Music Of Old Russia(2):チャイコフスキー:ワルツ・スケルツ,なつかしい土地の思い出 Op.42より瞑想曲&スケルツォ
(Vn)ナタン・ミルシテイン:ロバート・アーヴィング指揮 管弦楽団 1962年3月30日~31日録音
Tchaikovsky:Valse-scherzo in C major, Op. 34
Tchaikovsky:Souvenir d'un lieu cher, for violin & piano (or orchestra), Op. 42 [1.Meditation]
Tchaikovsky:Souvenir d'un lieu cher, for violin & piano (or orchestra), Op. 42 [2.Scherzo]
不思議な小品集
1962年にミルシテインは「Music Of Old Russia」と題するアルバムを作成しています。
収録作品は以下の通りです。
- ラフマニノフ:ヴォカリーズOp.34-14
- ムソルグスキー:ソロチンスクの定期市-ゴパーク
- グラズノフ:瞑想曲
- チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ Op.34
- チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出 Op.42-瞑想曲&スケルツォ
- リムスキー=コルサコフ:ロシアの主題による幻想曲Op.33
この手の小品集というのは、例えばクリスマス前にプレゼント用としてリリースされることが多くて、そこで求められるのは「ポピュラリティ」です。しかし、この小品集にはそう言う「ポピュラリティ」は希薄なので、不思議と言えば不思議な小品集です。
そして悲しくうたふもの
これは実に不思議なアルバムで、収録されている作品はラフマニノフやチャイコフスキーという有名どころの作曲家なのですが選ばれている作品は、例えばチャイコフスキーならば「なつかしい土地の思い出」「ワルツ・スケルツォ」のようなあまり知られていない作品なのです。おそらく、ラフマニノフの「ヴォカリース」は有名で、その以外では辛うじてグラズノフの「瞑想曲」あたりがポピュラリティがあるかもしれませんが、それ以外の作品はかなり馴染みのうすい作品が選ばれています。
さらに言えば、バックをつとめるのがロバート・アーヴィングという指揮者で、オーケストラの名称も記されていません。
ロバート・アーヴィングという指揮者についても全く知らない人だったので少し調べてみたのですが、イギリスの指揮者でバレエ音楽のスペシャリストとしてはそれなりに名を馳せた人らしいです。しかしながら、いささか偏見かもしれないのですが、クラシック音楽の世界ではバレエ音楽の指揮者というのはどうしても一段低く見積もられてしまいます。
つまりは、いろいろな面において、このアルバムにはクリスマス・プレゼントとして必要な「ポピュラリティ」はあまり感じられません。ですから、そう言う目的とは異なる形で作成されたのかもしれません。
このアルバムで客を惹きつける要素はソリストがミルシテインであると言うことくらいなのです。
ですから、もしかしたら、これはミルシテイン自身がどうしても作りたかったアルバムかもしれません。そして、その企画に難色を示したレーベル側が断るわけにも行かないので、出来る限り低予算で済まそうとしたのかもしれません。まあ、全く持って妄想の域は出ない話ですが。(^^;
演奏の方は、予想されたことですがオーケストラ伴奏は至って控えめです。そして、ミルシテインのヴァイオリンもこれまた極めて控えめで、いわゆるスラブの憂愁とかロシアの大地などと言う、この手の作品につきものの大袈裟な身振りとは全く無縁です。
あるのは、ただひたすら淡々と、はるか遠く離れた故国への秘めやかな思いの漂白だけです。
そう言えば、室生犀星が歌っていました。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」
なるほど、もしかしたらこれはそう言う「歌」なのかもしれません。
なお、リムスキー=コルサコフの「ロシアの主題による幻想曲」はクライスラー編曲なので著作権関係があやしいのでアップするのは控えさせていただきます。
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