シューベルト:劇付随音楽 「ロザムンデ」D797(抜粋)
ウィレム・ヴァン・オッテルロー指揮 ハーグ・レジデンティ管弦楽団 1950年1月25日&1951年11月24日録音
Schubert:Rosamunde(The Magic Harp) Overture, D.644
Schubert:Rosamunde, Op.26(Excerpt) [1.Entr'acte No. 3 in B flat major]
Schubert:Rosamunde, Op.26(Excerpt) [2.Ballet Music No. 2 in G major]
音楽だけは残った(^^v
ロザムンデと言えばシューベルトと結びつくほどにこの作品は有名です。
原作は、ベルリン出身の女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの戯曲「キプロスの女王ロザムンデ」です。しかし、この戯曲はおそろしく出来の悪いもので、わずか2日で上演が打ち切られてしまいました。
しかし、幸いだったのは、この戯曲に付随音楽をつけたのがシューベルトだったことです。
おかげで、戯曲の方は台本も残らないほどのお粗末さだったのに、このシューベルトの音楽によって女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの名前は歴史に刻まれることになりました。
なお、この劇音楽の序曲は今日では「ロザムンデ序曲」と呼ばれているのですが、実は別の作品のための序曲だったものを使い回したものでした。しかし、本来の出所であるオペラ「アルフォンゾとエストレラ」はほとんど忘却の彼方に行ってしまったために、本来は「アルフォンゾとエストレラ」序曲とよぶべきはずのものが「ロザムンデ序曲」として定着してしまいました。
しかし、この美しいメロディはシューベルトが書いた音楽の中でも屈指のもので、その美しさと「ロザムンデ」のイメージとあまりにも見事に結びついているが故に、やはりこれは「ロザムンデ序曲」とよぶしかないと思えます。
全曲は上記の序曲と10曲からなりますが、一般的には序曲と第3幕間奏曲、そしてバレエ音楽第1番・第2番が抜粋して演奏されることが多いようです。とりわけ、第3幕間奏曲は弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」に転用されているのでとりわけ有名です。
「序曲」
「間奏曲第1番」
「バレエ音楽 第1番」:木管楽器の響きが素晴らしい!!
「間奏曲 第2番」
「ロマンス<満月は輝き>」:アルトの独唱です。
「亡霊の合唱<深みの中に光が>」:男声合唱です。
「間奏曲 第三番」:弦楽四重奏曲第13番の第2楽章に登場する有名なメロディです。
「羊飼いのメロディ」
「羊飼いの合唱<この草原で>」:混声合唱です。
「狩人の合唱<緑の明るい野山に>」:混声合唱・男声合唱・女声合唱で歌われます。
「バレエ音楽 第二番」:終曲です。
田舎オケとは思えないほどの豊かな音色
オッテルローがハーグ・レジデンティ管弦楽団の音楽監督に就任したのは1949年のことでした。当時の楽団は低迷していて客の入りも悪く、オッテルローは就任するとすぐに大幅な改革に乗り出します。
それは、多趣味で、自分の欲望に正直に生きたオッテルローらしい思いきったものでした。
まずは、コンサートというのはお客さんがたくさん入っていないと演奏する方も聞く方も気持ちが盛り上がらないと言うことで、思い切ったチケットの値下げを断行します。その結果として聴衆の数は増えたのですが、財政的にはプラスにはならなかったようです。しかし、満員の聴衆はオーケストラの士気を高める効果は十分に発揮したようで、それと並行して行われた厳しいリハーサルにも合理性を持って耐えることができました。
オッテルローという指揮者は際だって耳のよい指揮者だったようで、その要求は細かく論理的でありながら、音色と言うことにも最大限の注意が払える人だったようです。彼は、それぞれのパートごとに練習をさせて細かく音色のチャックを行い、自らの要求水準に達しない演奏家には情け容赦なく駄目出しをしたようです。
その結果として、オーケストラの能力は短期間で飛躍的に向上し、前任者であり、この楽団に長年にわたって君臨していたスフールマンとのレベルの違いを誰の耳にもはっきりと分かる形で証明して見せたのでした。
しかし、同じ頃に、海の向こうでジョージ・セルがオーケストラの人事権も含めた全権を委任されて、その結果として就任一年にして三分の二の団員を入れ替えたことを羨ましく思っていた様です。ハーグ・レジデンティ管弦楽団はヨーロッパの楽団ですから行政からの公的支援を受けていますから、音楽監督の一存で楽団員を解雇することは出来なかったのです。
とは言え、その裏返しとしてリハーサルはかなり厳しかったようで、とりわけ「音色」と言うことに関しては妥協しなかったので、楽団員にとっては大変な日々だったと思われます。そのために、オーケストラともしばしば衝突し、さらに自分の言いたいことは素直に口にするという奔放な態度はその軋轢をさらに深めたようです。
さらに、度重なる女性スキャンダルなどによって楽団の理事会にしてもレコード会社(Philips)にとっても、実力は認めながらも随分と扱いにくい人物だったようです。
とは言え、いい人ならばいい音楽が出来るなどということは絶対にあり得ないわけであって、この奔放な生き方がもたらす感性と緻密で厳格なリハーサルによってハーグ・レジデンティ楽団は飛躍的に成長していきます。
それは、この50年と51年に録音されたシューベルトのロザムンデの録音を聞けばすぐに納得いくはずです。
そこには就任一年にして、くすぶっていた田舎オケとは思えないほどの豊かな音色とシューベルトらしい歌心が清潔に描き出されていることを誰もが認めることでしょう。
もしも、オッテルローにほんの一握りの「常識」に従う意識があれば、彼の後半生は随分と変わっていたでしょうし、オランダの音楽界も大きく変わっていたはずです。
しかし、一つだけ言えることは、この後オッテルローのもとでハーグ・レジデンティ管弦楽団は飛躍的に実力を伸ばしていき、少なくともコンセルトヘボウのオケと肩を並べる存在になっていったことだけは間違いありません。
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2026-10-27]
ディエゴ・オルティス:レセルカーダとその基となった歌曲およびマドリガル集(Diego Ortiz:Recercadas, Songs And Madrigals)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ (Vdg)アウグスト・ヴェンツィンガ (harpsichord)エドゥアルト・ミュラー 1953年10月8日~9日録音(Walter Gerwig:(Vdg)August Wenzinger (harpsichord)Eduard Muller Recorded on October 8-9, 1953)
[2026-10-25]
ヴォーン・ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲(Vaughan Williams:Fantasia on a Theme_by Thomas Tallis)
マルコム・サージェント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1959年録音(Sir Malcolm Sargent:The Philharmonia Orchestra Recorded on 1959)
[2026-10-23]
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30(Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30)
(P)モーラ・リンパニー:アンソニー・コリンズ指揮、ロンドン新交響楽団(Moura Lympany:(Con)Anthony Collins New Symphony Orchestra of London Recorded on 1952)
[2026-10-21]
リリ・ブーランジェ:古い仏教の祈り(Boulanger:Vieille Priere Bouddhique)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 エリーザベト・ブラッスール合唱団 (T)レイモンド・アマデ 1958年録音(Igor Markevitch:Orchestre Des Concerts Lamoureux Elisabeth Brasseur (T)Alain Fauqueur Recorded on 1958)
[2026-10-19]
エマヌエル・ポンセ:イ短調組曲(Poncw:Suite In A minor)
(Gt)アンドレス・セゴビア:1930年録音(Andres Segovia:Recorded on 1930)
[2026-10-17]
ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-10-15]
メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)
[2026-10-13]
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)
[2026-10-11]
ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)
[2026-10-09]
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)