メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 作品90 「イタリア」
ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1967年5月25日録音
Mendelssohn:Symphony No.4 in A major, Op.90 "Italian" [1.Allegro vivace]
Mendelssohn:Symphony No.4 in A major, Op.90 "Italian" [2.Andante con moto]
Mendelssohn:Symphony No.4 in A major, Op.90 "Italian" [3.Con moto moderato]
Mendelssohn:Symphony No.4 in A major, Op.90 "Italian" [4.Saltarello. Presto]
弾むリズムとほの暗いメロディ
メンデルスゾーンが書いた交響曲の中で最も有名なのがこの「イタリア」でしょう。
この作品はその名の通り1830年から31年にかけてのイタリア旅行の最中にインスピレーションを得てイタリアの地で作曲されました。しかし、旅行中に完成することはなく、ロンドンのフィルハーモニア協会からの依頼を受けて1833年にようやく完成させています。
初演は同年の5月13日に自らの指揮で初演を行い大成功をおさめるのですが、メンデルスゾーン自身は不満を感じたようで、その後38年に大規模な改訂を行っています。ただ、その改訂もメンデルゾーン自身を満足させるものではなくて、結局彼は死ぬまでこの作品のスコアを手元に置いて改訂を続けました。そのため、現在では問題が残されたままの改訂版ではなくて、それなりに仕上がった33年版を用いることが一般的です。
作品の特徴は弾むようなリズムがもたらす躍動感と、短調のメロディが不思議な融合を見せている点にあります。
通常この作品は「イタリア」という名が示すように、明るい陽光を連想させる音楽をイメージするのですが、実態は第2楽章と最終楽章が短調で書かれていて、ほの暗い情感を醸し出しています。明るさ一辺倒のように見える第1楽章でも、中間部は短調で書かれています。
しかし、音楽は常に細かく揺れ動き、とりわけ最終楽章は「サルタレロ」と呼ばれるイタリア舞曲のリズムが全編を貫いていて、実に不思議な感覚を味わうことができます。
セルの楽器として完成したクリーブランド管の真価が発揮されている
1967年にセル&クリーブランド管でこのメンデルスゾーンの2作品を録音して残してくれたのは有り難いことでした。実は、67年の録音ではリリースは68年で隣接権がぎりぎりアウトかと勝手に思っていたのですが、詳しくチェックしてみると両方ともに67年のうちにリリースされていて、まさにギリギリセーフでパブリック・ドメインとなっていました。
まずは、「夏の夜の夢」の方ですが、こちらは57年に録音されたコンセルトヘボウ管との録音があります。個人的に言えば、この作品に相応しいオーケストラの響きはコンセルトヘボウの方だと思います。
クリーブランド管の方はあまりにも精緻に過ぎて、妖精たちが朝の光の中に溶け込んで行くには、その輪郭があまりにも明瞭に過ぎるような気がします。
ただし、それを実現している驚くべき弦楽器群の合奏能力と、はやすぎる思うほどのテンポに着いていく管楽器群の能力には驚嘆させられます。第7番の「Nocturne」のホルン独奏の上手さなどは絶品です。
ですから、音楽にもっとも必要なものは「リズムだ!」と言い切ったセルの美意識が実現されているのは疑いもなくこの67年盤の方です。夏の夜に飛びかう妖精たちの姿は精緻な合奏によって明瞭に浮かび上がり、それが朝の光の中に溶けていく最後のシーンもメンデルスゾーンのスコアに従って十分に叙情的な情景として描き出しています。
ですから、これはそう言うセルの美意識が完璧に具現化したものだと思って味わえば、それはそれでコンセルトヘボウでは不可能だった表現が実現しています。
さらに言えば、
最後の「結婚行進曲」はコンセルトヘボウ管との録音では収録されていませんので、その部分でのアドバンテージは意外と大きいかもしれません。 (これは私の勘違いで、収録されているよ!とのご指摘をいただきました。どうして、そんな勘違いしたんでしょうか(^^;)
それこそ、「手垢にまみれた」という言葉ですら到底追いつかないほどに世に広まっている音楽をこれほど純音楽的に聞かせてくれるだけでも値打ちがあると思います。
そして、もう一つ交響曲第4番の「イタリア」の方ですが、これはもう、どこからどう眺めても文句のつけようのない演奏です。
この「イタリア」の録音と言えば真っ先に思い浮かぶのはトスカニーニによる54年盤でしょう。あの録音は、トスカニーニ引退の引き金となった歴史的事件(1954年4月4日)のわずか1ヶ月ほど前の演奏なのですが、その驚くべき集中力によって構成された世界は数多の追随を許さないものでした。
そして、おそらくそのトスカニーニの精緻さに迫れる唯一録音がこのセルの67年盤でしょう。
とくに、セルが目指した理想のオーケストラとしてのクリーブランド管が完成したこの時期には、まさにセルはこの楽器を自由自在に操っています。基本的には早めのテンポで精緻な合奏を実現しているのですが、それはひたすら機械的に縦のラインを揃えているだけでなく、時々フッとテンポをゆるがしたりする事によってこの作品が本質的に持っている「翳り」のようなものも見事に表現しています。
そして、最後のサルタレロの複雑なリズムも快速テンポで見事に決めています。
まさにセル&クリーブランド管に脱帽です。
よせられたコメント 2021-02-04:koinu ものすごく素晴らしい演奏です。メンデルスゾーンの素晴らしさを描ききった演奏です!!セルとクリーブランドの献身に感謝です!!
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