クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ブラームス:悲劇的序曲作品81

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1966年10月28日録音





Brahms:Tragic Overture, Op.81


ブラームスが残した二つの演奏会用序曲

ブラームスは1876年にケンブリッジ大学から名誉音楽博士号の称号を授与したいとの申し出を受けます。ところが、そのためには大嫌いだった船に乗ってイギリスに渡り、さらには気の進まない堅苦しい儀式にも出席することが条件だったために断ってしまいます。

しかし、このような名誉は嫌いではなかった人ですから、3年後の1789年にドイツ国内のブレスラウ大学から同様の申し出があったときには、すぐに手紙を出して博士号をもらうための条件を問い合わせています。
そして、その条件がお礼として何かの作品を作ってくれればいいと言うもので、イギリスに渡ったり儀式に出席する必要などがなかったためにこの申し入れを受け入れます。
ただし、作品の方はすぐには完成せず、翌年の夏に避暑地であったバード・イシュルという町で完成させました。
それが、有名な「大学祝典序曲」で、ユング君のような世代だとラジオの「大学受験講座」と分かちがたく結びつけられている音楽です。(・_・)☆ヾ(^^ )なんでやねん!!

ブラームスは当初は祝典用の荘厳な音楽を考えていたようですが、結局は当時流行していた学生歌をつなぎ合わせたような作品に仕上げました。
使われた学生歌は以下の通りだそうです。(人の受け売り^^;)

  1. 我等は立派な校舎を建てた

  2. 国の親

  3. 新入生の歌(元歌は「狐狩りの歌」)
    NHKラジオ「大学受験講座」の前奏音楽として特に有名なメロディです。

  4. だから愉快にやろうじゃないか


さて、ブラームスに限らず偉大な作曲家というものは、同じ時期に全く性格的に異なる作品を書く傾向があります。今回も、大学祝典序曲と時期を接して、全く雰囲気の違う演奏会用の序曲を書いています。
それが、二つ目の「悲劇的序曲」です。

こちらの方は、大学祝典序曲とは異なって作曲の動機がはっきりとは知られていません。
ブラームスの言葉によると、楽しくて明るい大学祝典序曲の後に悲劇的な音楽を書きたくなったとのことなのですが、どこまで本気なのかは分かりません。

ただ、ある作品を書いているときにわき上がってきた楽想やアイデアがその作品の中に盛り込むことができないときに、全く異なる作品としてそれらを活用すると言うことはよくあったようです。
そうだとすると、この二つの序曲は二卵性の双生児といえるかもしれません。

「古典主義」に軸足を置くか「ロマン主義」に軸足を置くか


ブラームスという作曲家は「古典主義」という衣をまとった「ロマン主義者」だと言えるでしょうか。いや、「古典主義」に関しては「衣」と言うよりは「鎧」と言った方がいいのかもしれません。それほどに、その外観は強固です。
ですから、セルにしてもトスカニーニしても、ブラームスの作品と向き合うときはその「古典主義」的な側面に重点をおいて、その鎧の隙間からロマン的な雰囲気を漂わせるというスタンスを取っていました。

ただし、全ての指揮者がその様なスタンスを取るわけではなくて、どちらかと言えばその様な鎧は脱ぎ捨ててそのロマン主義的な側面に軸足を置く人もいます。そして、それはそれで確かな正当性があることに気づかされます。何故ならば、ブラームスの本質はあくまでもロマン主義的なものであり、その外側を覆っている「古典主義」はあくまでも「鎧」に過ぎないからです。
例えば、このような短い「序曲」のような作品だとその違いは鮮明になります。

おそらく、このセルのようなスタンスと真逆の方法論で向かい合った指揮者として真っ先に思い浮かぶのはクナパーツブッシュあたりでしょうか。
彼の指揮による「大学祝典序曲」などを聞けば、なんだかみんな酒でも飲んで大騒ぎをしているような雰囲気が漂ってきます。それに対して、セルの場合だと真面目な学生たちが階段教室に整然と座って真面目に講義に耳を傾けているような雰囲気です。まあ、聞いてみての面白さという点では断然クナパーツブッシュの方に軍配が上がりますが、だからといってセルの演奏が価値の低いものだと言っているのではありません。
この「知的」な学生たちの姿もまた一つの真実なのです。

さらに、「悲劇的序曲」になると、セルの場合はシリアスな困難に直面してるかのような悲劇的雰囲気なのですが、クナパーツブッシュの場合だとそれは「悲劇」と言うよりは「悲哀」と言いたくなるような「甘さ」を含んでいます。そして、それもまた両者はブラームスの本質を外してはいないのです。

「古典主義」に軸足を置くか「ロマン主義」に軸足を置くかはそれぞれのご自由!!
どちらに軸足を置いても、結果としては十分に聞くに値する音楽になってしまうのがブラームスの凄いところなのでしょうか。

と、ここまで書いてきて、セルとの比較で紹介したクナパーツブッシュの音源は未だにアップしていないことに気づきました。そこで、慌てて手持ちの音源を調べたのですが、なんと手もとにある音源は「モノラル録音」によるものでした。
57年のDecca録音なので間違いなくステレオ録音のはずなのですが、はてさて困ったものです。それでも、モノラルでも紹介する価値は十分にある演奏なので、それで良しとしましょうか。

さらについでながら、この2曲よりはもう少し規模の大きな作品では「ハイドン変奏曲」でも上記の比較は成り立つようです。
この変奏曲が持つ精緻な構造を鬼のようなアンサンブルで仕上げたセルに対して、クナパーツブッシュの場合はモントゥーのような「物語」の雰囲気に仕上げています。さらに言えば、その話しぶりはモントゥーよりもさらにくだけた雰囲気で、これまた聞いていて実に面白いのですが、これもまた手もとにある音源は何故かモノラルです。

はてさて、困ってしまいました。

よせられたコメント

2021-08-20:joshua


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