした風貌、長身痩躯。朝比奈隆(ヨッフムの6つ下カラヤンと同い年)、アーベントロート(ヨッフムの9つ上)を思わせます。
芸風は、ユング氏がご説明のように、玉虫色とまでは行かずとも、一筋縄でいかないところがあります。
そのヨッフムが最後の来日で、取り上げたMozartが、この33番だったと思います。1940年代のアラフォーの頃にもベルリンフィルを振って入れています。十八番だったんでしょうね。第2楽章が落ち着いたテンポで、1音1音大事に響かせる、なんとも綺麗な演奏です。プラハが意外と少なく、コンセルトヘボウとだけだったように思います。そのプラハは、シューリヒトのような劇的緊張感がなく、普通にきっちりとした演奏です。
一方、壮年期にコンセルトヘボウ、晩年ボストンやバンベルクと「ジュピター」を入れてましたね。バイエルンや最後の来日では無かったですが、これも第2楽章が、33番のように独特の美しさ。他の指揮ではあまり思わなかったことです。26才で聴いたヨッフムから、45年余り経ち、この7月にはレコ芸が廃刊になります。
自分はといえば、あいも変わらず貧乏暇なしの日々。落穂拾いのように、このサイトで思い出を1つ1つ確認していこうと思っています。
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